まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

医療生協わたり病院・医療倫理講演会

2014-07-30 22:52:51 | 生老病死の倫理学
本日は渡利にある医療生協わたり病院で講演会を行ってまいりました。
福島に来るまでは医療生協という組織があるなんて知らなかったため、
こちらに来て初めてそういう存在を知り、大いに活用させてもらっていました。
最近では町医者で診てもらって紹介状を書いてもらってからでないと、
この手の大病院に来られないことになりましたから (直接来るのは可能だが初診料がかさむ)、
もう久しくこちらの病院にかかっていなかったため、ものすごく久しぷりの来院です。

今回は先方が私のホームページで、2008年に新潟市民病院で話した
「プロフェッショナル倫理としての医療倫理」 という講演を見つけて、
それについて話してほしいとのことでしたので、ほぼ同じ内容で話してきました。
この話は実は大学院の 「地域文化創造特論」 のなかでも話しているのですが、
医療倫理や生命倫理の話よりも、プロフェッショナル倫理に重点を置いた内容なので、
医療従事者ばかりでなく一般のプロの方々にも当てはまるような話です。
専門家の方々はもっと高度な内容を期待しているのかもしれないなあとは思いつつ、
ちょっと目線を変えたこういう話も必要なんではないかと思い、そのまま話すことにしました。

本日の講演会は医師、看護師、その他病院スタッフ総出の研修会だそうです。
平日の午後にそんなものを開催して病院のほうはどうなるんだろうと心配しましたが、
毎週水曜日の午後は2時間くらいさまざまな研修をするために時間を空けてあるのだそうです。
講演中もたぶん病棟から呼び出しを受けて会場から抜け出したりする方がいらっしゃいましたが、
そんななかで何とか時間を作ってみんなで能力や倫理観を高めようとする姿勢は、
それ自体がプロフェッショナル倫理の実践であると感じました。
皆さん、こんな感じで熱心に聴いてくださいました。



(うしろのほうから席が埋まり、司会の方がいくら前から詰めてお座りくださいと言っても、
 どうしても前のほうが空いてしまうというのは普遍的な人間本性ですので仕方ありません。)

講演は以下のような内容で話していきました。

「プロフェッショナル倫理としての医療倫理」
1.プロフェッショナルとは何か?
2.医療倫理の変遷
3.ミスとウソ
4.医療受難の時代
5.プロとして楽しく働くために

まずはお得意の言語分析 (原語分析) から入っていく、プロフェッショナルとは何か?の話。
そこからプロフェッショナル倫理の話に移して、
そのままの流れで医療倫理の変遷、つまりSOLからQOLへ、
パターナリズムから患者の自己決定へという医療倫理の移り変わりの話をします。
パターナリズムについては詳述する予定でしたが、
ついテンパッてしまって過剰なパターナリズムや歪んだパターナリズムの話を忘れてしまいました。
まあその代わりにナチスのT4作戦優生保護法の話をできたのでよしとしましょう。
その後、医療倫理に限らずプロフェッショナル倫理一般にとって重要だと思っている、
ミスとウソの話をさせていただきました。
ウソに関わってはうちの父の最期の話なども絡めながら、告知と関連させて論じました。
患者は真実を知らされなければ自己決定することはできない、
ということを言おうと思っていたのですがそれも言い忘れてしまいました。
そして、現代は人類史上最も医療が迫害され、医療従事者が信頼も尊敬もされず、
むしろ非難・攻撃の的となってしまうような医療受難の時代であるという話をしました。
これには皆さん思い当たる節があるようで、うんうんとうなずきながら聞いてくださいました。
最後は、プロとして楽しく働くために倫理が必要なのであると結論づけて講演を終えました。

その強引なまとめにどこまで納得していただけたかはわかりませんが、
暖かい拍手と何人かの方から嬉しいお言葉もいただけたので、
この講演はいちおう成功であったと思っておきましょう。
学校で講演をするときは感想用紙を書いてもらい5段階評価もしてもらっているのですが、
どうも一般の方々 (大人の方々) 相手のときには感想用紙を用意するのを忘れてしまいます。
今後のためにも、聴衆の皆さんの意見を吸い上げる仕組みは作っておいたほうがいいでしょう。
というわけで、実際にお聞きになってどうだったのかはわからないままですが、
とにかく前期最後の大仕事を終えホッと一息といったところです。

そう言えば講演の最後に医療生協わたり病院の理念や基本方針を引用させていただきました。
こちらです。

医療生協わたり病院の理念
私たちは、患者の権利を尊重し、いつでも誰もが安心してかかれる病院を目指します。

医療生協わたり病院の基本方針
1. 私たちは、日々医療技術の向上に努め、親切で安全な良い医療を提供します。
2. 私たちは、保健・医療・福祉の連携を進め、地域の健康づくりに貢献します。
3. 私たちは、患者・組合員との協同の医療を推進します。
4. 私たちは、国民皆保険制度を守り、患者負担の少ない医療制度の実現を求めます。

やはり医療生協というだけあって、たんに患者さんに医療を施して医療報酬をいただくという、
フツーの病院がやっていることとは見ている先がちがいます。
「いつでも誰もがかかれる病院」 という理念は一病院の努力によって実現可能な話ではないですが、
そういう社会になってほしいと私は切に望みます。
「わたり病院はあなたの病院です」 というメッセージは、
私がどれだけ小難しいことを述べても到底かなわないような理想だと思いました。
釈迦に説法とはまさにこのことだなと思いながらも、
実際に日本のヘヴィな医療現場で心身をすり減らしている方々と、
ほんのわずかではありますが、時間を共有できたことに深く感謝する1日でした。
どうもありがとうございました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「倫理学概説」 での学びとコ... | トップ | さおりとさやか »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

生老病死の倫理学」カテゴリの最新記事