・・・ 男はつらいよ ・・・
♦ 黄葉の木下に渥美清いて寄り行けばつと消えてしまいぬ 松井多絵子
お正月を海外で過ごす人々の出国ラッシュが始まっている。でも羨ましいとは思わない。いま海外へゆけば、テロがコワくて楽しめないではないか。近くに行きたい処が沢山ある。新装オープンの 「寅さん記念館」で寅さんが好きだった鈍行列車の気分を味わってみたい。私の人生は鈍行列車。渥美清は急行列車だったのか。「男はつらいよ」
✿ 背のびして大声あげて虹を呼ぶ 渥美清
渥美清は俳人でもあったらしい。句会では黒いシャツを着ていることが多かったとか、寅さんのイメージとは異なり知的な人だったという記事を読んだことがある。幼いころから体が弱く、本に親しんでいたのだ。✿ 初めての煙草覚えし隅田川 渥美は1928年、東京の下町に生まれた。✿ すだれ打つ夕立聞くや老いし猫 寅さんのような哀愁の滲む句だ。そのほかにも私が好きな句が沢山ある。特に好きなのは✿ ぬれている五重塔も紫陽花も
最終作映画 「男はつらいよ 寅次郎紅の花」の封切りから今年で20年。この19日から公開される「葛飾柴又寅さん記念館」には寅さんの出会いと別れの舞台になった「駅」や「鉄道」をテーマにした新たな展示が加わる。「寅さんと鉄道の旅」のコーナーでは、二人ずつ向かい合って座る列車のボックスシートを再現。窓には映画に出てくる鉄道シーンが映し出される。「駅」という題詠に応募なさる方はここで何首もできるかもしれませんよ。
♦ 寅さんのような男が風のなか宅急便を届けてくれた
12月16日 松井多絵子