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松平盟子さん大いに語る②

2013-11-05 14:34:56 | 歌う

         「松平盟子さん大いに語る②」

❤「心に響く短歌とは~その2~」❤ 歌人クラブ東京の会での講演より。

 松平 「いまの若い人たちの短歌はわからないと言われるが塚本邦雄の登場した時は、、」

 1950~60年代の「前衛短歌」も当時はわからなかったのではないか。

▴五月祭の汗の青年 病むわれは火のごとき孤独もちてへだたる  塚本邦雄

※アララギの写実的な歌に親しんでいた人々には、塚本の暗示的で自己を誇示する作品にはなじめなかったであろう。しかし何か魅力があったのだ。切実な感じがしたのだ。塚本作品に傾倒した穂村弘が、1990年代に加藤治郎らとニューウエーブと言われる短歌をひろげる。

▴恋人の恋人の恋人の恋人の恋人の恋人の死  穂村 弘

 頻繁に引用される穂村弘の作品である。彼の会心の作だろうか。20年位前のこの作品を穂村自身は今どのように思っているだろうか。

 松平 「わからない短歌もわからないままに心に伝わるのではないか。切実なものがあれば」

▴あの青い電車にもしもぶつかればはね飛ばされたりするんだろうな  永井 裕

 昨年刊行された永井祐の歌集『日本の中でたのしく暮らす』のなかの1首である。

 松平 「生きている充実感がどこにあるのでしょうかねえ」

 ※この歌を読んだとき、わたしは街で時々見かける破れジーンズが目に浮かんだ。本人は究極のオシャレのつもりか。私には屈折したオシャレにおもえる。好意的に見れば斬新なファッションだ。永井祐の歌は若者なのに冷めている。しかし今の日本で暮らすには深刻になったり、力んだりしてはダメかもしれない。歌人クラブでの講演を聴いた私たちはほとんど60歳以上の老人であった。子供世代の歌と付き合うだけでなく孫世代とも付き合う時期になっている。若い人と上手につき合わなければならない。心と心を近づけながら。   11月5日  松井多絵子