がん(骨肉腫)闘病記

抗がん剤治療、放射線治療、人工関節置換手術、MRSA感染、身体障害者となっての生活の記録を残します。

生活保護費への老齢・母子加算廃止は合憲…京都地裁

2009年12月15日 | Weblog
2009年12月14日 20時39分33秒記載

URL http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20091214-OYT1T00759.htm?from=main5  



「生活保護費に上乗せされる「老齢加算」と「母子加算」を廃止したのは、憲法が保障する生存権の侵害だとして、京都府内の生活保護受給者4人が京都、城陽両市を相手取り、廃止の取り消しを求めた訴訟の判決が14日、京都地裁であった。

 滝華(たきはな)聡之裁判長は「加算廃止は厚生労働相の裁量権の範囲内で、違憲や違法性はない」として請求を棄却した。原告側は控訴した。

 政権交代後、母子加算については、今月から来年3月末までの期間限定で復活した。復活後の司法判断は初めて。

 訴訟では、厚労相の決定を受けた2005年度末の老齢加算廃止、08年度末の母子加算廃止が、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利(生存権)を侵害するかが最大の争点になった。判決で滝華裁判長は「国の財政事情や政策的判断、専門家らの意見などを根拠に、厚労相が加算廃止を検討した手法は合理的。最低限度の生活を下回る結果をもたらしているとは言えない」と判断した。

 京都市は「妥当な判決。今後も適切な生活保護制度の運営に努める」とのコメントを出した。(2009年12月14日19時06分 読売新聞)」



社会権については、広い立法裁量・行政裁量を認めるのが我が国司法の「伝統」なので、今回の判決は予想通り。おそらく日本中の裁判所(一審・控訴審・上告審を問わず)で同じ結論になると思う。



ただ、広い立法裁量・行政裁量が認められるということは、立法府にまともな人間さえ送り込めば、生存権侵害を避けられる。デモ等を積極的に行わない多くの国民は、そのことを意に留めて投票行動を採るしかない。



最後に、我が国には、生活保護受給者を攻撃する人間が結構いるので、生活保護受給者の実態を記しておく。



2009年7月現在、生活保護受給世帯数は約124万世帯。そのうち44.8%は高齢者世帯。22.9%は傷病者世帯。11.6%は障害者世帯。これだけでもう全体の79.3%。残り20.7%のうち、7.8%が母子世帯。12.9%がその他世帯である。そして、全世帯の平均年収が564万円である一方、母子世帯の平均年収は213万円である。(平均年収のデータは2005年のもの。)



生活保護受給者を攻撃する人間は、暴力団員による不正受給のようなケースが全てであるように、無知を原因として誤解している。確かに暴力団員による不正受給は存在するが、それは、生活保護制度や生活保護受給者の問題ではなく、「強きを助け、弱きをくじく」行政側の問題である。



重い病気になって、障害を抱えてみればわかるが、とても働くことは出来ない。生活保護受給者を攻撃する人間は、そのような人達に「死ね」と言いたいのだろうか。ブログ市長のように。



高齢の受給者に対しては、「貯金をしておけば良かっただろ」などと非難を浴びせるのかもしれないが、現時点での高齢者は、戦前に生まれ、先の大戦を経験し、焼け野原を必死の思いで生き延びて来た人達である。「貯金をしておけ」などと非難するのは、私に言わせれば、余りに非寛容である。生き抜くだけで精一杯だった人もいるだろう。

そんな非難を浴びせている暇があるなら、もっと充実した年金制度の構築について勉強でもしたらどうか。



特別支援教育 (8)障害話し合える社会へ

2009年12月14日 | Weblog
2009年12月12日 22時35分49秒記載

URL http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091212-OYT8T00314.htm?from=nwlb  



「読者から連載への感想が相次いだ。

 「普通高校と特別支援学校とのはざまで、発達障害の子はちゅうぶらりんになっている」。広汎性発達障害のある中学2年の娘を持つ埼玉県の母親(40)は、そう指摘する。娘は知的な遅れがなく、療育手帳を持っていない。特別支援学校からは「管轄外」、普通高校からは「集団生活が苦手だと単位取得は難しい」と言われている。「高校の特別支援教育は名ばかりで、中学までの支援が途絶えてしまう」と嘆く。

 ディスレクシアの中学3年の娘を持つ千葉県の母親(47)は、「普通高校へいきたい」という娘の希望をかなえるため、娘とマンツーマンで受験勉強に励んでいる。今の悩みは、娘の発達障害を志望校に伝えるかどうか。担任は「不利になるからふせた方がよい」と言うが、面接や作文で配慮をしてもらえる特例があることを教育委員会から聞いた。「アメリカなどでは、試験時間の延長や誤字・脱字への配慮は当たり前と聞く。その度に日本の特別支援教育の遅れを痛感して、ため息が出る」

 このほか、苦手なことを力ずくでやらせようとした上、「できないのは親が甘やかしたからだ」と非難する、無理解な教師の対応に傷ついたという声などが寄せられた。

 社会への橋渡しとなる、義務教育後の特別支援教育に課された役割は大きい。

◎   ◎
 「発達障害がある子の存在を認め、クラスに居場所を作ってほしい」。ディスレクシアを告白し、中学、高校で講演活動を行う南雲明彦さん(25)は、そう訴える。

 文字がにじみ、かすみ、揺らいで見える――。読み書きが苦手だと意識したのは小学生のころ。「みんなと同じようにできないのは怠けているからだ」と自分を責めた。

 教師から朗読するよう指されると、笑いを取ってごまかす。読めない自分を悟られぬよう、必死に「おちゃらけキャラ」を演じたが、高校2年になって受験モードに入ると、仲間の視線が厳しくなった。

 学校に行くのも、人に会うのもこわくなり、自宅に引きこもった。「自分は汚れている」という強迫性障害が表れ、一日に何度も、何度も、手を洗わずにはいられない。3度の転校を経てたどり着いたのが、インターネットを活用した通信制高校だった。

 21歳のとき、ボランティアをしようと、ディスレクシアを支援するNPOを訪れた。自分も当事者だと、初めて気がついた。「怠けていたわけじゃないんだと分かり、目の前が明るくなった」

 同じように苦しむ子のためにも、発達障害を啓発することが必要だと考え、講演をするようになった。講演先で教室に入ると、つらかった学校時代の思い出が今もよみがえる。それでも、生徒から「学習障害のことがよく分かった」と言われると、当事者が声をあげる大切さを実感する。

 「勇気ある告白」と言われることには、違和感を覚える。だれもが気軽に自分の障害について話し合える社会が、いつか来ると信じている。(聞き手・保井隆之)

 ディスレクシア 学習障害の一種で、知的な遅れはないのに、読み書きに困難を示しやすい発達の障害。日本での発現率は約5%、英語圏の発現率は10%以上と言われている。


 次週からのテーマは「幼児教育」です。(2009年12月12日 読売新聞)」

特別支援教育 (7)自立・就労へ重点指導

2009年12月14日 | Weblog
2009年12月12日 22時34分50秒記載

URL http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091210-OYT8T00192.htm?from=nwlb  




「発達障害がある若者が社会で自立できるよう、学習を支援する。

 冬の穏やかな日差しが入る小さな教室。2人の生徒が国語、英語、数学の問題を解いている。「はい、終わり。じゃあ、答え合わせしようか」という女性教師に、生徒の大和田聡美さん(仮名)(20)は、「えー。難しいよ、これ」と苦笑いした。

 名古屋市中川区の見晴台学園は、学習障害(LD)がある子どもの保護者らが設立した無認可の学校で、中等部と高等部がある。高等部は3年間で学力の底上げをはかる「本科」と、その後2年間で自立・就労を目指す「専攻科」がある。専攻科には、職場体験や調理実習などの授業もある。いずれも6人ほどの少人数で授業を行い、5年かけて「理解する喜び」をじっくり育む。

 同学園には、子どもに知的障害がないため特別支援学校などに入学できないが、「一般の学校で学ぶのは難しい」と判断した保護者が通わせている。現在、本科11人、専攻科10人が在籍し、東京から親と転居してきた生徒もいる。

 「開校20年目を迎えたが、義務教育を終えた発達障害の生徒がしっかり支援を受けられる学校は今も少ない」と、藪(やぶ)一之学園長(44)は嘆く。

 大和田さんは、専攻科の2年。相手が話す言葉が抽象的だと十分理解できない。この日は、来春の定時制高校入学を目指し、過去の試験問題に挑戦した。

 小学生時代、わからないことがあっても教師に聞けず、友達ともうまく意思疎通できないことで悩んでいた。だが今は「友達もできたし、先生に何でも聞けるようになった。自分に自信が付き、前向きになった」と言い、社会に出ることを楽しみにしている。


 埼玉県春日部市の自然学園は、通信制高校の技能連携校という形で高校卒業資格を得られる高等部(3年)と、その後の自立に向けた学習を行う大学部(原則2年)をもつ。

 現在4人が通う大学部では、パソコンの操作法や文書作成、電子メールの使い方などを中心に、ビジネスマナー、コミュニケーションなどを指導、職場体験も行っている。

 大学部1年の小谷俊明さん(仮名)(20)は、読み書きが困難な「ディスレクシア」などの障害がある。同県内の定時制高校を3月に卒業。だが在学中に経験したスーパーなど複数のアルバイトで度々上司に怒られ、自信を喪失して、同学園大学部に入った。入園後は読み書きの指導を重点的に受けており、「先生方が自分の障害を理解してくれているので、うれしい。頑張って早く就職したい」と話す。

 とはいえ、働きたくても働けない人は多い。小林浩・学園長(47)は、「企業は障害者を雇うよう促されているが、発達障害がある人で、障害者手帳を持っている人は少ないのが現状」と指摘する。

 社会で自立するための勉強が報われるよう、受け皿作りを急ぐ必要がある。(瀬畠義孝、写真も)

(2009年12月10日 読売新聞)」

特別支援教育 (6)発達障害の学生 後押し

2009年12月14日 | Weblog
2009年12月12日 22時30分23秒記載

URL http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091209-OYT8T00282.htm?from=nwlb  



「大学でも発達障害のある学生が支援を必要としている。

 9学部と大学院に約9200人が通う富山大学(富山市)。大勢の学生が教室に吸い込まれ、キャンパスが静かになった午前10時半、理系学部に入学して4年目の佐野耕平さん(仮名)(21)が、「アクセシビリティ・コミュニケーション支援室」のドアをノックした。全国の大学でも珍しい発達障害の学生支援を目的とする機関だ。

 佐野さんには、アスペルガー症候群と注意欠陥・多動性障害(ADHD)がある。「講義が急に変更になったり、遅刻しそうになったりすると動揺してしまう」。その場に座り込み、動けなくなることもあるという。

 昨年度の約1年間は休学。昨年4月に支援室が開設され、今年度から復学した。支援室では、佐野さんの障害を考えて、履修科目の選択を一緒に検討。各教員にも状況を伝え、体調不良による欠席をリポート提出で代替するなどの配慮を求めてくれた。

 支援室の吉永崇史・特命准教授(33)は、「佐野さんは授業に出たいとの意欲が強い。どういう形なら単位が取得できるのか、教員も含めて一緒に考えている」と説明する。


 膨大な学生たちの中で、誰が支援を必要としているのか――。大学の特別支援教育はそこが難しい。

 入学時の書類に障害があることを記載する学生はほとんどいない。そこで同大では支援室の開設を機に、新入生や保護者、全教員にパンフレットを配布。「発達障害」に限定せず、学業や人間関係で困りごとをもつ学生の相談機関としてPRした。

 「発達障害を前面に出すと、障害を自覚していない学生は来ないし、教員も『行ってみなさい』とは言いづらい」と支援室長の斎藤清二教授(心療内科医)は話す。同大は現在、発達障害がある、または疑われる学生23人を支援。そのほとんどは教職員や保護者の勧めで訪れた学生だ。

 支援につながるもう一つの窓口は、インターネットだ。例えば、ゼミやサークルの連絡に使ったりするSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でも、支援室は困りごとの相談を受け付けており、学生本人や教職員から「要支援」の情報が寄せられている。


 「大学での特別支援は前例が少なく、すべて手探りの状況」と斎藤教授。支援室では特別支援学校の元教諭らコーディネーター4人が相談に対応し、相談件数は昨年度から3倍強の月平均80件に上る。

 アスペルガー症候群で一時大学を休んでいた男子2年生の母親(49)は、「支援室の方々はよく連絡をくれるし、熱意を感じる。支援がなかったら復学できていなかったはずで、感謝している」と話す。

 青年期の発達障害は、子ども以上に周囲から理解されにくい。大学での支援が当たり前になれば、社会全体の理解も広まっていくはずだ。(瀬畠義孝、写真も)

 SNS 趣味や仕事などの共通項を持つ人々が、インターネット上に作った交流の場。多くは匿名で参加する。友達の輪のように交流のネットワークがどんどん発展するのが特徴。最近は企業の社員用コミュニティーや広報・宣伝など、ビジネスでの活用も増えている。(2009年12月9日 読売新聞)」



特別支援教育 (5)高専 5年で深く広く

2009年12月14日 | Weblog
2009年12月12日 22時28分59秒記載

URL http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091208-OYT8T00363.htm?from=nwlb  



「5年間学ぶ高等専門学校(高専)では、息の長い特別支援教育が必要だ。

 「その後、就職活動の方はどう?」

 「どこも厳しいですね。なので資格を取ろうと勉強しています」

 11月10日、佐世保工業高等専門学校(長崎県佐世保市)を、卒業生の中林健司さん(仮名)(22)が訪れた。特別支援教育コーディネーターの松尾秀樹教授(51)に、就職などの相談をするためだ。

 同校は、発達障害やその疑いがある学生に対し、「修学」「就労」「生活」の観点で支援を行っている。学業不振の学生に対して個別指導したり、作業療法士ら専門家に面談してもらうなど、学生一人ひとりに応じた支援を行っているのが特徴だ。

 「高専は一般の高校より、発達障害のある学生が多いかもしれない」と松尾教授は話す。文部科学省によると、発達障害など「困難のある生徒」は全日制高校に1・8%いるが、同校では4%近く(約30人)いる。発達障害がある学生は、理科・数学が得意な場合が多いこと、高専は寮生活ができ、保護者がコミュニケーション能力の向上を期待して入学させること――などが理由と見られる。

 同校を定期的に訪れる長崎大学の岩永竜一郎(りょういちろう)准教授(41)(作業療法学)は、「発達障害がある高専の学生は、非常に優秀な人と、進級が難しい人と、二極化している」と話す。高専の授業についていくのは大変だ。各科目で60点以上取らないと留年になる。実験リポートの提出などをこなせず、中退する学生もいるため、対策が求められていた。


 同校が特別支援教育に本格的に取り組んだのは、中林さんへの支援がきっかけだった。アスペルガー症候群の中林さんは、数学は得意で、知能指数(IQ)も123と高い。だが文章をまとめるのが苦手で、リポートを期限までに出せないこともあった。会話がかみ合わず、早とちりも多かったため、同級生にからかわれた。教室で大声を出し、机を倒すなどの癇癪(かんしゃく)を起こす二次的障害もあった。

 当時、学生相談室長で、自分も軽い知的障害の子どもを持つ松尾教授は、「外部機関も含めた支援体制が必要だ」と校長らに訴えた。そして、卒業後も社会に適応できるように、同県発達障害者支援センターや長崎障害者職業センターとの連携が実現。同級生には中林さんの特性を説明し、母親とも相談を重ねるなど、周囲にも理解を求めてきた。


 中林さんは途中1年留年したが、昨春に無事卒業。コミュニケーションもうまくなり、今は「学校で勉強した電気関係の仕事に就きたい」と求職中だ。11月には第3種電気主任技術者の国家試験に合格し、自動車教習所にも通うなど、自立に向けて努力している。

 高専は5年間と長く、継続した支援を行うには適している。今後、全国的にも実践が広まるだろう。(瀬畠義孝、写真も)

 アスペルガー症候群 知的障害がない発達障害の一つで、脳の機能障害とされる。社会性、コミュニケーション、想像力・創造性に障害がある。一見、障害があるように見えない場合が多く、周囲から理解されにくい面がある。(2009年12月8日 読売新聞)」

特別支援教育 (4)中学から情報、指導充実

2009年12月14日 | Weblog
2009年12月12日 22時26分34秒記載

URL http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091205-OYT8T00378.htm?from=nwlb  



「入試という大きな壁を超え、中学から高校へ支援を引き継ぐ。

 福島県立川俣高校(川俣町)で特別支援コーディネーターを務める高井麗子教諭(53)にとって、3月末の数日間は、1年で最も多忙を極める時期となる。今年は入試の最終的な合格発表が3月25日にあり、27日がオリエンテーションだった。高井教諭は25、26日の2日間で、入学する生徒の出身校を駆け回った。

 「担任が新年度に異動することもあるから、3月いっぱいが勝負」と高井教諭。発達障害のある生徒など、配慮の必要な子に関する情報をできるだけ収集し、新学期からの授業に備えるのが目的だ。

 「授業のペースについていけず、生徒がパニックになってしまったこともあった。事前に中学から情報を得ていれば、防げたのに……」。高井教諭が苦い表情で振り返る。

 発達障害のある生徒が充実した高校生活を送るには、個別の指導計画など、中学での支援情報を円滑に高校に引き継ぐ必要がある。しかし、入試で不利になることを懸念し、情報を伝えない中学も少なくない。公立の場合、市町村立の中学と、都道府県立の高校とでは、学校設置者が異なることもネックとなる。

 同校は2005年、発達障害のある生徒の高校での指導のあり方などについて、高校では初の研究開発学校として、文部科学省から指定を受けた。幼稚園、小、中学校のコーディネーターが集まる連絡会に高井教諭も参加し、幼児期からの一貫した支援体制の整備に力を注いでいる。

 「英語の単語を区切らずに書く生徒のノートに、教員が単語ごとに蛍光ペンを引いて色分けするなど、発達障害の子にも分かる丁寧な指導を、すべての生徒に対して心がけてきた。その結果、学校全体としての学力も向上した」。高井教諭は特別支援教育に取り組んだ成果を、そう話す。


 滋賀県立日野高校(日野町)は、高校卒業後の支援にも力を注ぐ。本人と保護者の了解を得た上で、高校での支援に関する情報を、大学や企業に提供している。

 特別支援教育コーディネーターの山口比呂美教諭(51)は「年に3~4回、大学での様子を担当者に尋ね、本人にも電話を入れる。本人が困っている場合は、こちらから大学に連絡することもある」と話す。発達障害のある子が自立するには、「保幼小中高大企(保育園、幼稚園、小、中学校、高校、大学、企業)」が連携し、早期発見と生涯にわたる支援が欠かせない。

 同校が取り組むのは、障害理解教育だ。発達障害への偏見をなくし、正しく理解してもらうため、生徒への啓発や、保護者、地域の人々、企業にも公開した研修会を重ねている。「障害をその人の個性や特性と受けとめ、お互いを認め合えるようになってほしい」と山口教諭。

 教諭たちが思い描くのは、「発達障害」や「特別支援教育」という言葉を、もはや必要としない社会だ。(保井隆之、写真も)(2009年12月5日 読売新聞)」



特別支援教育 (3)教師の卵 心もサポート

2009年12月14日 | Weblog
2009年12月12日 22時25分16秒記載

URL http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091203-OYT8T00278.htm  



「教員志望の大学生を、学習支援ボランティアとして活用する高校がある。

 「質問をしても、答えが見つかるまで話さない。長い沈黙に特徴がある子だな、と戸惑いもあった」。京都教育大学大学院で教職を目指す修士課程2年の池田純さん(23)は、高杉大輔君(仮名)(20)との出会いをそう振り返る。

 池田さんが、京都府立朱雀高校(京都市中京区)の高大連携事業の一環として、同校の学習サポートアシスタントになったのは2007年夏。放課後に個別指導したのが、当時3年生の高杉君だった。

 高杉君は、考えを頭の中で整理するのが苦手で、言葉にするまでに時間がかかる。答えにたどり着かないと途中経過を話さないので、どこでつまずいたのか分からない。市販の問題集は役に立たないと思い、小さな問いを積み重ねる形式の教材を自作した。

 粘り強く話しかけた結果、高杉君の沈黙は次第になくなった。「高杉君は明るくなったねと、養護教諭から声をかけられたのがうれしかった。授業のポイントを学べ、貴重な体験だった」と池田さんは話す。高杉君は「頼れるお兄さんって感じで、気軽に話せた。勉強も一対一で分かりやすかった」と笑顔を見せた。


 全日制、定時制、通信制を併設する同校が、特別支援の取り組みを始めたのは10年前。学習障害(LD)と疑われる生徒が入学してきたのがきっかけだった。専門家を講師に招いて研修を重ね、発達障害への理解を深めていった。

 「教員がスキルアップした結果、人間関係を築くのが苦手な子など、それまでは見過ごしていた『気になる子』に気づくようになった。なぜできないのかと怒るのではなく、どうすればできるようになるだろうと、生徒への意識も大きく変わった」。滋野哲秀校長(55)が説明する。

 学習サポートアシスタントは元々、進路指導のために導入した。しかし、地方自治体の財政難で特別支援教育支援員が削減方向にある中、特別支援教育にも応用できると同校は考えた。

 「学習面でのつまずきをフォローするだけでなく、身近な存在としてメンタルな部分でも寄り添ってもらっている」と進路指導部の高田法彦教諭(48)は話す。


 年間30日以上欠席した生徒を対象に、06年度から導入した長期欠席者特別入学者選抜も、特別支援教育を深化させる契機となった。「気になる子」の情報を共有して複数の目を注ぎながらも、決して特別扱いはしない。それが、普通科の中でのあるべき特別支援教育と考えている。

 「入試というハードルを越えた以上、特別扱いは自尊心を傷つけ、障害のレッテル張りにもつながる。大切なのは、その子を含めて誰にでも分かる授業をすること」と元養護教諭で現在は非常勤講師の佐藤友子さん(62)。

 そんな実践を、同校は「特別でない特別支援教育」と呼んでいる。(保井隆之、写真も)

 特別支援教育支援員 障害のある生徒に対して、介助を行ったり、学習活動上のサポートを行ったりする。公立幼稚園、小・中学校では国の地方財政措置があるが、高校では各自治体の自主財源に頼るしかなく、財政事情の悪化から、その数は減少している。公立高校の活用状況は、2007年度278人、08年度224人、今年度219人。(2009年12月3日 読売新聞)」

特別支援教育 (2)心理学で学ぶ対人関係

2009年12月14日 | Weblog
2009年12月12日 22時17分40秒記載

URL http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091202-OYT8T00251.htm  



「対人関係を上手に築けるよう、心理学を必修で学ぶ高校がある。

 「怒り、落ち込み、不安はどこからくるんだろう?」。教壇から問いかける女性教諭に、生徒の視線が注がれた。

 開かれた教科書には、「思考楽々シート」の文字。「問題の出来事」「そのときの心のつぶやき」「感情」「楽になるための考え」が、順を追って記入できる。

 「ケータイの待ち受けを見たら自分のじゃなかった。だれが私のを持ってるの? ゲキ不安! さっさと見つけようと行動に移す!!」。女子生徒が笑顔で自分の「答え」を発表した。

 「怒り、落ち込み、不安になったら、心のつぶやきに耳を傾け、柔らかく考えてみて」。教諭はそう言って、45分間の授業を締めくくった。


 茨城県鹿嶋市の県立鹿島灘高校は午前、午後、夜間の3部制を取る定時制だ。不登校など多様な生徒を受け入れ、「フレックススクール」と呼ばれる。小中学校時代の友人関係のトラブルから心に問題を抱える子もいる。

 発達障害のある子の3割が不登校になり、不登校の3割に発達障害があると言われる。同校には、発達障害の診断を持つ子はいないが、疑いのある子を含めて、集団生活で苦戦しやすい子を支援するため、学校設定科目として「心理学」を設定。1年次に必修としている。

 元々の障害を「一次障害」というのに対して、周囲の無理解などによって失敗体験が重なり、自尊心が低下して起きる様々な症状を「二次的障害」という。「高校生の年代に表れる症状は、両方が複雑に絡み合い、どこまでが発達障害によるものとは言いづらい。だから発達障害を見つけて選別するよりも、学校生活で苦戦する生徒たちとして指導する方が有効」。授業作成者の一人、筑波大学の石隈利紀教授(59)(学校心理学)は、そう説明する。

 授業は、ロールプレイング(役割演技)などのゲーム的要素も取り入れ、楽しみながら社会スキルなどを学べるように構成されている。

 「相手と自分の気持ちがよく分かるようになった。社会に出てからも、きっと役立つはず」と男子生徒(16)。一方、「自分はなんてマイナス思考なんだろうと気づき、つらくなるときもある」と表情を曇らせる女子生徒(15)もいた。

 「自分の内面と向き合う授業だから、心にふたをして閉ざしてきたつらい出来事をほじくり出されるように感じるときもある。心の傷を少しずついやしてほしい」。授業を担当する鴨志田和子教諭(51)が解説してくれた。


 今年度の中退者数は、2007年度の約1割で推移している。自己を発見し、理解する授業が、実を結びつつある。

 ほかの人と同じようにできない自分を責めるのではなく、ありのままの自分を受け入れ、自尊感情を取り戻せるように背中を押す。そこから、本当の特別支援教育が始まる。(保井隆之、写真も)

 学校設定科目 学習指導要領により、各学校が地域、学校、生徒の実態、学科の特色等に応じ、独自に設けることが認められた科目のこと。文部科学省の私的諮問機関が今年8月にまとめた報告書では、発達障害のある生徒の自立にも資する教科・科目を開設し、通級指導教室のような形態で実施することも考えられるとしている。(2009年12月2日 読売新聞)」

特別支援教育 (1)発達障害の子 普通科で自立

2009年12月14日 | Weblog
2009年12月12日 22時15分11秒記載

URL http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091201-OYT8T00359.htm?from=nwlb  



「発達障害のある生徒を、積極的に受け入れる高校がある。

 机の上に広げた詩のプリントを、生徒たちが食い入るように見つめている。「今日は好きな詩を朗読し、どこが心に響いたか発表してもらいます」。女性教諭の張りのある声が教室に響き渡り、2年生の現代文の授業は始まった。

 挙手した生徒が次々と指名されていったが、順番が回ってきたのに席を立たない男子がいた。すかさず周りから、「頑張れ」と声がかかる。

 「よし!」。自らほおをたたいて気合を入れ、壇上に向かう男子。時折つっかえながらも、しっかりとした声で最後まで詩を読み上げた。

 だれの朗読が良かったか、教諭が決を採る。自分の名を呼ばれた男子が「はい!」と手を挙げて立ち上がると、教室は大きな笑いに包まれた。


 福岡県八女市の西日本短期大学付属高校。普通科の中に「発達支援クラス」を設け、学習障害(LD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)、高機能自閉症など、従来の特殊教育では対象とされなかった発達障害の子を、全国に先駆けて受け入れてきた。

 「前身となる情緒障害クラスを設けたのが20年前。例えば、計算はトップクラスでも証明問題が解けないなど、発達のアンバランスさが目立つ生徒が増えてきた。こうした子を支援し、自立させる教育へのニーズが高まっている」。森田修示校長(58)が、クラス設置の狙いを話す。

 発達支援クラスに在籍するのは9人。詩を読み上げた真也君(仮名)もその一人。対人関係を築くのが苦手な高機能自閉症だ。学力の遅れが目立つ教科は、発達支援クラスで少人数指導を受け、その他の教科は通常のクラスで「交流授業」に参加する。発達支援クラスには、このほか、問題が起きれば避難所となるような機能も持たせている。

 「発達障害とそうでない子を分離するのでなく、なるべく同じクラスで共に学ぶ統合教育を目指している。トラブルを一つひとつ解決していった経験が、社会に出てからの自立につながる」。発達支援クラス担当の福島文吾教諭(56)は強調する。

 同様の試みは、佐賀県でも始まろうとしている。県立太良(たら)高校(太良町)は2011年度の入試から、発達障害の子らを対象にした枠を設ける。

 県教委が07年度に行った調査で、発達障害がある生徒の約3割が全日制高校に進学していなかった。「不登校、中途退学者も含め、既存の全日制では十分に対応できていない生徒に教育機会を拡大する必要がある」と県教委学校再編・新太良高準備室の古賀信孝参事(53)。

 白水敏光校長(54)は「発達障害の子を支える指導のノウハウを確立し、県下の高校に返していきたい」と語る。


 真也君は中学時代、特別支援学級にいた。母親は特別支援学校への進学を考えたが、本人が普通高校を志望した。

 「一人前の男になりたいんだという気持ちが強い。苦手な集団生活の中に入り、交流授業に参加しているのが自信になっている」と母親は話す。

 授業中に弁当を食べ始めたり、バスの中で大声で歌ったり……。空気を読むのが不得手な真也君の行動に、当初はクラスメートも戸惑いを見せた。しかし、発達障害の特性を理解していくに従い、彼を見守っていこうという雰囲気が醸成されていった。突然大声を出した真也君を、隣の席の子が口の前に指を立て、優しく諭す姿が印象的だった。

 「真也君が変わっていく姿を見ていると、自分も頑張らなければという気持ちになる」と男子生徒。「彼と出会って、自分の視野や考え方が広がった」と女子が言葉を続けた。

 そんな真也君は今年2月、米国で開かれた知的障害者のスポーツの祭典「スペシャルオリンピックス冬季世界大会」のスピードスケートで、三つの金メダルに輝いた。「北京の北島康介、トリノの荒川静香、そしてスペシャルオリンピックスの真也! 頑張りました!!」。メダルを首から下げ、大きな拍手を浴びながら報告した真也君は、発達支援クラスから来る“お客様”ではなく、希望の星なのだ。

 発達障害の子が通常のクラスに入り、お互いが個性を認め合いながら共に成長していく。そこに、統合教育の醍醐(だいご)味がある。(保井隆之、写真も)



◇取り組み遅れる高校



 発達障害の子も教育ニーズに応じて支援する、特別支援教育が本格的に始まってから、3年目に入った。校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの指名など、ほぼ体制整備が整った小・中学校に対して、高校など義務教育後の取り組みは大きく遅れているのが現状だ。

 文部科学省が今年3月、中学3年生の進路状況を分析した結果、高校進学者の約2・2%に発達障害等の困難があることが分かった。課程別に見ると、全日制の推計在籍率1・8%に対して、定時制14・1%、通信制は15・7%。学科別では、普通科2・0%、専門学科2・6%、総合学科3・6%となっている。

 高校で特別支援教育が進まない理由として、「選抜試験を経て入学してきたのにできないのはおかしい」とする教員の意識や、中学との連携不足からそれまでの支援が途絶えてしまうケースが多いことなどが指摘されている。

 文科省の私的諮問機関が8月にまとめた報告書では、通常の学級に在籍しながら必要に応じて別の場で指導を受ける、通級による指導の制度化などが提言されている。

(2009年12月1日 読売新聞)」

12月6日付 編集手帳

2009年12月14日 | Weblog
2009年12月11日 23時58分24秒記載

URL http://www.yomiuri.co.jp/editorial/column1/news/20091205-OYT1T01198.htm  



「小学4年のその女の子は生まれつき左足がない。幼い新入生たちが義足を見て、「偽物の足だ」と心ないことを言う。彼女は当然、傷つき、担任の先生に相談した◆そこからの先生の対応と、少女の勇気が素晴らしい。先生は「1年生に足のことを話してみようか」と提案する。少女はそれを受け入れて1年生の教室を訪ね、目の前で義足をはずして、足がない理由や自分の気持ちを自然体で説いた◆障害者週間(3~9日)に合わせて内閣府が募集した「心の輪を広げる体験作文」の小学生部門で、総理大臣賞を受けた作品のあらすじだ。自らの体験をつづったのは熊本県の南阿蘇村立久木野小学校4年、藤崎未夏さん◆紙幅の都合で一部しか紹介できないが、首相官邸のホームページで鳩山内閣のメールマガジン第9号を開くと、未夏さんのメッセージとともに全文へのリンクがある◆審査員の一人として作品を読ませてもらった。自我が育つ時期に、良き先生に出会えた未夏さんと1年生たちの何と幸せなことか――そんな思いを抱きつつ最優秀作に推した。全員一致である。多くの人に読んでいただきたい。(2009年12月6日01時15分 読売新聞)」



参照URL http://www.mmz.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2009/1203e.html  



身体障害者も乗りやすく=運転補助装置を充実-自動車メーカー

2009年12月14日 | Weblog
2009年12月01日 23時59分47秒記載

URL http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009112800180



「身体障害者がアクセルペダルなどを使わずに運転することを可能にする補助装置の開発に、自動車、関連部品メーカーが力を入れている。「障害者の運転ニーズは増えている」(特定非営利活動法人の運転免許取得支援センター)一方、補助装置の存在はあまり知られていない。メーカーは「運転をあきらめていた人にも、ぜひ利用してほしい」(ホンダ)と呼び掛けている。
 ホンダは今秋、アクセルとブレーキに対応する手動レバーを改良、微妙な加速や減速を可能にした。装置の価格は26万2500円。トヨタ自動車は、首の骨の損傷など重度の障害を負った人向けの商品を充実させた。指がまひしていても、手をレバーに乗せて左右に動かすウインカー装置などを取りそろえる。
 補助装置の専業メーカー、ニッシン自動車工業(埼玉県大利根町)は、ハンドルの代わりにレバーを前後左右に傾けて操作する装置を開発中で、2年以内の実用化を目指す。腕が十分に上がらない人や握力のない人でも運転できるという。(2009/11/28-17:18)」