「短歌の色②」
近くの銀杏並木が黄葉しはじめている。まもなく黄のトンネルになるだろう。毎年この黄のトンネルをくぐるとき、私の気分が華やぐ。ビルのはざまで暮らしている東京の人々は11月下旬の黄葉の銀杏並木に癒されているのではないか。
「短歌の色②近代歌人の色の短歌」 佐佐木幸綱氏の講演より
◆ 与謝野晶子(1878ー1942) 大阪府生まれ
✿清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき 『みだれ髪』 より
「桜月夜」は晶子の造語といわれる。『みだれ髪』にある「臙脂紫」は江戸時代の華やぐ紫色。
◆ 前田夕暮(1883ー1951) 神奈川県生まれ
✿向日葵は金の油を身にあびてゆらりと高し日のちひささよ 『生くる日に』より
この歌はゴッホの油彩「向日葵」と思われる。自然主義の影響を受け感覚を微細に表現。
◆ 島木赤彦(1876-1926) 長野県生まれ
✿冬空の天の夕焼にひたりたる褐色の湖は動かざりけり 『切火』より
大正期の代表的な歌人。「褐色」は夕焼けが暗くなった日没のころの湖の色であろう。
◆ 北原白秋(1885-1942) 福岡県生まれ
✿白き犬水に飛び入るうつくしさ鳥鳴く鳥鳴く春の川瀬に 『桐の花』より
白秋の作品はリズムがいい。言葉の音楽である。色彩も豊かだ。50歳すぎて失明したらしいが、心の目をひらき私たちの心にしみる歌をたくさん残してくれた。 (続きますく)
次回は現代歌人たちです、どうぞよろしく。 11月19日 松井多絵子 。