「或るホームレス歌人を探る~その二十一」 松井多絵子
★★ 公田耕一への提言
二00九年「短歌研究」十二月刊行の「2010短歌年鑑」に「今年の世相をあらわす一首」という特集があった。この年の歌人アンケートに寄せられた千有余の歌を中心に、その現象を分類している。一位が石川啄木、二位は斉藤史、そして三位には公田耕一が選ばれ、次の二首が掲載されている。
日産をリストラになり流れ来たるブラジル人と隣りて眠る
「世界不況による倒産、リストラなどの不安がホームレスの実感として把握されている」とこの作品を推した七十代男性の言葉が添えられている。
パンのみで生きるにあらず配給のパンのみみにて一日生きる
「これこそまさに今の日本です。貧しいものをふやした政治におこります」とこの作品を推した七十代女性のコメントがあり、同感だ。(つづく)
※久しぶりに<或るホーム>を書きました。評論は書くのも読むのもシンドイとつい避けていましたが、昨日「短歌研究」で評論を読みそこなったので、ブログで読んでいます。書くのはやめたのですかとの、お問い合わせが一名の方からありました。うれしいです。もちろん続けます。よろしくお願いいたします。寒さに負けず老いにも負けぬ松井多絵子。