「殻ちゃん⑫」
☀ 走りつつエスカレーター上り行くあのひと林真理子かもしれぬ (松井多絵子)
朝食の後かたずけをしているアキに鈴鹿ひろ美から電話がかかる。
鈴鹿★「今日のお昼ご飯はウチで食べようよ。殻ちゃんも一緒に」
昨夜、水口から印度屋のカレーのコマーシャルのことを聞いていた。鈴鹿ひろ美と共演でアキはひろ美の娘になる。うれしくてたまらないアキ。鈴鹿ひろ美も喜んでいる。同じマンションに住んでいるが、鈴鹿は最上階、アキの住まいの4倍のスペース。しかも庭園までついている。中古で買ったが改装してまるでホテル。高級レストランみたいな食堂のテーブルには、すでに
おつまみ、サラダ、くだものが用意されていた。
鈴鹿★「今日はカレーを作ったの。殻ちゃんが食べられるように辛くないカレー」。
アキ✿「黄色いのはカボチャのルー?肉もやわらかい。やさしい味だなあ。おいしいなあ」
殻♪♪「おいしいっていうより不思議な味だよ」
鈴鹿★「不思議な味か、殻ちゃんは詩人だねえ」
食後のアイスクリームを食べ終わると鈴鹿はアキを衣裳部屋へ案内する。まるでブティックだ。その入り口に何枚もの服、スカーフ、バッグ。「これはわたしには若すぎるから、アキにぜひ着てほしいの」。高級ブランドの服やバッグをアキは買ったことがない。遠慮なく皆いただいて大きな紙袋を6つ、殻ちゃんも両手にぶら下げて12階から2階へ降りる。
アキは林真理子の語録のひとつを思う。❤<階段を上り始めると、もっと上があることがわかってくる>❤ オラはいまタレントの階段を上りはじめたところだ。鈴鹿ひろ美はすでにオラより何十段も高い所にいる。そしてさらに上り続けているのだ。 (今日はここまで)
次回の「殻ちゃん⑬」もどうぞよろしくね。 11月30日 松井多絵子