まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

共通領域 「倫理学」 テスト返却

2013-08-04 10:20:05 | 教育のエチカ
一昨日の金曜日、共通領域 「倫理学」 の最後の授業をしてきました。
このあいだの月曜から試験期間に入っているわけですが、
「倫理学」 の授業では試験期間に入る前の週に期末テストをやってしまい、
翌週にテストを返却して解説するという試みを行っております。
樋口先生と2人で 「倫理学」 を担当するようになってからずっとそうしています。
私は自分1人で担当している授業ではそんなスケジュールにはしていません。
そうするためには、テスト実施後1週間で採点を終えなければいけないわけですが、
これはなかなかそう簡単にできることではありません。
初めて樋口先生と一緒に授業をやることになったとき、
どんなふうに授業をしたり評価をしたらいいかお互いの流儀を付き合わせるなかで、
試験日程に関しては樋口先生のスタイルを取り入れることになりました。

テストをやりっ放しにするのではなく、きちんと返却してかつそれについて解説してあげるというのは、
教育効果という観点からするなら一番いいに決まっていますし、
小学校から高校までは当然のようにそうしてきていたはずです。
ところが大学というのはその当然ができていないのですね。
これは大学の学事日程からして基本的にそうならざるをえなくなっています。
つまり、授業期間が15週間設けられていて、そのあとに試験期間があってテストをやったあと、
そのまま学期は終了してしまい、夏休みや春休みに突入してしまうようになっているのです。
高校まではテスト期間が終わったら即学期が終了なんていうことはなかったはずです。
もちろん大学でも、先生によってはテストやレポートを返却するという人はいますが、
学事日程上、学生全員を集めてその講評をするという機会を設けることはフツーできないのです。

大学のほとんどの授業で、学生たちはテストを受けたりレポートを提出したあと、
それが何点の評価を受けたのか知らないまま、1~2ヶ月後に成績だけ知らされます。
そのためにというか、近年では 「不服申し立て期間」 というのが設けられることになりました。
自分の成績に納得いかない人は正規の手続きを踏むと、
自分がなぜその成績になったのか教員から説明を受けたり、
場合によっては成績を修正してもらったりすることができるのです。
よく考えると、これは教育的にとてもおかしな制度ですが、
ほんの10年前まではこんな制度すらなく、学生は泣き寝入りをするしかなかったのです。
学生たちは各科目のA、B、C、D、Fという成績を見て (かつては優、良、可、不可)、
なんであんなに頑張ったのにこんな低い成績なんだろう、あんな科目取らなければよかったとか、
まさか単位取れると思ってなかったけど取れちゃったよなどと、
すべては運・不運の問題として片づけるしかなかったのです。

私も大学時代からこのような仕組みに慣れていましたから、
教員になってからも当然のようにこの仕組みを再生産してきました。
それに、何と言っても 「キリギリス」 の私ですから、
実施したテストをすぐに採点するということがどうしてもできないのです。
試験実施後すぐに採点しようが、成績提出締切ギリギリに採点しようが、
採点にかかる時間と手間はまったく変わらないわけですが、
どうしても後に後に回したくなってしまうのです。
というわけで自分1人でやっている授業では、
ほとんどテストを返却したり解説してあげたりしたことはありませんでした。

ところが樋口先生はテストはきちんと返却し、ちゃんと解説もしてあげるべきだとの信念の持ち主で、
複数の人間で一緒に授業をするというのは、
自分の常識とは全然異なる文化と出会うことができるという意味で、
私にとってはたいへん貴重な機会となりました。
フツーはより低いほう、ラクちんなほうへと合わせてしまうことも多いなか、
この 「倫理学」 はより高みを目指す選択をしたのでした。
もちろん、この私が1週間で採点を終わらせることができるのかとの不安を隠せませんでしたが、
実際にこのシステムでやってみると、ひじょうに得るところもおおかったです。
何と言っても次週には学生に返却しなければいけないわけですし、
樋口先生はその約束をきっちり守ってくることはわかっていますから、
成績提出締切なんかよりもはるかに締切の緊張度が違います。
ぶっちゃけ成績提出締切に間に合わなかったことは何度もあるわけですが、
これに関しては絶対にそういうわけにいかないのです。
そういう状態に置かれたときの人間の爆発力は凄まじいですね。
こんな私でもやればできちゃうのです。
そして、ここで一気に終わらせてしまえば、もう締切間際になってあたふたする必要がないのです。
これはこのシステムにした最大のメリットだったと言えるでしょう。

もちろん教育効果に関しては言うまでもありません。
自分が何点だったのかがはっきりわかるわけですし、
なんで自分の解答がそういう点数になったのかもわかるわけですから、
学生たちは自分の今の力を理解できるし、何が足りなかったのかも納得できるでしょう。
例の 「授業改善のための学生アンケート」 は試験実施の前の週にすませしまっていますが、
もしも、テスト返却後にあのアンケートをやっていたら、
もっと評価は上がっていたのではないでしょうか。
特に、「教員の授業に対する姿勢はよかったですか」 とか、
「教育の方法は適切でしたか」 等の項目でこの取り組みが評価されていたことは間違いないでしょう。
うーん、一昨日やればよかった。
でも自分の成績がわかってしまうと授業評価の客観性が失われてしまうので、
やっぱり最終回に学生アンケートをやるというのはちょっとムリでしょうか?
難しいところです。

さて、この授業は平常点が40%、期末試験が60%で、
2人の教員が出した成績を単純に足していくわけですが、
今年は樋口先生が相当甘い成績を付けてしまったので、
全体にものすごく点数がよくなってしまいました。
90点を超えた人が続出という感じです。
フツー複数教員の点数を足し算するというシステムだと、
全体的に低めの点数になってしまうということが多いのですが、
今回ばかりはまったく逆の結果になってしまいました。
ちょっとこれは反省点です。
次回開講のときに向けて2人の採点基準をすりあわせておく必要がありそうです。
それも含めて、さらに2人で工夫しながらよりよい授業を作っていきたいと思います。
学生の皆さん、半期のあいだ私たちの試みにお付き合いくださりありがとうございました。
今度はそれぞれの専門科目でお会いしましょう。