ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Explorations

2006-06-12 01:53:50 | Weblog
このアルバムは'61年の2月の録音で、ヴィレッジヴァンガードのライヴの4ヶ月前になる。ラファロとポールモチアンとのトリオのサウンドが形作られる初期の感じだね。マイルスの作った"Nardis"もこのときが最初の録音だ。この後エヴァンスはこの曲を死ぬまでやってたね。全体の音楽的内容をいうと、他人の曲を独特のリハーモナイズする方法や独自のヴォイシングのやり方が完成しつつある。とにかく上品だね。当時はボビーティモンズらのソウルスタイルともいうべき弾き方が流行っていたから、ビルのこの音楽のやり方は賛否両論あったんだろう。でもとにかく考え方が筋が通っているから認められるんだね。奇をてらわないんだ。この録音はニューヨークでのスタジオ録音だから、ある程度コンパクトでおさえた演奏になるのはしょうがないんだけどそれにしてもおさえてるよねえ。まあ奥の方にあるパワーは感じるからこれはこれですばらしいけど・・・。レコーディング当日ビルは頭痛に悩まされてたそうだ。それにラファロとは音楽以外のことでずっと言い争いをしていて、おまけにラファロはいつも使っているベースを修理に出していて、借り物の楽器だったので恐がってあまり高音を使っていない。それでも何十年もたった今でも名盤だ。音楽に大事なのは、確かな方向性と信念、そして高い技術だということだ。その日の調子云々はあまり関係ないね。ちょっと違った面が出る。ただそれだけだ。


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