まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

Q.倫理学者は儲かりますか?

2009-10-08 17:01:12 | 哲学・倫理学ファック
A.まったく儲かりません。

哲学も倫理学も、学問として儲かるアテのまったくない学問です。
他の学問のように、現実に役立つ何かを生み出すということがほとんどありません。
むしろ、役に立つなんてナンボのものやねん、
という考え方をする学問であるといっていいでしょう。
ですから、儲けるチャンスも皆無なわけです。

とはいえ哲学や倫理学がこの世でまったく何にも役立たないかというと、実はそうでもなくて、
たまにものすごい発明をしたりすることもあります。
ただし、哲学・倫理学が発明するのは、なにか便利な機械とかではなくて、
ものの見方、新しい考え方などです。
ですから、いくらそういうものを発明しても、それで金儲けはできません。
例えば、「人権」 という概念は倫理学が発明しました。
これは人類史上ものすごい発明だったと言っていいでしょう。
ふつう 「権利」 というのは、何かある行為をした人が、
そのことによって得る、何かを正当に要求する資格、なわけですが、
何の行為もしなくても、生まれてきただけですべての人間が平等に有している権利があるのだ、
というのが 「人権」 という考え方です。
これは画期的なものの見方で、その後、人類の歴史をガラッと変えてしまうくらい、
インパクトのある発明品でした。

しかし、この人権思想を発明したことによって、
発明者のホッブズやロックは儲かったでしょうか。
ぜんぜん儲かりませんでした。
彼らの本は世界中で売れ読まれましたが、
彼らはそれほど儲かりませんでした。
その手の本はいくら売れたといっても、
ハリー・ポッター・シリーズほど売れるわけではないのです。
(もちろん映画化もされません)
しかも、ものの見方が普及するには時間がかかるので、
現在のような著作権の保護期間 (50年) のあいだに儲けを回収することができないのです。

「人権」 思想ほど影響力のある発明をしても儲からないのですから、
私のようなごくふつうの倫理学者はとうてい儲けることはできません。
万が一、なにかの本が驚くほど売れてボロ儲けするということがあったとしても、
それはたぶん倫理学で儲けたのではなく、なにか別の商品で儲けたのでしょう。

では、倫理学者としてではなく、大学教員としてはどうでしょうか。
私は自分が勤めている福島大学のことしかわからないので、
国立大学法人の給与体系がすべていっしょなのか、
(福大教授も東大教授もいっしょなのか、教育学部と医学部でもいっしょなのか等)
また、私立大学の給与も似たようなものなのかはまったくわかりませんが、
自分がもらっている給料で申し上げると、
例えば、同じ国立大学法人の中でも事務職員の方々がもらっている給料よりは、
けっこういいお給料をいただいているようです。
バブルの頃の羽振りのいい会社員の方々に比べると、相当少ない額だったようですが、
これだけ景気が悪くなった現在では、
やはり一般の会社員の方々よりはいいお給料なのかもしれません。
とはいえ、ここ数年は年収が下がり続けているのは確かです。

ある種、安定している商売でそこそこのお金がもらえるということなら、
大学教員を目指す甲斐もあるのでしょうか。
それはまったくありません。
なぜなら、大学教員になれる可能性が極端に低いのとともに、
生涯収入で考えると、ひどいマイナスになってしまうからです。
今だいたい、大学教員に初めてなれる年齢は35歳前後でしょうか。
ふつうの大卒の人に比べて10年分以上少ないことになってしまいます。
しかもその間、よけいに学費がかかっていますから (最低5年分、ふつうはもっと)、
万一大学教員になれて、若干多めのお給料をもらえたとしても、
とても定年までに取り返せるような額ではありません。

というわけで、大学教員としてもまったく儲かるとはいえない状況です。
昔の大学の先生たちはもっと羽振りがよかったような気がするのですが、
実際なってみると全然ですねぇ。
授業やら会議やらがどんどん増えて、その要求も厳しくなっている一方、
お給料も年金も、あの頃の先生方とは比べものにならないほど減らされていますから、
なんだか損な時代に大学教員になってしまったなと思わないわけでもありません。
しかし、先日書いたように自分に合った楽しいことをやって、
お金をいただいているのですから、グチグチ文句を言うのはやめにしましょう。
ただご質問のお答えは、「まったく儲かりません」 ですので、
これだけは声を大にして言っておくことにいたしましょう。
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