・・・ あれから一年 ・・・
朝から雨が降っている。鷲尾三枝子もこの雨を見ているだろう。何年か前に『まっぐな雨』という歌集を刊行した「かりん」の歌人、夫・小高賢が急逝した2月10日が近づいてくる。短歌研究2月号の鷲尾三枝子の20首詠「体温」から7首を抄出する。
ながきながき不在とおもわん朝あさを遺影のまえに茶をそそぐなり
「ただいま」 というあなたの声を忘れない手を止めるなり日にいくたびも
いつかきっと行こうと言いしお遍路に 「いつか」 が秋日のなかにくらみぬ
カレンダー繰らざるままに白梅が咲きつづけてる夫の部屋に
隅田川の川面に塔がゆったりと身を横たえるときおり揺れて
たましいをかんがえるのはずっとさき写真のまえにまた坐りおり
かたわらにありし体温おもいつつ金曜のデモに行かんとおもう
2013年8月2日のブログに私は小高賢のことを書いている。「老いの歌~新しく生きる時間へ」という著書を刊行され、彼はわたしたち老女のリーダーであると。しかし歌人クラブ・東京での講演のアンコールを果たせずに急逝した。昨年2月13日のブログで 「小高賢さん、ヒドイじゃないの、わたしたち老女をすっぽかしてあの世へ行ってしまうなんて」 と私の追悼文はテンションが高い。いま雨は三枝子夫人の辛さを切々と伝えている。
2月5日 松井多絵子
※ 小高賢についての私のブログ
2013年8月2日 ♦ 老いを楽しむ小高賢さん
2014年2月13日 ♦ 小高賢さんの急死
3月13日 ♦ 馬場あき子が語る小高賢
3月17日 ♦ 岡井隆と小高賢と