2010年07月18日 20時05分25秒掲載
URL http://www.asahi.com/paper/editorial20100715.html#Edit2
「制度の欠陥が、ゆがんだ結果をまた生んだ。参院選が今回改めて警告している。「一票の格差」が大きすぎる。
今回の選挙区での最大格差は、神奈川県と鳥取県の間の5・01倍だった。神奈川では69万票を集めた民主党候補が落選、鳥取では15万票台の自民党候補が当選した。
大阪や北海道、東京、埼玉、愛知では50万票を超えた人が敗れた。
最少の13万票台で勝てた高知や、20万票以下で当選した徳島、山梨などとの「一票の価値の不平等」は歴然だ。
全選挙区での総得票数と議席数を比べてみても、深刻さが浮かぶ。
民主党は2270万票で28議席を得た。一方、39議席を獲得した自民党は約1950万票にすぎなかった。
民主党は「軽い一票」の都市部での得票が多く、自民党は人口が少なくて「重い一票」の1人区で議席を積み上げた。票数と議席数の関係のゆがみは一票の格差の弊害そのものだ。
選挙区でも比例区でも民主党を下回る票しか集められなかった自民党は、果たして本当に勝者と言えるのか。そんな疑問すら抱かせる結果である。
参院は、いつまでこんな欠陥を放置するのか。2006年の議員定数「4増4減」は、小手先に終わった。各会派でつくる参院改革協議会は、昨年中に出すはずの結論を先送りし、次回の13年参院選に間に合わせたいという。
格差は一刻も早く是正すべきである。ただ、「都道府県別の選挙区」を採るかぎり、人口の差が大きすぎて、十分な「平等」の実現が困難なことはこれまでの経験上はっきりしている。数字いじりだけでは解決にならない。
折しも、衆院でも小選挙区での格差が2倍を超えた昨年の総選挙に対し、各地の高裁で「違憲状態」「違憲」の判決が相次いでいる。
衆参両院の「ねじれ」が再現され、国会がまたぞろ機能不全に陥る懸念も強まっている。
国会が直面する問題の全体像を踏まえて総合的な解決を図るべきである。
衆院のあり方との関係で、参院の選挙制度を抜本的に見直す必要がある。併せて、衆参両院の役割分担も一から再考しなければならない。
そうした大掛かりな作業を進めるなかで、投票価値の平等の問題にも迫っていく知恵が求められる。
現状は議員定数削減を唱える声ばかり大きい。「身を削る」姿勢はともかく、総合的な観点を忘れていないか。
国会での格差解消に期待するのは「百年河清を待つに等しい」。最高裁判事の一人がこんな意見を表明してから、すでに6年が過ぎた。
政府が有識者による選挙制度審議会を設け、第三者の視点で具体策を急ぎ練り上げるしかあるまい。次回の参院選はあっという間にやってくる。 」
URL http://www.asahi.com/paper/editorial20100715.html#Edit2
「制度の欠陥が、ゆがんだ結果をまた生んだ。参院選が今回改めて警告している。「一票の格差」が大きすぎる。
今回の選挙区での最大格差は、神奈川県と鳥取県の間の5・01倍だった。神奈川では69万票を集めた民主党候補が落選、鳥取では15万票台の自民党候補が当選した。
大阪や北海道、東京、埼玉、愛知では50万票を超えた人が敗れた。
最少の13万票台で勝てた高知や、20万票以下で当選した徳島、山梨などとの「一票の価値の不平等」は歴然だ。
全選挙区での総得票数と議席数を比べてみても、深刻さが浮かぶ。
民主党は2270万票で28議席を得た。一方、39議席を獲得した自民党は約1950万票にすぎなかった。
民主党は「軽い一票」の都市部での得票が多く、自民党は人口が少なくて「重い一票」の1人区で議席を積み上げた。票数と議席数の関係のゆがみは一票の格差の弊害そのものだ。
選挙区でも比例区でも民主党を下回る票しか集められなかった自民党は、果たして本当に勝者と言えるのか。そんな疑問すら抱かせる結果である。
参院は、いつまでこんな欠陥を放置するのか。2006年の議員定数「4増4減」は、小手先に終わった。各会派でつくる参院改革協議会は、昨年中に出すはずの結論を先送りし、次回の13年参院選に間に合わせたいという。
格差は一刻も早く是正すべきである。ただ、「都道府県別の選挙区」を採るかぎり、人口の差が大きすぎて、十分な「平等」の実現が困難なことはこれまでの経験上はっきりしている。数字いじりだけでは解決にならない。
折しも、衆院でも小選挙区での格差が2倍を超えた昨年の総選挙に対し、各地の高裁で「違憲状態」「違憲」の判決が相次いでいる。
衆参両院の「ねじれ」が再現され、国会がまたぞろ機能不全に陥る懸念も強まっている。
国会が直面する問題の全体像を踏まえて総合的な解決を図るべきである。
衆院のあり方との関係で、参院の選挙制度を抜本的に見直す必要がある。併せて、衆参両院の役割分担も一から再考しなければならない。
そうした大掛かりな作業を進めるなかで、投票価値の平等の問題にも迫っていく知恵が求められる。
現状は議員定数削減を唱える声ばかり大きい。「身を削る」姿勢はともかく、総合的な観点を忘れていないか。
国会での格差解消に期待するのは「百年河清を待つに等しい」。最高裁判事の一人がこんな意見を表明してから、すでに6年が過ぎた。
政府が有識者による選挙制度審議会を設け、第三者の視点で具体策を急ぎ練り上げるしかあるまい。次回の参院選はあっという間にやってくる。 」