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或るホームレス歌人を探る~その二十

2013-01-16 20:17:11 | 歌う

           ★★「或るホームレス歌人を探る~その二十」★★  松井多絵子

 プロレタリア文学の作家めく公田耕一という名は筆名ではないか。カ行の音が快い。この年の九月、福田首相が突然辞任し、麻生内閣が発足した。不安定な政界と深刻な不況、朝日歌壇は世相を速やかに鮮やかに反映する。
 公田は不況に苦しむ弱者を詠みたかった。選者や読者の心をつかむには他人ごとのように詠んでは駄目だ。テレビでは十一月に米大統領選で当選したオバマ上院議員が「チェンジ」「チェンジ」と叫んでいた。公田も「チェンジ」したかったのだ。(ホームレス)になり朝日歌壇で脚光を浴びたかったのだ。そしてたちまち注目の歌人になった。 (もう少し続きます)。

※この辺りを書いていたのは2年半前の6月、私はピリピリしていた。もし今ふたたび公田の投稿歌が朝日歌壇に載ったとしたら、この評論はどうなるのか。彼の投稿が途絶えてからすでに9か月、公田はホームレスではないという前提で書き進めてきたのである。しかし私の思いこみかもしれない。公田についての先行した評論は全く見かけない。独断と偏見で書いているかもしれないという不安。評論文の締め切りは6月末日。ワインのボトルの誘いに悩まされていた日々。