「小島ゆかりさんの寄せ鍋」
先週あたりから食品の偽装?についてマスコミで騒がれている。今朝のテレビではブラックタイガーもバナエビも車エビ科に属するとか、こんなに食材が豊富な今の日本で、わたしはエビの名前まで憶えられない。つい先日までブラックタイガーはセールで1パック10匹360円で買えた。このエビを串にさし寄せ鍋に入れると、よい「出し」がでる。牛肉のしゃぶしゃぶよりも安上がり、赤くなったエビの皮をむきながら、タレをつけて食べる、車エビでなくてもおいしい。寄せ鍋はなんでもおいしくしてしまう。親しい人たちと一つの鍋を囲むたのしさ、温かさが何よりのごちそうだ。現代短歌文庫『小島ゆかり歌集』のなかの「寄せ鍋のうた」5首を読みながら、小島ゆかりさんの鍋を味わう。みなさまもご一緒にどうぞ。
❤ 寄せ鍋のうた 五首 ❤ 小島ゆかり
寄せ鍋の泡ぶく立つた煮え立つた この世のことはごちやごちやとする
はまぐりがワハッと笑ひえび踊りねぎが笛吹く寄せ鍋の中
寄せ鍋を囲む六人いや七人湯気を吹くなる唇(くち)アルマジロ
㊟アルマジェロは南北アメリカに生息する哺乳類、池袋のサンシャイン水族館にもいるらしいです。三年前に聞いたことですが。
寄せ鍋の湯気のむかう側こちら側一人が抜けてまた一人入る
寄せ鍋を食べつつ眼潤むころひとりひとりのさびしき顔見ゆ
※寄せ鍋のなかのエビやはまぐりが踊るときはまさに青春ですね。鍋のなかの具が少なくなり、
弱火にして、湯気も消えてゆく ひとりひとりのさびしき顔を見る私も淋しいです。
11月9日 松井多絵子