ジャコとピーターアースキンという安定したリズムセクションが去り、いろいろ大変だっただろうけど、とにかく新しいリズムセクションを雇って再スタートしたウェザーリポートのアルバムだ。新しいリズムセクションはビクターベイリーとオマーハキム、二人ともこれ以前から名前は知っていた。日本にも数回来た。コンサートを聴いた印象は以前よりもザヴィヌルの圧力が増したという感じだった。しょうがないことだ。ジャコというサウンドメーカーが去り、ウェインはこの頃、娘のイスカの病気のことの影響で、作曲をまったくやっていなかった。ジョーはひとりで頑張らざるを得ない。バンドリーダーというのは絶対的存在だ。全てリーダーの指示に従う。その代わり全ての責任を負う。バンドというのはそのルールのもとに成り立っている。これはジャンルを問わない、大昔からの音楽界の掟だ。でも個々のバンド内で微妙に力関係が違う。ひとりひとり個性も才能も違うから、お互いの人間関係もそれぞれ全部違う。リーダーはそれをうまくあやつっていかなければいけない。気持ちがまとまったような感じがしてちょっとうまくいったかと思うと、すぐゴタゴタする。みんな芸術家だからね。でもそれが「バンド」だ。ウェザーリポートのようなバンドで同じメンバーで仕事をこなしていくというのは、その仕事のハードさから考えると並大抵ではない。でもある程度同じメンバーでサウンドを維持していかないと、営業的にもまずい。バンドリーダーの政治的手腕が要る。結果的にはこのあと数枚のアルバムをリリースしてウェザーリポートは解散してしまう。いわばこのアルバム、このメンバーはウェザーリポートの「終わりの始まり」だったわけだ。当時はそんなことは思いもよらなかった。ジョーの大変さも今ほどは分からなかった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます