がん(骨肉腫)闘病記

抗がん剤治療、放射線治療、人工関節置換手術、MRSA感染、身体障害者となっての生活の記録を残します。

法曹界「秘密」の解釈…立件に賛否

2010年11月11日 | Weblog
2010年11月10日 23時28分50秒掲載

YOMIURI ONLINE配信記事(URL http://www.yomiuri.co.jp/net/report/20101110-OYT8T00358.htm  )



「尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡る映像流出事件で、東京地検と警視庁が国家公務員法の守秘義務違反での捜査を進める中、法曹関係者らの間では今回の流出が刑事罰の対象となるかどうかについて、意見が分かれている。

 公開を求める声が強かったビデオを流出させた行為に対し、過剰な刑事責任追及が行われれば、国民の知る権利を阻害することにもなりかねないだけに、捜査側は難しい判断を迫られそうだ。


「刑事罰には疑問」



「流出した映像は国家公務員法上の『秘密』には当たらず、刑事罰には疑問がある」。堀部政男・一橋大名誉教授(情報法)はそう話す。

 最高裁は1977年、同法違反に問われた税務署職員の裁判で、漏らした情報が〈1〉一般人が知らない〈2〉秘密として保護するべき――の二つの条件を満たす場合にのみ、守秘義務の対象になるという判例を示した。行政機関が形式的に秘密扱いにしていただけでは、漏らしても犯罪には当たらないことになる。

 堀部氏はこの基準について、「国民の知る権利の観点から、公務員の守秘義務の範囲が安易に広がらないようにした」と解説した上で、「今回は流出前から、海上保安庁が船長逮捕の会見で衝突の経過を詳細に説明し、衆院でもビデオが限定公開されて議員がその内容を記者に説明しており、一般人が知らない情報とは言えないのではないか」とする。



海保と映像



 仮に映像が「秘密」に当たるとしても、今後の捜査で判明した流出時期や動機によっては、裁判で「刑事罰を科すのは酷だ」という判断に至る可能性もある。

 海上保安庁は、犯罪を摘発する捜査機関であると同時に、領海警備などの任務も担う。「日夜、日本の海を守る海上保安官の姿を広く知ってもらう必要がある」として、普段から現場で撮影した映像を比較的オープンにしてきた。2001年に奄美大島沖で起きた北朝鮮不審船事件でも、不審船の銃撃や沈没を撮影した映像を公開。内部でも「危険な職務の実態を伝えられた」と評価されている。



今回も、衝突事件のあった9月7日、海保本庁は報道機関への配布用に映像をDVDにする作業に着手したが、官邸サイドの意向で中止した。馬淵国土交通相が、映像の厳重管理を指示したのは10月18日になってからだ。行政情報に詳しい弁護士は、「管理が緩かった時期に映像を持ち出し、国民の知る権利のためにあえて公開したとすると、裁判で違法性が否定される可能性もある」と指摘する。



世論の反応は?



 沖縄返還を巡る外務省機密漏えい事件(71年)では、記者が職員に守秘義務違反をそそのかしたとして起訴された。78年に有罪が確定したものの、最高裁は「報道機関が取材目的で公務員に秘密漏えいをそそのかしても、手段や方法が社会通念上、是認されるものなら正当」と言及し、国民の知る権利に理解を示した。

 今回問題になっているのは、公務員自身の守秘義務だが、ある検察幹部は「(有罪を立証できるか)ボーダーラインのケース」と漏らす。一方、別の幹部は「これだけ公開の是非が議論されていた映像を流出させたのだから、守秘義務違反は成り立つはず」と話す。

 ある刑事裁判官は「今回の映像の場合、公開すれば中国との関係が悪化しかねないという点は重視せざるを得ず、無罪という結論は出にくいだろう」と指摘。ただ、世論の反応によっては、検察が起訴猶予にする選択肢もありうると推測する。

国家公務員法の守秘義務
 現職、元職を問わず「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」と定められ、違反すれば1年以下の懲役か50万円以下の罰金を科される。外部の者が秘密漏えいをそそのかしたりした場合にも同じ罰則がある。


(2010年11月10日 読売新聞)」


この記事は、今朝の読売新聞にもデカデカと掲載されている。読売は無罪の線で押したいのかもしれない。

しかし、私としては「いかがなものか」という気がする。


まず、堀部先生の解釈の仕方であるが、無理があるのではないかという気が個人的にはする。

堀部先生は「流出前から、海上保安庁が船長逮捕の会見で衝突の経過を詳細に説明し、衆院でもビデオが限定公開されて議員がその内容を記者に説明しており、一般人が知らない情報とは言えないのではないか」とおっしゃっているが、口頭による説明と映像が同じ「情報」と評価しうるのか、疑問が残る。ただ、この点は、最終的には裁判所の判断を待つほかない。


次に、「仮に映像が「秘密」に当たるとしても、今後の捜査で判明した流出時期や動機によっては、裁判で「刑事罰を科すのは酷だ」という判断に至る可能性もある。」とあるが、ビラを配っただけで、逮捕・勾留・起訴し、有罪判決を下す我が国刑事司法である。本件において、刑事罰を科すべきではないとの結論には至らないのではないか。
仮に、本件で違法性が否定又は阻却されたとすれば、どのような場合に違法性が否定又は阻却されるのか、他の刑事罰を科したケースとの異同を明らかにしてもらいたい。


さらに、外務省機密漏えい事件(71年)の決定を紹介しているが、記事にある通り、この決定は、報道機関の取材方法についての決定であって、本件のような公務員自身の守秘義務違反の存否とは関係ない。


最後に、読売新聞が本件を無罪の線で押したいのであれば、自社の「情報管理を徹底せよ」という社説との整合性を説明してもらいたい。今回流出した映像が国家公務員法上の「秘密」に当たらないのでれば、そもそも管理する必要はないのであって、誰がどこに公表したって構わない。国会での野党の政府への追及も全くナンセンスということにもなる。これらの点を是非整合的に説明してもらいたい。


追記:本件では、国家公務員法違反以外に、不正アクセス禁止法違反や威力業務妨害罪の成否も問題になりうる。これら全ての点で、読売新聞は無罪と考えているのだろうか、その点も明らかにしてもらいたい。

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