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読売歌壇年間賞

2017-01-17 14:45:28 | 歌う
          読売歌壇年間賞

 今年の読売歌壇年間賞についてお知らせします。朝日歌壇賞のように受賞者の写真や言葉はありませんが、いま旬の選者のコメントがたっぷり載っています。

 ✿ 大筆で「まめ」と書写して筆を置きふーと息はく小一の子は
                       福岡市 津留 明子

 「評」子供が緊張してなにかに取り組んでいる表情はとても魅力的なものだ。ここではお習字。大筆で力いっぱい「まめ」と書き、書き上げて思わずふーと息をつく。状況が目に見えるようでとてもほほえましく、かつなにか励まされる感じがする。われわれもこの小学一年生のように日々をすごしたいものだ。♦(小池光)

 ✿ 熊本の師母つつがなく居たまふやつながらぬ電話今日もかけたり
                        台 湾  李 錦上

 「評」「師母」は「先生の奥様」の意。戦前の日本の統治時代、出向した小学校の先生の一家と暖かい交流があって、今回の熊本地震でその夫人の安否を作者が気づかっているのである。生涯にわたる長い心の交流を示す歌だ。私も台湾の歌の知友があったが、皆亡くなられた。いつまでもお元気で。♦(岡野弘彦)
                                           ✿ 気が付けば五月節句も母の日も過ぎて千数百回の余震
                  熊本市  森山 昭子  
 
 「評」 昨年4月に起きた熊本地震。長引く余震に不安がつのった。本来ならば端午の節句や母の日を楽しむはずだったのに、心の余裕のないままに気が付くと五月中旬になっていた。落ち着かない日々の様子が実感をこめて表現されている。とりわけ「千数百回の余震」の数字の重さに胸を衝かれた。♦(栗木京子)

 ✿ 積もりたる雪を払ひて南天の埋み火を妻は燃え立たせけり
                     青梅市  諸井 末男 

 「評」雪に隠れていた南天の赤が、ぱっと目に飛びこんでくる。色彩の対比の鮮やかさ。分量としては少ない赤だが、強い生命力を感じさせるところが魅力。埋み火の比喩が雪(=灰)、南天の実(=火)、そして払う動作まで及んでいるところが見事。1年を通して佳作を送ってくれた諸井さんでした。♦(俵万智)
                
 
 以上は昨年、読者から送られた作品の中から選者が選んだベストワン、多数の歌の中からの1首、選者の「評」も熱っぽいですね。年間賞の4人の方々の血潮も熱くなったことでしょう。これからも選者を唸らせる歌を詠んでください。
                        
              1月17日  松井多絵子