がん(骨肉腫)闘病記

抗がん剤治療、放射線治療、人工関節置換手術、MRSA感染、身体障害者となっての生活の記録を残します。

航海士、同行前に直筆メモ…自分の行為自問自答

2010年11月11日 | Weblog
2010年11月11日 23時27分21秒掲載

URL http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101111-OYT1T00932.htm?from=top  



「読売テレビ(大阪市)は11日のニュース番組で、「(主任航海士の)海上保安官が任意同行を求められる前に、直筆メモを残していた」と報じた。

 番組には、数日前に主任航海士を取材したという記者も出演し、「A4判の表裏にワープロと直筆で書かれたものだった」などと説明した。

 番組によると、メモには「映像流出が犯罪行為であるならば、映像が機密であるとの証明が必要ではないか」と記されていたほか、「これを機密とするのであれば、時の政府が自身に都合の悪いことはすべて機密にしてしまえば、何をやっても許されるのではないだろうか」などとも書かれていたとされる。

 さらに、「今回の件で我が国の国益は損なわれたのだろうか」「誰かの名誉を害したのか」「(中国船衝突事件の)捜査の妨げとなったのか」などともあり、読売テレビは「(主任航海士が)自分の行為を自問自答するような記述」と説明した。(2010年11月11日22時02分 読売新聞)」



読売グループは、犯人と思しき人物から直接接触されたのが嬉しいのか、取り調べを受けている海上保安官の言い分をよく報道している。しかし、他の事件と比較して、被疑者・被告人となるであろう人物の見解を紹介し過ぎであると思う。あまり被疑者・被告人となるであろう人物の見解に寄った報道をするのは控えた方がいいのではないだろうか。



この記事にあるメモに関しても、問題は多く、例えば、「映像流出が犯罪行為であるならば、映像が機密であるとの証明が必要ではないか」との点であるが、これは、裁判になれば当然そうなるが、では、行政官が扱っている文書・映像等全ての情報に予め機密であることの証明が必要で、その証明がないうちは、公開して構わないということになるのか、との反論が可能である。



「これを機密とするのであれば、時の政府が自身に都合の悪いことはすべて機密にしてしまえば、何をやっても許されるのではないだろうか」との点に関しては、政府の持つ情報は一定期間が過ぎたら全て公開されるというような法律を作ればいいのであって、一行政官の正義感だかなんだかわからない感情で判断して良いものではない。民主主義社会においては、時に迂遠とも思える手続が必要になるが、そのことが、一足飛びに独裁制等の悪しき社会へ進むことを阻んでもいるのであって、法の適正な手続きを踏まずに実力行使をすることは許されない。



「今回の件で我が国の国益は損なわれたのだろうか」との点については、何が国益に適うのかを判断するのは一行政官ではない、と言える。この海上保安官は自意識過剰なのではないだろうか。





前の記事でも紹介したが、最高裁が「国家公務員法一〇九条一二号、一〇〇条一項にいう秘密とは、非公知の事実であつて、実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものをいい、その判定は司法判断に服するものである」と言っているように、何が「秘密」であるかの公権的な最終判断は最高裁が行うものであって、一行政官が「これは国家機密」「これは機密扱いは必要ない」などと判断すべきではない。自分の立場を弁えろ、と言いたい。


補足;前記事の判例

2010年11月11日 | Weblog
2010年11月11日 17時58分37秒掲載

昭和48(あ)2716 国家公務員法違反  
昭和52年12月19日 最高裁判所第二小法廷 決定 棄却 大阪高等裁判所



「 主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人菅原昌人、同田万清臣、同石川元也、同橋本敦、同深田和之、同児玉憲夫、同香川公一、同三木一徳の上告趣意は、違憲をいう点をも含めて、その実質は、すべて、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
 なお、国家公務員法一〇〇条一項の文言及び趣旨を考慮すると、同条項にいう「秘密」であるためには、国家機関が単にある事項につき形式的に秘扱の指定をしただけでは足りず、右「秘密」とは、非公知の事項であつて、実質的にもそれを秘密として保護するに価すると認められるものをいうと解すべきところ、原判決の認定事実によれば、本件「営業庶業等所得標準率表」及び「所得業種目別効率表」は、いずれも本件当時いまだ一般に了知されてはおらず、これを公表すると、青色申告を中心とする申告納税制度の健全な発展を阻害し、脱税を誘発するおそれがあるなど税務行政上弊害が生ずるので一般から秘匿されるべきものであるというのであつて、これらが同条項にいわゆる「秘密」にあたるとした原判決の判断は正当である。


 よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
  

 昭和五二年一二月一九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    吉   田       豊
            裁判官    大   塚   喜 一 郎
            裁判官    本   林       譲
            裁判官    栗   本   一   夫」





昭和51(あ)1581 国家公務員法違反  
昭和53年05月31日 最高裁判所第一小法廷 決定 棄却 東京高等裁判所



 「主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 (上告趣意に対する判断)
 弁護人伊達秋雄、同高木一、同大野正男、同山川洋一郎、同西垣道夫の上告趣意第一点は、憲法二一条違反をいうが、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同第二点は、単なる法令違反の主張であり、同第三点は、憲法二一条違反をいう点もあるが、実質はすべて単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
 

 (職権による判断)
 一 国家公務員法一〇九条一二号、一〇〇条一項にいう秘密とは、非公知の事実であつて、実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものをいい(最高裁昭和四八年(あ)第二七一六号同五二年一二月一九日第二小法廷決定)、その判定は司法判断に服するものである。

 原判決が認定したところによれば、本件第一〇三四号電信文案には、昭和四六年五月二八日に愛知外務大臣とマイヤー駐日米国大使との間でなされた、いわゆる沖縄返還協定に関する会談の概要が記載され、その内容は非公知の事実であるというのである。そして、条約や協定の締結を目的とする外交交渉の過程で行われる会談の具体的内容については、当事国が公開しないという国際的外交慣行が存在するのであり、これが漏示されると相手国ばかりでなく第三国の不信を招き、当該外交交渉のみならず、将来における外交交渉の効果的遂行が阻害される危険性があるものというべきであるから、本件第一〇三四号電信文案の内容は、実質的にも秘密として保護するに値するものと認められる。右電信文案中に含まれている原判示対米請求権問題の財源については、日米双方の交渉担当者において、円滑な交渉妥結をはかるため、それぞれの対内関係の考慮上秘匿することを必要としたもののようであるが、わが国においては早晩国会における政府の政治責任として討議批判されるべきであつたもので、政府が右のいわゆる密約によつて憲法秩序に抵触するとまでいえるような行動をしたものではないのであつて、違法秘密といわれるべきものではなく、この点も外交交渉の一部をなすものとして実質的に秘密として保護するに値するものである。したがつて右電信文案に違法秘密に属する事項が含まれていると主張する所論はその前提を欠き、右電信文案が国家公務員法一〇九条一二号、一〇〇条一項にいう秘密にあたるとした原判断は相当である。

 

 二 国家公務員法一一一条にいう同法一〇九条一二号、一〇〇条一項所定の行為の「そそのかし」とは、右一〇九条一二号、一〇〇条一項所定の秘密漏示行為を実行させる目的をもつて、公務員に対し、その行為を実行する決意を新に生じさせるに足りる慫慂行為をすることを意味するものと解するのが相当であるところ(最高裁昭和二七年(あ)第五七七九号同二九年四月二七日第三小法廷判決・刑集八巻四号五五五頁、同四一年(あ)第一一二九号同四四年四月二日大法廷判決・刑集二三巻五号六八五頁、同四三年(あ)第二七八〇号同四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七巻四号五四七頁参照)、原判決が認定したところによると、被告人はA新聞社東京本社編集局政治部に勤務し、外務省担当記者であつた者であるが、当時外務事務官として原判示職務を担当していたBと原判示「ホテルC」で肉体関係をもつた直後、「取材に困つている、助けると思つて安川審議官のところに来る書類を見せてくれ。君や外務省には絶対に迷惑をかけない。特に沖縄関係の秘密文書を頼む。」という趣旨の依頼をして懇願し、一応同女の受諾を得たうえ、さらに、原判示D政策研究所事務所において、同女に対し「五月二八日愛知外務大臣とマイヤー大使とが請求権問題で会談するので、その関係書類を持ち出してもらいたい。」旨申し向けたというのであるから、被告人の右行為は、国家公務員法一一一条、一〇九条一二号、一〇〇条一項の「そそのかし」にあたるものというべきである。

 ところで、報道機関の国政に関する報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、いわゆる国民の知る権利に奉仕するものであるから、報道の自由は、憲法二一条が保障する表現の自由のうちでも特に重要なものであり、また、このような報道が正しい内容をもつためには、報道のための取材の自由もまた、憲法二一条の精神に照らし、十分尊重に値するものといわなければならない(最高裁昭和四四年(し)第六八号同年一一月二六日大法廷決定・刑集二三巻一一号一四九〇頁)。そして、報道機関の国政に関する取材行為は、国家秘密の探知という点で公務員の守秘義務と対立拮抗するものであり、時としては誘導・唆誘的性質を伴うものであるから、報道機関が取材の目的で公務員に対し秘密を漏示するようにそそのかしたからといつて、そのことだけで、直ちに当該行為の違法性が推定されるものと解するのは相当ではなく、報道機関が公務員に対し根気強く執拗に説得ないし要請を続けることは、それが真に報道の目的からでたものであり、その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは、実質的に違法性を欠き正当な業務行為というべきである。しかしながら、報道機関といえども、取材に関し他人の権利・自由を不当に侵害することのできる特権を有するものでないことはいうまでもなく、取材の手段・方法が贈賄、脅迫、強要等の一般の刑罰法令に触れる行為を伴う場合は勿論、その手段・方法が一般の刑罰法令に触れないものであつても、取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙する等法秩序全体の精神に照らし社会観念上是認することのできない態様のものである場合にも、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を帯びるものといわなければならない。これを本件についてみると原判決及び記録によれば、被告人は、昭和四六年五月一八日頃、従前それほど親交のあつたわけでもなく、また愛情を寄せていたものでもない前記Bをはじめて誘つて一夕の酒食を共にしたうえ、かなり強引に同女と肉体関係をもち、さらに、同月二二日原判示「ホテルC」に誘つて再び肉体関係をもつた直後に、前記のように秘密文書の持出しを依頼して懇願し、同女の一応の受諾を得、さらに、電話でその決断を促し、その後も同女との関係を継続して、同女が被告人との右関係のため、その依頼を拒み難い心理状態になつたのに乗じ、以後十数回にわたり秘密文書の持出しをさせていたもので、本件そそのかし行為もその一環としてなされたものであるところ、同年六月一七日いわゆる沖縄返還協定が締結され、もはや取材の必要がなくなり、同月二八日被告人が渡米して八月上旬帰国した後は、同女に対する態度を急変して他人行儀となり、同女との関係も立消えとなり、加えて、被告人は、本件第一〇三四号電信文案については、その情報源が外務省内部の特定の者にあることが容易に判明するようなその写を国会議員に交付していることなどが認められる。そのような被告人の一連の行為を通じてみるに、被告人は、当初から秘密文書を入手するための手段として利用する意図で右Bと肉体関係を持ち、同女が右関係のため被告人の依頼を拒み難い心理状態に陥つたことに乗じて秘密文書を持ち出させたが、同女を利用する必要がなくなるや、同女との右関係を消滅させその後は同女を顧みなくなつたものであつて、取材対象者であるBの個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙したものといわざるをえず、このような被告人の取材行為は、その手段・方法において法秩序全体の精神に照らし社会観念上、到底是認することのできない不相当なものであるから、正当な取材活動の範囲を逸脱しているものというべきである。

 

 三 以上の次第であるから、被告人の行為は、国家公務員法一一一条(一〇九条一二号、一〇〇条一項)の罪を構成するものというべきであり、原判決はその結論において正当である。
 

 よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

  昭和五三年五月三一日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    本   山       亨」


法曹界「秘密」の解釈…立件に賛否

2010年11月11日 | Weblog
2010年11月10日 23時28分50秒掲載

YOMIURI ONLINE配信記事(URL http://www.yomiuri.co.jp/net/report/20101110-OYT8T00358.htm  )



「尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡る映像流出事件で、東京地検と警視庁が国家公務員法の守秘義務違反での捜査を進める中、法曹関係者らの間では今回の流出が刑事罰の対象となるかどうかについて、意見が分かれている。

 公開を求める声が強かったビデオを流出させた行為に対し、過剰な刑事責任追及が行われれば、国民の知る権利を阻害することにもなりかねないだけに、捜査側は難しい判断を迫られそうだ。


「刑事罰には疑問」



「流出した映像は国家公務員法上の『秘密』には当たらず、刑事罰には疑問がある」。堀部政男・一橋大名誉教授(情報法)はそう話す。

 最高裁は1977年、同法違反に問われた税務署職員の裁判で、漏らした情報が〈1〉一般人が知らない〈2〉秘密として保護するべき――の二つの条件を満たす場合にのみ、守秘義務の対象になるという判例を示した。行政機関が形式的に秘密扱いにしていただけでは、漏らしても犯罪には当たらないことになる。

 堀部氏はこの基準について、「国民の知る権利の観点から、公務員の守秘義務の範囲が安易に広がらないようにした」と解説した上で、「今回は流出前から、海上保安庁が船長逮捕の会見で衝突の経過を詳細に説明し、衆院でもビデオが限定公開されて議員がその内容を記者に説明しており、一般人が知らない情報とは言えないのではないか」とする。



海保と映像



 仮に映像が「秘密」に当たるとしても、今後の捜査で判明した流出時期や動機によっては、裁判で「刑事罰を科すのは酷だ」という判断に至る可能性もある。

 海上保安庁は、犯罪を摘発する捜査機関であると同時に、領海警備などの任務も担う。「日夜、日本の海を守る海上保安官の姿を広く知ってもらう必要がある」として、普段から現場で撮影した映像を比較的オープンにしてきた。2001年に奄美大島沖で起きた北朝鮮不審船事件でも、不審船の銃撃や沈没を撮影した映像を公開。内部でも「危険な職務の実態を伝えられた」と評価されている。



今回も、衝突事件のあった9月7日、海保本庁は報道機関への配布用に映像をDVDにする作業に着手したが、官邸サイドの意向で中止した。馬淵国土交通相が、映像の厳重管理を指示したのは10月18日になってからだ。行政情報に詳しい弁護士は、「管理が緩かった時期に映像を持ち出し、国民の知る権利のためにあえて公開したとすると、裁判で違法性が否定される可能性もある」と指摘する。



世論の反応は?



 沖縄返還を巡る外務省機密漏えい事件(71年)では、記者が職員に守秘義務違反をそそのかしたとして起訴された。78年に有罪が確定したものの、最高裁は「報道機関が取材目的で公務員に秘密漏えいをそそのかしても、手段や方法が社会通念上、是認されるものなら正当」と言及し、国民の知る権利に理解を示した。

 今回問題になっているのは、公務員自身の守秘義務だが、ある検察幹部は「(有罪を立証できるか)ボーダーラインのケース」と漏らす。一方、別の幹部は「これだけ公開の是非が議論されていた映像を流出させたのだから、守秘義務違反は成り立つはず」と話す。

 ある刑事裁判官は「今回の映像の場合、公開すれば中国との関係が悪化しかねないという点は重視せざるを得ず、無罪という結論は出にくいだろう」と指摘。ただ、世論の反応によっては、検察が起訴猶予にする選択肢もありうると推測する。

国家公務員法の守秘義務
 現職、元職を問わず「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」と定められ、違反すれば1年以下の懲役か50万円以下の罰金を科される。外部の者が秘密漏えいをそそのかしたりした場合にも同じ罰則がある。


(2010年11月10日 読売新聞)」


この記事は、今朝の読売新聞にもデカデカと掲載されている。読売は無罪の線で押したいのかもしれない。

しかし、私としては「いかがなものか」という気がする。


まず、堀部先生の解釈の仕方であるが、無理があるのではないかという気が個人的にはする。

堀部先生は「流出前から、海上保安庁が船長逮捕の会見で衝突の経過を詳細に説明し、衆院でもビデオが限定公開されて議員がその内容を記者に説明しており、一般人が知らない情報とは言えないのではないか」とおっしゃっているが、口頭による説明と映像が同じ「情報」と評価しうるのか、疑問が残る。ただ、この点は、最終的には裁判所の判断を待つほかない。


次に、「仮に映像が「秘密」に当たるとしても、今後の捜査で判明した流出時期や動機によっては、裁判で「刑事罰を科すのは酷だ」という判断に至る可能性もある。」とあるが、ビラを配っただけで、逮捕・勾留・起訴し、有罪判決を下す我が国刑事司法である。本件において、刑事罰を科すべきではないとの結論には至らないのではないか。
仮に、本件で違法性が否定又は阻却されたとすれば、どのような場合に違法性が否定又は阻却されるのか、他の刑事罰を科したケースとの異同を明らかにしてもらいたい。


さらに、外務省機密漏えい事件(71年)の決定を紹介しているが、記事にある通り、この決定は、報道機関の取材方法についての決定であって、本件のような公務員自身の守秘義務違反の存否とは関係ない。


最後に、読売新聞が本件を無罪の線で押したいのであれば、自社の「情報管理を徹底せよ」という社説との整合性を説明してもらいたい。今回流出した映像が国家公務員法上の「秘密」に当たらないのでれば、そもそも管理する必要はないのであって、誰がどこに公表したって構わない。国会での野党の政府への追及も全くナンセンスということにもなる。これらの点を是非整合的に説明してもらいたい。


追記:本件では、国家公務員法違反以外に、不正アクセス禁止法違反や威力業務妨害罪の成否も問題になりうる。これら全ての点で、読売新聞は無罪と考えているのだろうか、その点も明らかにしてもらいたい。

尖閣映像流出:「まさかこんな事態に」 海保職員に衝撃

2010年11月11日 | Weblog
2010年11月10日 22時23分19秒掲載

毎日jp配信記事(URL http://mainichi.jp/select/jiken/news/20101110k0000e040055000c.html  )



「尖閣諸島沖での中国漁船衝突を巡るビデオ映像流出事件で、神戸海上保安部の職員が「自分が流出させた」と話し、逮捕の方向で捜査当局が検討を始めたことで、事件は解明に向け大きく前進した。問題の映像が投稿されたのは、神戸海保や上部組織の第5管区海上保安本部がある神戸市内の漫画喫茶(ネットカフェ)からとみられ、今後は動機や映像の入手経路などの解明が焦点となる。職員の「告白」に、海上保安庁には衝撃が走った。

 「神戸海上保安部所属の巡視艇乗組員が上司の船長に自分が流出させたと申し出た」。鈴木久泰・海上保安庁長官が10日午後1時過ぎ、衆院予算委で声を震わせながら明らかにすると、海保の職員は肩を落として「こんな展開になるとは思っていなかった……」とつぶやいた。

 この日は午前中から東京・霞が関の海保本庁に報道陣の取材が殺到。「捜査を受ける立場であり、身内を擁護するわけにもいかないので、申し訳ないがお答えできない」と広報担当の職員は頭を下げ続けた。

 報道用に臨時に会議室を開放し、第5管区の所属船艇の質問に答えていた幹部は、予算委での鈴木長官の緊急発言を聞くと、唇をかみ、力無く「やはり身内でしたか」とだけつぶやいた。

 別の幹部はさばさばした様子で「なんで神戸だったのかは、今後の捜査で解明されるでしょう」とだけ話した。

 ビデオの流出元との見方もあった石垣海保関係者は、別の海保職員がビデオ流出への関与を告白したとのニュースに、驚きを隠せない様子。「うちからではないにしても、流出させたのは海上保安庁の職員ではないと信じていたのだが……」と複雑な表情で語った。

 流出した映像は海保が撮影した捜査資料の一部で、元の映像は衝突事件の証拠として海保と検察当局が所有。当初から、内部から流出した可能性が高いとの指摘もあり、海保は職員らを対象に証拠の管理状況などの調査を進めてきた。

 東京地検は9日、動画投稿サイト「ユーチューブ」を運営する検索大手「グーグル」の日本法人から、パソコンのIPアドレスなどの投稿情報を入手。分析で神戸市内のネットカフェから送信された可能性が高いことが判明し、警視庁もこのネットカフェに捜査員を派遣するなどして投稿者の特定を進めていた。」



YOMIURI ONLINE配信記事( URL http://www.yomiuri.co.jp/feature/20100924-728653/news/20101110-OYT1T00671.htm  )



巡視艇ナンバー3のベテラン、義憤募らせ送信?



「神戸海上保安部の主任航海士は10日朝、巡視艇に乗って勤務していた。

 午前10時55分頃、神戸市中央区の第1突堤に到着し、正午頃に下船。スーツ姿の男性に連れられ、無言のまま桟橋近くに止められた車に乗り込んだ。「うらなみ」では実質ナンバー3の立場という。

 巡視艇の乗務経験が長いベテラン航海士で、ある海保職員は「長年、巡視艇に乗っていただけに、仲間が命がけで中国漁船と渡り合っている事実が、国民の目に隠されていることに義憤を募らせたのだろうか」と戸惑いを見せた。

 また、主任航海士とかつて同じ職場だったという5管本部の男性職員は「淡々と仕事をこなすタイプで、目立つ存在ではなかった。そんな大胆なことをするとは思えない」と驚いた様子だった。

 神戸海保の幹部は「神戸からインターネット上に投稿されたとは、想像もしていなかった。沖縄から動画をどうやって入手したのかわからない」と戸惑うように話した。別の男性職員は「まさか、神戸の組織からなんて……。国民から英雄視されるかもしれないが、僕らも組織の人間。個人の判断で国の命運を左右するような情報を流すべきじゃない」と憤った。

 漁船衝突事件の直後には、第11管区海上保安本部(那覇市)から、石垣海上保安部に多くの職員が応援に派遣されたが、神戸からは応援は出ていないという。海保幹部や職員は一様に、なぜ映像を入手できたのかと首をひねった。石垣海上保安部の幹部も報道陣を前に、「報道で聞いただけで何も分からない」と繰り返すだけだった。(2010年11月10日15時12分 読売新聞)」


ビデオ流出告発 危機感をもって真相の解明を(11月9日付・読売社説)

2010年11月11日 | Weblog
2010年11月09日 18時01分30秒掲載

URL http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20101108-OYT1T01202.htm



「真相解明の手段は「調査」から「捜査」に移った。相次ぐ情報流出で、国の情報管理能力が問われている。検察当局は危機感をもって捜査にあたらねばならない。

 尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を撮影したビデオ映像がインターネット上に流出した問題を巡り、海上保安庁が検察と警察に、被疑者不詳のまま、国家公務員法違反などの容疑で刑事告発した。

 流出映像は石垣海上保安部が編集したものとほぼ特定された。海保と検察の双方に保管されていたが、現時点で検察側から流出した形跡はなく、海保側から流れた疑いが強いという。

 誰がどんな手段で流出させたのか、何らかの政治的意図があったのか。重要なのは、真相の徹底解明である。

 そのためには、海保による任意の内部調査では限界があろう。告発により検察当局に捜査を委ねたのは当然だ。

 インターネット上では情報が瞬時に拡散する。パソコンへのアクセス状況を調べ、犯人を特定するには専門的な知識が必要だ。

 検察当局は流出ルートを調べるため、問題のビデオ映像が投稿されたサイトを運営する検索大手の「グーグル」に対し、投稿者の情報提供を求めた。

 それでも自宅のパソコンではなく、匿名性の高いネットカフェなどから投稿した場合には、投稿者の特定は極めて難しいという。

 警察にはサイバー犯罪に関する捜査ノウハウの蓄積がある。検察当局は警察と連携して、迅速に解明を進めてもらいたい。

 流出映像は、事件発生直後、石垣海保が内部の説明用に作成したものだという。石垣海保の共用パソコンに保存されたほか、複数の記憶媒体に複製された。

 捜査担当以外の職員も比較的自由にパソコンを閲覧したり、情報をコピーしたりすることが可能な状態だった。馬淵国土交通相の指示で管理が強化される先月中旬までは、記憶媒体の金庫での保管も徹底されていなかった。

 捜査機関として極めてずさんな情報管理にあきれるほかない。

 警視庁の国際テロ情報流出問題が明るみに出たばかりである。すべての捜査機関は、情報管理態勢を早急に見直し、再発防止に取り組まねばならない。

 今回の情報流出は、ビデオ映像の一般公開を避け続けた政府にも責任の一端がある。改めて国民に対するビデオの全面公開を検討する必要があろう。(2010年11月9日01時34分 読売新聞)」


最後の一段落が余計。責任は、流出させた人間にある。そこを誤魔化しちゃ駄目。当初非公開にしたのは、政府の合法的判断であり、一部を秘密会で公開したのは、国会(両議院)の合法的判断。それらの当否については、国民が、次回選挙で意思表示すればいいこと。(勿論その前にデモ等で意思表示しても構わないし、言論で意思表示しても構わない。)


海保の人間が流出させたのか、検察の人間が流出させたのかはわからないが、政府内の人間が、政府及び国会の判断を、自己の判断で違法に踏み越えていいわけがない。


捜査官憲が自らの「正義」を実力で実現することを容認することは、絶対にしてはいけない。