ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Speak Low

2012-01-26 02:49:34 | Weblog
1943年のブロードウェイミュージカル「one touch of the venus」の中で歌われた曲らしい。作曲はK.WEILL。題名からわかるようにヴォーカルナンバーとしてはあまり速いテンポでは歌わない。でもジャムセッションではいわゆる急速テンポでよくやる。誰がやりだしたのか?キースジャレットとジャックディジョネットがいた頃のチャールズロイドのバンドのレパートリーだった。キースはたぶん20歳そこそこだったと思う。ツアーでライブレコーディングしたアルバムにこの曲が入っていてよく聴いた。ラフな録音でマイクロホンの位置のせいだと思うけどドラムの音が下半身しか聞こえない。でもジャックの足の動きがよく分かって面白いなあと思って聴いていた。今ドラマーがスタンダードとして使っているドラムセットの形もいろんな知恵と工夫がつまっている。大太鼓、小太鼓、シンバル、たたきやすいようにうまく並べてある。いろんなひとの知恵のかたまりだ。それはなんのためか?打楽器という広いジャンルをひとりでこなすためだ。いろんな音が出せるようになっている。バンドのなかでのドラマーの役割はとてつもなく大きい。正確なビート、柔らかくて強いスウィング感、それだけ要求されるだけでも答えるのに大変だ。でもジャズドラマーの本当の価値は実はそのサウンドにある。ピアノの12個の音の組合せでは出ない和音だ。同じステージにいるとそのサウンドが聞こえてくる。充実したサウンドを提供されているときピアノを弾いていてコードが不必要に感じるときもある。そういう時のバンドサウンドは最高だ。ところがこのドラムのサウンドは残念ながら録音では捉えられない。これはいわば録音技術の限界だと思う。優れたジャズドラマーはセットの前にすわったらいろんな打楽器を組み合わせて独自のコードを発信する。その種類は限りがない。同じステージに立たないとこのドラムサウンドは聞き取れない。


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