「殻ちゃん⑪~林真理子の語録」
★わが知らぬ牛を偲びて履くブーツはじめて土を落ち葉を踏みぬ (松井多絵子)
もうじきクリスマスか。原宿のショップは華やいでいる。アキは一人でぶらぶら歩いている。昨日ママが「10月分15万円」と書かれた封筒をアキに渡しながら言った。
ママ❤「アンタこのごろ服を買わないいじゃないの。タレントなんだから服は商売道具。このお 金は全部オシャレのために使いなさい」。
アキ✿「冗談じゃない。マンションのローンを抱えて、、。でもブーツは買いたいな」
ママ❤「明日の午後に原宿に行きなさいよ。殻ちゃんは預かるから」
原宿の若い女たちは皆タレントみたいだ。アキを振り返る人など1人もいない。セールで靴を売っている店をさがす。欲しかったチョコレート色の牛革のショートブーツを見つける、履き心地もよい、予算より200円安く7800円で買えた。「オラもつましい主婦になったもんだなあ」 ユイちゃんには会わなくなってから何年過ぎたか。原宿を歩けばユイに会えそうだが。行き交う女はみなユイではない。いま何処にいるのか連絡がないが、ファッションアドバイザーとして、婦人雑誌で時々見かける。女優たちのファッションコーディネイター・Yui 以前のユイとはちがう女になってしまった。写真のyuiはブランドの服を着て、ブランドのバッグを抱えて。
3歳なのに本が大好きな殻ちゃんのママとして、アキもこのごろ本を読む。いま◆林真理子の
『100の名言』を読んでいる。そのなかに◆「名のとおったブランド品を買う経済力を持っている女性だけがそれを着こなすことができる」 たしかにそうだなあと思うアキ。読みながら寒くなってきた。 「殻ちゃん⑫」もよろしくね。 11月21日 私も寒くなってきました。 松井多絵子