「くじけない八千草薫」
❤晩秋の空がわたしに云わせてる「老人なんかになるもんですか」 (松井多絵子)
半世紀前はかなりの美女だった旧友のM子は、今は皺皺のオバアサンである。昨日の夕刊の卵Lサイズの八千草薫の顔写真を見ながら、女優の賞味期限の長さを感じた。M子より7歳年上の82歳とは。宝塚ファンだった母のお供で、少女時代に私はたびたび八千草薫を観ていた。いまだに芸能界でかなり活躍しているなんて。82歳で映画「くじけないで」に主演とは。
98歳で刊行した柴田トヨさんの初詩集『くじけないで』がベストセラーになった。「くじけないで」というタイトルの一言が「くじけそうな」多くの人々を読者にしてしまったのか。その後トヨさんは老人ホームと自宅を行ったり来たりしながら、101歳で亡くなられたらしい。
八千草薫は記者に「トヨさんにお目にかかったことがないのが残念。でも詩を拝見していると長い人生で苦労も多かったのに、明るく気持ちを切り変え、生きてこられた」と語る。「90歳」を演じるために「背中を曲げて腰が痛くなった。トヨの役は遙か先の想像できない年齢」と言われるが
82歳と90歳は隣あわせではないか。この言葉からも八千草の「自分はそれほど老いていない」という自負がうかがえる。写真の彼女は半世紀前とさほど変わらないが、目はくぼみ目じりはたれて、あの愛らしい「つぶらな瞳」を失っている。亡くなる前までオバアサンではなかった森光子にくらべれば老人の顔である。おっとりした、上品な、でもしっかりした老女、だから「くじけないで」の主役に選ばれのか。「頑張っちゃう力をくれるのが女優という仕事かしら」とのことである。
11月16日 そろそろ冬ですね。寒さにくじけないように心がけましょう。 松井多絵子