この曲の6小節目の3拍め、音が2種類ある。つまり基音から長7度音と短7度音だ。演奏でも歌でも2種類あるといっていいだろう。オリジナルはおそらく長7度音、短7度のほうは、サウンドをブルージーにするためにジャズミュージシャンが手を加えたものだ。カウントベイシーバンドは短7度でやっている。この曲のアレンジはクインシージョーンズだ。どの時点でフラットさせたのだろうか?半音の出し入れで曲想が大きく変化する場合がある。もちろんミステイクに近いものもある。過去の大家の作品にもナチュラルでもシャープやフラットでもどちらでもいいもの、印刷の過程でミスッたもの、作曲家自身の不注意によるもの・・・いろんなケースがある。ウラジミールホロヴィッツがモーツアルトを弾く時に楽譜にはこう書いてあるけど、これはモーツアルトのミスだから私は楽譜ではない音を弾くと説明していた場面があった。これでいいと思う。そんなことは絶対ダメだ、というひとはあまりに頭が固い。というのは、もしモーツアルト自身にその意見を聞かせたらどう言うだろうか?ということだ。「私の作品をそこまで丁寧に分析してくださってありがとう。あなたのおっしゃる通りです。音を変えましょう。」と言うにきまっている。作曲家とはそういうものだ。固い頭では務まらない。音程を12個に完全に区切るという発想は偉大な知恵ではあるが、人間にとっての音楽のある意味の「曖昧さ」が音楽の魅力でもあるということを忘れてはだめだ。
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