まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

大学院必修科目 「地域文化創造特論」

2011-06-15 18:10:09 | お仕事のオキテ
水曜日の1限は大学院の必修科目 「地域文化創造特論」 でしたが、
私の担当の5回分が今日で終わり、来週から白石豊先生にバトンタッチです。
この科目は教育学研究科が改組されて人間発達文化研究科が設立されたときから、
地域文化創造専攻の必修科目として置かれた授業です。
学校教員養成をメインとしていた教育学研究科から、
学校教員に限らず人材育成のエキスパートを養成する人間発達文化研究科となり、
その中の地域文化創造専攻では、地域支援エキスパートの養成を目指しています。
特にうちのような博士課程のない修士課程のみの大学院は、
研究者養成をしているわけではなく、社会に出て働く専門職業人を養成しているわけですから、
ただ専門の研究だけをしていればよいわけではなく、社会人としての専門能力を身につけ、
さまざまな形で人間の発達を支援していける人材に育ってもらわなければなりません。
そういう機能を果たすべく設けられたのが 「地域文化創造特論」 なのです。
私の担当する5回では次のようなことをやってきました (シラバスより)。

第1回:オリエンテーション
 新研究科 「人間発達文化研究科」 ならびに 「地域文化創造専攻」 の特色、
 本授業の狙いについてオリエンテーションを行う。
 同じ専攻の仲間がどのような力を伸ばそうとしているのか確認する。

第2回:人はなぜ学びなぜ働くのか
 学ぶこと、働くことの意義を根底から問い直し、
 「文化」 というキーワードで人間を捉え返していくとともに、
 大学院での学びがすべて社会に出てから生きていくことを理解する。

第3回:大人の力
 一人前の大人として生きていくためにはどのような力が必要であるかを、
 ワークショップ形式で考えていく。
 その上で、「学類学修指標」 を用いながらセルフモニタリングを行っていく。

第4回:社会人としての自立とプロフェッショナルの資格
 社会人として生きていく際に基盤となるセルフ・ファウンデーションを確立することの重要性を学ぶ。
 また、プロフェッショナルの由来に遡って、プロには何が要求されるかを考えていく。

第5回:プロフェッショナル倫理 ―パターナリズムの危険性―
 プロフェッショナルに求められる倫理はいかなるものか。
 特に専門家が陥りやすいパターナリズムについて解説するとともに、
 プロがミスを犯したり、ウソをついてしまうメカニズムを解き明かす。

第1回目は要するに自己紹介なんですが、
地域文化創造専攻は国・英・数・社・家・音・美・体というバラエティに富んだ人たちの集団ですので、
お互いに何を研究しているのかを語り合うとともに、
大学院の2年間でどんな力をつけたいのか、その力をもって将来どんな社会人になりたいのか、
についても1人1人発表してもらいました。
普通、大学院に入学してくる人は自分の専門研究を究める、という意識しかもっていません。
しかし、その人たちに上記のような問いを投げかけ、自己紹介してみるように促すと、
それなりにいろいろと答えてくれます。
そうやって 「問いの力」 を活用しながら、専門職業人としての意識を涵養していくのが狙いです。

第2回目はいつもの演題ですね。
中学生にも高校生にも大学生にも現場の先生たちにもしている話です。
受講者の中には、大学1年のときの 「キャリア形成論」 と2年のときの 「文化創造論」 で、
すでに2回聞いている人も含まれていますが、そんなことはおかまいなしです。

第3回目は、大人になるには、大人として生きていくにはどんな力が必要だろうかと問いを投げかけ、
グループに分かれてKJ法を用いて意見をまとめてもらいます。
これが一番盛り上がる回ですね。
「学類学修指標」 を用いて今の自分がどれくらいの力を備えているかも、
セルフ・モニタリングしてもらいましたが、
大学卒業しているとはいえ満点評価という人はなかなかいないです。

第4回目は、ビジネス・コーチングの考え方を少しだけ紹介しながら、
セルフ・ファウンデーション (自己の基盤) がしっかりしているか振り返ってもらったり、
仕事の優先順位について考えてもらったりしたあと、
プロフェッショナルとは何かについてレクチャーしていきます。

第5回目の今日は、3年前に新潟市民病院で行った講演のパワーポイントを使いながら、
プロフェッショナル倫理についてプレゼンテーションしていきました。
特にパターナリズムや、ミスとウソについて熱く語りました。

たぶん大学院でこんな授業をやっているなんて、大学関係者の方々は驚かれることでしょう。
しかし、彼らはこんな授業からでもいろいろと学んでくれているようです。

「大学院に入ったのは 『専門を極めるため!』 という思いが強かったのですが
 (勿論それも大切だとは思います)、でも専門を極めた後私たちは 『大人』 になるので、
 そういった意味で 『大人』 や 『プロ』 について考える、よい機会になりました。
 また、色々な科目の人と接する機会があって、自分にはないような視点からとらえた考え方や意見、
 まとめ方などに触れることができたのも有意義だったと思います。
 なので座学でずっと講義を聞くようなタイプではなく、毎回やり方がちがうのも、
 新しい発見が多くて面白かったです。」
 
「普段の生活の中でほとんど考えたことのないことを
 考えたり話し合ったりすることが出来たのが一番の学びであった。
 しかもそのほとんどは自分が社会に出て働くにあたって必要なことばかりであったと思う。
 今回の講義の内容を親にも聞かせてあげたいと思った (倫理、犯人探し症候群など…)。
 大学でこのような形式の授業はあまりなかったので楽しかった。
 また、数少ない院生同士のつながりの場となって良かったと思います。」

「小野原先生の授業はつくづく 『問いの力』 について考えさせられる機会であると思っていました。
 ”勉強って何だろう?”、”プロフェッショナルってどんな人?” などなど、
 普段それに直面したり、目標にしているはずのものを 『あえて問う』 ということは
 自分の内面と向き合う貴重な時間であったように感じました。
 最近、ゼミなどで○○くんが、人の選びとってきた必然的形と、
 本能の崩壊により文化を発展させてきた人間についてよく話をしています。
 それに近いようなことを私も考えるし、
 自然とこの授業の内容を他の時間に思い出すようになっていました。
 頭で考えるだけでなく、『みる、書く、話す』 など体感することを通して
 身体的な記憶に残る授業を私もしてみたいと思いました。」

「全体を通して、学ぶことの意味、学ぶという意識の作り方について教えて頂きました。
 生活の中にはいたる所に学びがあり、
 その人の意識次第で豊かな人生 (喜びの多い人生) を作れるのだと感じました。
 今、2年間の過ごし方と2年後について不安な日々を送っているので、
 4回目のセルフ・ファウンデーションの話がとても印象に残りました。
 たくさんの思考が毎回脳内を騒がせていますが、整理や結びつけ、追加など、
 より吸収できるような土台作りに努めたいと思いました。
 他の分野の方々のお話も聞けて、楽しい授業でした。
 ありがとうございました。」

「私は、福島大学の院に入学して、ただ専門的な力をつけたいという思いだけで入学しました。
 しかし、この講義を受けて、
 もっと根本的なもの (人として、大人として、プロとして) を学ぶことになって、
 改めて考えさせられました。
 これからどのようなことを意識して学んでいけばいいか、
 また、職業人 (プロ) になった時、どのように生きていけばいいかなど、
 人として大切なことを学ぶことができました。
 この講義が1年の最初にあってよかったです。」

皆さん、お疲れさまでした。
次回からは白石豊先生による、コーチングやコミュニケーション・スキルに関する講義です。
さらにディープに大人の力、プロの力を学んできてください。


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