がん(骨肉腫)闘病記

抗がん剤治療、放射線治療、人工関節置換手術、MRSA感染、身体障害者となっての生活の記録を残します。

がん患者も「働きたい」

2010年05月29日 | Weblog
2010年05月28日 23時38分22秒掲載

URL http://job.yomiuri.co.jp/news/special/sp_10052701.htm



「高まる生存率 できる範囲で

 がんの治療を受けながら仕事を続けたい――と訴える患者の声が高まっている。「働きたい」と望む声の背景に、何があるのか。(本田麻由美、写真も)



「がん患者であっても、私のできる範囲の仕事を続けたかったんですが……」

 こう振り返るのは、今年3月末に6年間勤めた職場を退職した盛岡市の渡辺淳子さん(47)だ。

 自治体で非常勤の子育て支援員として働いていたが、3年半前に子宮体がんと卵巣がんが同時に見つかった。手術後も抗がん剤による治療を受けながら、同僚の協力を得て仕事を続けてきた。

 ところが、昨年初めにがんが再発。秋には左足が不自由になって治療のための再入院を強いられた。2人の子どもとの生活を支えるため、退院後すぐに職場に戻ったものの、「この仕事はできる?」などと聞かれるうち、契約更新を言い出せない状況に追い込まれた、という。

 渡辺さんは「子どものため、治療費のため、ちゃんと働きたい。子どもたちに、前向きに生きる母親の姿を見せておきたいんです」と訴えた。



■治療費のため



がん治療を受けながらも働き続けたいと望む人は多い。患者の就労支援に取り組む市民グループ「CSRプロジェクト」(桜井なおみ代表)が2008年に行った調査(回答403人)では、がんと診断された時点で4人に3人が「今の仕事を続けたい」と回答している。調査時に仕事に就いていなかった人でも、85%が「仕事をしたい」と希望していた。

 現実はどうか。仕事の継続を望んだ人のうち3割は転職か、解雇・依願退職に。体力低下や定期的な通院の必要性から、がんが大きな障害になっている実態がうかがえた。

 なぜ働きたいと切望するのか。08年のがん統計によると、がん経験者の44%が65歳未満で、4人に1人は20~50歳の働き盛り。医療の進歩に伴って5年生存率が約50%に向上するなど、がんは2人に1人が治る病へと変化している。

 ただ、効果が高いとはいえ、高価な新薬や治療法の登場で患者の金銭負担は増している。働かなければ治療継続も難しい。

 厚生労働省の研究班(班長=濃沼(こいぬま)信夫・東北大教授)による全国調査では、治療中のがん患者6604人の年間自己負担額は平均100・7万円。抗がん剤治療をしている人は約133・1万円で、経済的な理由が治療に影響した人は6%、うち4割が治療を変更するか、中止するかに至っている。



■生きる証しに



 仕事を望むのは経済的な理由ばかりではない。乳がん経験者でもある桜井さんは「人生の限りが訪れるまでの時間をより良く生きたい、社会や人の役に立ちたいとの思いが高まってもいるのでしょう」と、がん経験者の心情を代弁する。「まして働き盛りなら、仕事は自分が生きてきた証し。社会とつながりを持ち、希望をもって生きていくために必要なものなのです」

 国民の2人に1人ががんを経験する時代。治療や検査で定期的な通院が必要な人も、がんとつきあいながら働けるような仕組みが求められる。桜井さんは「職場や社会の理解とともに、通院時間を有給認定する制度づくりや、がん経験者の雇用促進条例の制定など、行政による後押しも必要だ」と指摘している。
 
 ◆CSRプロジェクト編「がんと一緒に働こう!」(合同出版、1300円、税別)では、がんと付き合いながら働く際に役立つ制度や、治療の副作用などへの対策など、がん経験者が知っておきたい情報をまとめている。

 ◆患者会が主催している就労相談会「働くがん患者のためのピアカウンセリングじょぶ」(http://www.cancernet.jp/ganst_job.html )では、社会保険労務士や産業カウンセラーも対応している。

(2010年5月27日 読売新聞)」

医療自己負担、上限4万円に軽減…来年度にも

2010年05月10日 | Weblog
2010年05月08日 21時05分42秒掲載

URL http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100508-OYT1T00582.htm?from=main1



「政府は8日、医療費の窓口負担が一定額を超えた場合に払い戻す高額療養費制度について、70歳未満の年間所得約300万円以下世帯(住民税非課税世帯は除く)の負担上限額を現行の月額約8万円から月額約4万円に引き下げる方向で検討に入った。

 年内に厚生労働相の諮問機関「社会保障審議会」で具体案をとりまとめ、2011年度にも実施したい考えだ。

 新制度の適用を受ける対象者は、3000万人程度と想定している。

 現行制度では、70歳未満の高額療養費の自己負担の月額上限額は、所得に応じて、「住民税非課税世帯」は3万5400円、「一般所得世帯」(年間所得600万円未満)は約8万円、「高額所得世帯」(年間所得600万円以上)は約15万円となっている。

 高額療養費の対象となるのは、がんや神経性難病などの患者が多く、過去12か月以内で3回以上、高額療養費の支給を受けた場合は4回目から半額程度に軽減する特例が設けられている。

 しかし、最近は景気低迷で医療費負担に苦しむ患者も増えていることや、効き目が大きい高価な抗がん剤が普及してきたことから、一般所得世帯のうち、約3分の1を占めると見られる所得世帯の負担軽減が必要だと判断した。

 厚生労働省によると、高額療養費は、医療費ベースで年1・6兆円(2007年度)。同省の試算では、年間所得約300万円以下の世帯の上限額を半額に引き下げることで、医療費ベースで4000億~5000億円程度、国庫ベースで1000億円以上の財源が必要となるという。実現に向けては財源の確保などの課題がある。

 ◆高額療養費制度=1か月の医療費が自己負担の上限額を超えた場合、超過分が払い戻される制度。現行では自己負担の上限額は所得水準によって、70歳未満で3段階、70歳以上で4段階に区分されている。例えば、60歳の患者が腹痛により7日間救急病院に入院すれば、医療費は約42万円、3割負担で約13万円かかるところ、自己負担は約8万円にとどまることになる。(2010年5月8日14時40分 読売新聞)」


【ゆうゆうLife】高額医療をどうする?(下)収入減でも一般所得者

2010年05月10日 | Weblog
2010年05月07日 22時32分54秒掲載

URL http://sankei.jp.msn.com/life/body/100430/bdy1004300724000-n1.htm  



「暮らせなくなるがん治療



 

「お金がないから治療できない」を防ぐために作られた「高額療養費制度」。だが、がん患者から「使いにくい」の声が上がる。理由の一つが、現役世代は収入がかなり低くても、月に8万円超の医療費を払わないと適用にならないこと。効き目も高いが高額な薬の使用が主流になる中、「医療費を払ったら暮らせない」の声が上がっている。(佐藤好美)

                   ◇

 会社員の桜井なおみさん(43)が乳がんと分かったのは約6年前。手術で右乳房を全摘。その後は4週に一度、入院で抗がん剤治療を受け、その後、放射線治療も受けた。

 いずれも保険適用の標準治療。しかし、桜井さんはお金がかかることに驚いた。手術では2週間入院し、窓口負担は約26万円(食費込み)。化学療法は前後の吐き気止めなども含め、1回の入院で約7万5千円。放射線治療にはトータルで約15万円かかった。

 このほか、後遺症のリンパ浮腫を抑える弾性ストッキングやエアマッサージャーの出費。5年間にわたって再発防止の薬を飲む。入院に必要な洗面具やパジャマなど、保険適用でない諸々の費用もある。桜井さんはがん治療のため、定期預金を解約。この6年間に約350万円を使った。

 「手術代を払ったときは『手術って安いんだ』とさえ思いました。高かったのは抗がん剤。家賃と同じだけかかる感じでした」と話す。



桜井さんは会社員だから、窓口負担は3割。高額療養費制度では「一般所得者」にあたる。70歳未満だから、払い戻しの目安になるのは自己負担がおおむね月額8万円以上。それ以下だと払い戻しはない。手術を受けた月は適用になったが、月単位だとギリギリで達しないこともあり、制度に助けられた感じがしない。

 治療のため仕事を休んだから収入が大幅に減ったことも痛かった。収入減で手取りの半分近くが治療費になっても、高額療養費制度ではやっぱり「一般所得者」。桜井さんは言う。

 「夫がいたから治療を続けられました。単身だったら、引っ越すか、実家に帰るか、ものすごい切り詰めるかしないと、治療できなかった。がん治療は(治療費が)高く、つらく、長く続く。高額療養費の自己負担限度額を下げるとか、疾患ごとの対策が必要だと思います。がんは治る病気になってきている。患者が『お金がかかる』と治療をあきらめれば、国も税収を失う。元気になって復職して税金を払ってもらった方が得だと思うのですが」                



□低収入層できつい治療費 年収200万も600万も同じ負担


収入に応じた限度額の検討必要

 

 高額療養費が適用になる目安は、70歳未満の「一般所得者」で月に8万円超の支払い。厚生労働省は、この額について「ボーナスも含めた平均月収(約32万円)の4分の1(25%)くらいはご負担いただきたい」(保険局保険課)と説明する。1年以内に3回この額を超えると、4回目からは上限が4万4400円に減額になる。収入の25%の負担が延々と続くのは厳しいとの考えからだ。

 

 しかし、70歳未満の「一般所得者」は大ざっぱに言って、単身で年収120万~600万円くらい。年収200万も600万も同じ負担だ。

 NPO法人「東京地域チーム医療推進協議会(チームネット)」が計算した「手術+抗がん剤投与」の費用が表だ。治療方法が違ったり、再発だと額が異なるので、費用負担のベースラインと考えてほしい。

 それによると、乳がん治療の自己負担は「一般所得者」で初年度に約62万円。月別では高額療養費が適用になっても手術の月に9万円超を払い、8万円超の月が2カ月、その後1年近く4万4400円の負担が続く。

 患者が仮に年収200万円(月収約16万6千円)の「一般所得者」だとすると、高額療養費が適用になっても負担は手術の月に57%、8万円超の月は50%に迫り、減額になっても27%が続く計算だ。さらに、税や社会保険料の負担みある。「治療を受けたら暮らせない」わけだ。

 高額療養費制度がうまく機能していない背景には、ここ数年で効き目も費用も高い抗がん剤が続々と登場し、高額な治療が長く続くようになっていることがある。

 この現状に厚労省内からも懸念の声が出る。ある幹部は私見としたうえでこう指摘する。

 「景気低迷で年収200万とか300万という人が増えており、限度額がきつい人も多いはず。『一般所得者』を細分化するか、個々の収入に応じた25%の限度額を設定するか、見直しが必要なのではないか」」


【ゆうゆうLife】高額医療をどうする?(上)

2010年05月09日 | Weblog
2010年05月07日 22時28分09秒掲載

URL http://sankei.jp.msn.com/life/body/100429/bdy1004290911001-n1.htm



「限度額以上は還付「高額療養費」



難解な制度…もっと使いやすく




千葉県に住む会社員、小林智江さん(44)の伯父は4年前、膵臓(すいぞう)がんと分かった。見つかったときには手遅れで、最初のがん拠点病院で症状緩和の手術を受けて退院。転院先では感染症の治療、緩和ケアなどを受けたが、闘病の末、76歳で亡くなった。

 伯父は妻を亡くし、中国地方で単身独居。家はあったが、無年金なので生活費は兄弟姉妹が支えていた。面倒を見たのは、近くに住む伯母(83)。子供のいなかった伯父にかわいがられた小林さんは医療関係の仕事に就いた経験があり、電話でたびたび親族の相談に乗った。

 伯父がまだ治療中だったある日、小林さんが治療費について聞くと、伯母は「毎月、兄弟姉妹で分け合って払っている」という。

 聞いてみると、払っていたのは高額療養費の自己負担限度額。ところが、適用されていたのは低所得者を対象にした額ではなく、一般所得者の額だった。小林さんは「おじさんは年金がなく、住民税を払っていないから、役所で手続きすればもっと安くなるはずだよ」とアドバイスした。

 しかし、高齢の伯母には事態が把握できない。市役所のどこに行って、何を求めればよいかも分からなかったようで、結局、小林さんが休みを取って中国地方まで出向き、伯母の代わりに市役所で手続きをした。

 払い過ぎた分は後日戻ってきたが、小林さんは「高額療養費の申請を病気の人が自分でするのは難しい。単身独居の高齢者も増えているし、看護する側も高齢というケースも多い。制度も複雑で、年寄りが理解するのは難しい。制度の恩恵を受けていない人は多いと思います」と話している。



入院は事前申請を/外来は払い戻しのみ



 高額療養費制度はもともと、窓口負担をいったん払い、限度額を超えた分が後から払い戻される仕組み。だが、「多額の現金を用意しないと入院できない」などの声があり、今は入院の場合、健康保険の加入先(保険者)に事前申請すれば、退院時に限度額を払うだけで済む。

 小林さんの伯父さんのような70歳以上の人は、事前申請しなくても入院先で限度額が自動適用される。ところが、自動適用されるのは「一般」の限度額4万4400円まで。「低所得」の人が「2万4600円」や「1万5000円」の適用を受けるには、やはり申請が必要。年金受給者で住民税非課税の人は7割超に上るのに、本当にこうした人に適切な限度額が適用されているのか定かでない。

 外来には事前申請の仕組みはない。いったんは窓口で治療費を払う。医療機関が複数になる場合は合算もできるが、一定条件がある。

 問題になるのが、抗がん剤の治療費。外来で投与されるようになっており、窓口負担が高額だ。東北大学大学院の濃沼信夫教授は「外来だと、患者は費用が高額でも窓口でいったん払わなければならない。各病院とも入院患者には入院手続きや費用などを説明する機会があり、高額療養費の説明もできるが、外来患者への対応は手薄になる。外来でも窓口で限度額が適用になるよう、早急に制度を改める必要がある」という。

 あまりに仕組みが複雑なので「適用漏れがあるのでは」との声が上がるが、未適用の人数も額もはっきりしない。

 未適用者への対応も、健康保険の加入先によってまちまちだ。大企業の会社員が加入する健康保険組合では「自動払い」が多い。各組合で患者の診療報酬明細書を点検し、超過額を給与の口座に払い戻す。これなら、患者がノータッチでも大丈夫だ。だが、実施は保険者100%ではない。ある健保組合は一昨年、自動払いを導入した。「自動払いにしたら還付額がほぼ倍増した」と漏らす。それまでは半数が適用漏れだったわけだ。

 75歳以上を対象にした「後期高齢者医療制度」では、全都道府県で未適用者を割り出し、申請を求める。中小企業に勤める会社員や家族が加入する「協会けんぽ(全国健康保険協会)」も同じだ。

 しかし、国民健康保険を運営する市区町村には未適用者に通知しないところも。厚生労働省も通知を義務付けてはいない。

 通知をしても、それで解決ではない。市民にごく初期から通知してきた関東のある政令市は「2割程度の手続き漏れは出てしまう」という。意味が分からず、通知が捨て置かれているケースもあるようだ。

 濃沼教授は「窓口負担が1割から3割に増えるにつれ、高額療養費の対象者も増えた。がん患者では半数がこの制度を利用している。だが、制度は手直しを重ねて複雑になり、複雑になるほど使いにくくなり、請求しずらくなっている。窓口負担の割合も含めて、高額療養費制度を中長期で見直す時期に来ている」と話している。






 病院や診療所での窓口負担が一定限度を超えると、超過分が健康保険から払い戻される「高額療養費制度」。費用が高くても治療を断念せずに済むよう作られた制度だが、申請が原則だから知らずに高い窓口負担を払っているケースもあるようだ。未適用の実態は不明で、患者からは「もっと使いやすくしてほしい」との声が上がっている。(佐藤好美) 2010年4月29日付 産経新聞東京朝刊」