~ 今日は猫の日 ~
「2月22日は猫の日である」。ということを30分前に天声人語で知った。「犬びいきと猫びいき、どちらが多数なのかは判じがたい。犬文学も猫文学も内外に名作がある。だが俳句となると、私感ながら、猫に軍配があがるように思う。しぐさやたたずまいが俳句心をくすぐるのだろうか。 ▼ 叱られて目をつぶる猫春隣 ▼ 仰山に猫ゐやはるわ春灯 ともに久保田万太郎の作。
天声人語さま 短歌だって猫の名歌がたくさんありますよ。岩波現代短歌辞典に「猫」の項目があり、荻原裕幸が 「現代の日本人にとって、猫はもっとも身近な動物である。人間といちばん生活エリアが似ているためだろう」 と次の作品を挙げて解説している。
▼ 毛ほどの隙もみせずに歩み去る老いの白猫がわがこころ知る 前川左美雄
戦後10年ほどを経た頃の作品。どこか猫との間に信頼関係のようなものが見える。
▼ 胡桃ほどの脳髄をともしまひるまのわが白猫に瞑想ありき 葛原妙子
のどかな昼寝と見るひともあれば、葛原のように何か人間に感知できない世界での思索と捉える人もいる。感情らしきものが見えないため、人はそこに思い思いの推測、空想を、。
▼ 飼い猫をユダと名づけてその昧き平和の性を少し愛すも 塚本邦雄
命名は任意であるがゆえに作者の心象をかなりくっきりと浮かびあがらせる要因となる。
▼ 飼い猫にヒトラーと名づけ愛しゐるユダヤ少年もあらむ地の果て 春日井建
飼い猫にヒトラーと名づけ、しかも彼を愛するというのだ。常識的には掴みきれない設定であるが、ここには「悪への信仰」を美の極致とみなして、美の実現のためには、社会的な良心や論理が二次的なこととなる唯美的な精神を読み取るべきであろう。(荻原裕幸)
※ 荻原裕幸 昭和37年愛知県生まれ。歌人。10代より塚本邦雄に傾倒し歌誌「玲瓏」創刊に参加。歌集は『あるまじろん』 『デジタル・ビスケット』 他
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ナルシスと名づけて呼べば白猫は振り向かぬまま尻尾くねらす 松井多絵子