・・・ 十着の服を ・・・
✾ もう我に着てはもらえぬ服があり、くびれた胴にシルクの黒蝶 松井多絵子
先日、オシャレ老女A子と話していたとき「困るのよ、あの本の広告」という。✿「フランス人は10着しか服を持たない」という本の広告が新聞に出る度に彼女の夫が「それごらん」。六畳を納戸にして彼女の服などのために使っているのが夫は気に入らないらしい。66万部も売れて2015年上半期ベストセラー総合第1位だという本。著者はジェニファー・L・スコット、(神崎朗子訳) ”パリで学んだ”暮らしの質”を高める秘訣” 私は読んでいない。
A子の話によると著者はアメリカの女性。フランスの貴族の館にホームステイした著者が見たお金をかけずに、生活を心から楽しんでいるマダムを褒め讃えた本らしい。新聞広告に
♦ 間食をせず、食事を存分に楽しむ
間食は肥満の原因になるから、昼食と共にチョコ少々などと珈琲を飲み3食だけの私。
♦ 上質なものを少しだけ持ち、大切に使う。
身の回りを上質なもので囲まれていたら、自分も上質に思えて気分がいい。しかし上質なものは大切に扱うので気を使う。食器にキズをつけないように気をくばりながら洗うなんて私はイヤだ。このマダムは自分で食後の後片づけをしないのではないか。
もし上質の10着の服だけで過ごすとしたら、トイレや浴室の掃除はできない。買い物も魚や泥ネギは買えない。主婦の服は作業着でもある。旅行には私は上質の服など着ない。
スカーフ、帽子、手袋 傘、など失くしても惜しくないような安物、でも色やデザインが好きなものと旅をする。服は皺になりにくく軽い素材のものを着る。旅を楽しむために気を使いたくない。A子は以前、巴里に行ったとき5万円とかの真珠のイヤリングを片方失くして以来、旅行では安物を身につけているそうだ。私と会う時もイミテーションのネックレスで。
若い頃は自分をできるだけ恰好よく見せる服を着たものだ、が、いつのまにか着心地のよい、感触のよい軽い素材の服を着るようになり、バッグは軽いものを愛用している。付き合うのも、安物の服で会える人。居酒屋などで割り勘で、なんて仲間が多くなってきた。
♦ ラ・メールは海なり母なり ふらんすの、彼方のことは計り知れない
ふらんすは更に私から遠くなってゆく 12月21日 松井多絵子