☀「朝日歌壇11月4日」☀
今日は入選歌のなかから「朝」の歌を二首採りあげます。
<佐佐木幸綱選>
{評} はりきって心も身体も始動する中学生の元気あふれる歌。
◆いつもより気合いを入れて髪しばる目がキュッとなる今日が始まる
(いわき市) 岸本 靖子
※前日は落ち込んでいても朝になれば気分が変わる。まして中学生。髪を整え後ろで束ねているのだろうか。いつもより気合いを入れて髪を縛るのは試験の日か、「目がキュっとなる」のは今日が大切な日だからであろう。読者も元気にする一首である。
<高野公彦選>
{評} 花の芳香をポケットに忍ばせる。人知れぬ小さなゼイタク。
◆木犀の花ひとつまみポケットに入れて紛れる朝の雑踏
(東京都) 東金 吉一
※木犀の香は甘く切ないが、柔らかな気持ちのよい香りである。その香りと過ごしたい東金さんは男性である。花をポケットに入れるとは風流ですね。そしてなにやら色っぽく妖しい気配。
でも作者は東京都の方。ビルの林を、人の波のなかを出勤なさるのでしょうか。東京は近年ますますビルが増え樹木が少なくなりましたから木犀の香りは貴重な香り、しかも秋のはじめだけの香りを逃がしたくないですよね。自然の匂いが薄れゆく東京に住む私は共感できる歌です。
11月4日 連休最後の日も終わろうとしています。風邪に気を付けましょう。 松井多絵子