えくぼ

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「シネマ・ルナティック」という歌集

2013-11-12 14:34:22 | 歌う

        『シネマ・ルナティック』という歌集

 久野はすみさんから歌集を頂いた。11月10日に刊行の彼女の第一歌集『ルナ・ティック』。
2001年に「未来」に入会され翌年「未来賞」を受賞。久野はすみさんは私にはとても眩しい方である。この10年余りの作品253首を収めた歌集は次のような歌からはじまる。

✿さてシネマ・ルナティックとは洒落た名の、今宵おぼろに満月未満

 「あとがき」で20代の数年間は「青年座」という劇団で演出家を目指していられたことを知る。

✿消えてゆく字幕のような言葉たち よりどころってよくわからない

 映画の字幕はすぐ消える、「よりどころ」って何でしょうね。私もわかりません。

✿この町のまぶたは重い持ち上げても持ち上げても落ちてくる夜空

✿本当に力あるなら月よ。この町にお天気雨をふらせて

 ここで「シネマ・ルナティック」連作19首は終わる。ルナティックとは月から発する霊気に当たると気が狂うという意味もあるらしい。この歌集を読みはじめて、私の歌は平凡に思えてきた。私は私でいいではないか。でも私は私の歌にもう飽きている。月の霊気を浴びようか、今宵。

 表紙や歌集のところどころを飾るスミダヒロミさんの版画が独特。久野さんの歌を妖しくしている。この不思議な歌集の跋文は岡井隆先生。久野さんの先生であり私の所属する「未来」の代表である。その岡井隆先生の跋文を引用させていただき、幕を下ろす「私の感想未満」

 (いろいろと、<短歌的喩>が工夫をこらしてある。才気はまぎれもないが、言わんとするところを、比喩にまぶしてしまうのも、いわば劇的な手法かもしれない。) 岡井隆  

 久野はすみ様 30頁までしか読まずに思いつくままに書きました。これから丁寧に拝読しまた
           書かせていただきます。素敵な歌集をありがとうございました。 
                                      11月12日  松井多絵子