がん(骨肉腫)闘病記

抗がん剤治療、放射線治療、人工関節置換手術、MRSA感染、身体障害者となっての生活の記録を残します。

田中耕太郎

2007年09月05日 | Weblog
2007年09月04日記載

田中耕太郎という人物を皆さんはご存知であろうか。現在活躍している若手の役者の話ではない。

内閣法制局長官・商工大臣・文部大臣、貴族院議員・参議院議員、最高裁判所長官を務め、天皇以外で唯一三権を総攬したとも言われる人物である。専門は商法学で、師匠は松本烝治、弟子は鈴木竹雄である。

弟子の鈴木竹雄先生には「幾山河」という日本における商法学の歴史を概観したエッセイー風の著作があるが、その中で鈴木先生は「田中耕太郎も知らない人間が新聞記者をやっている。」とお嘆きになっている。全く同感である。田中耕太郎を知らないということは、田中耕太郎が長官を務めていた期間の最高裁の判決・決定等を知らない可能性が高い。田中耕太郎は1950年~1960年まで、実に10年以上に渡り最高裁長官を務めているので、戦後日本社会の在り方を方向付ける多くの判決を下している。そのことを知らずに事件記事を書いたり、社会問題を論じても、それは薄っぺらなものになる。

果たして我が国の新聞記者で田中耕太郎を知っているのはどのくらいいるであろうか。知らない記者の方が多いのではないだろうか。そんなんだからろくな記事が書けないのだ。

そして、田中耕太郎を知らないのであれば、その師匠である松本烝治についても知らないのだろう。



松本烝治は敗戦後、国務大臣として新憲法の草案を作成することに尽力した人物である。(松本私案と呼ばれるものである。)その松本私案がGHQにより否定され、GHQで起草されたものをベースにして成立したのが現在の日本国憲法である。その過程は実に興味深いものがある。松本烝治は、なんとか國體(こくたい)を護持しようと私案を作成する。しかし、連合国軍側は國體護持は決して認めようとしなかった。國體と言ってもピンと来ない人が多いかもしれないが、敗戦時には國體が護持されるか否かが最も重要な問題であった。


上記で触れたのは歴史のほんの一断面に過ぎないが、それすらも知らず新聞記者をやっている人間が多いのではないだろうか。だから、憲法上の原則、刑事訴訟法上の鉄則に反するような有罪推定のような記事を書くのだろう。公器たる新聞の事件記事を書くのなら、憲法や刑事訴訟法くらい勉強しておけ。その裏にあった人間の葛藤を知っておけ。誰がどのような思いで憲法に刑事手続きに関する規定を置いたか知っておけ。


頂いたコメントについて17

2007年09月05日 | Weblog
2007年09月04日記載

頂いたコメントについて言及する。頂いたコメントは以下のとおり。

「どうなるんでしょう

興味深く読みました。直接質問されたということに感心しました。アメリカなどはネットでニュースを読む人がかなり多いということですが、日本でも似た傾向にあるでしょうから一見些細なことに思えますが、根深い問題かも知れません。
縮刷版には載っているんでしょうけれど。」

コメントをくださった方が仰るように、読売新聞の担当者は「縮刷版には載っている。」「有料のデータベースの方にはデータがある。」と言っていた。

しかし、私が問題にしているのはそんなことではない。私の家では読売新聞を取っているので、ちょっと前の新聞を探せば緒方重威被告人の記事は簡単に見つかる。私が問題にしたのは、意図してデータが削除されたのか否かである。この点については「そんなことはない。」と読売新聞の担当者は言っていた。(まあ当然そう言うだろう。)

私はYOMIURI ONLINEを良く読んでいる。障害者に関する情報や、がんに関する情報が充実しているからである。YOMIURI ONLINEの「医療と介護」中には、本田麻由美さんという実在の記者の方が、自ら闘病中の乳がんに関連する記事を掲載している。(紙媒体でも見られる。)

今この記事を書きながら別ウインドウでYOMIURI ONLINEを見ているが、2005年6月20日に本田麻由美さんが書いた記事が見られるし、2006年5月10日の障害者に関する記事も見られる。

しかし、緒方重威被告人の記事は見られないのである。ここがなんとも理解しがたいのである。1年前、2年前の記事は見られるのに、なぜ2ヶ月前の記事が見られないのだろう。


私が緒方重威被告人の記事を見て違和感を覚えた端緒は、逮捕・拘留されている被疑者について、まるで見てきたかのように記事を書いていたことである。その記事が、取り調べた検事から得た情報であれば、当該検事は国家公務員法違反に当たり、記事を掲載した記者はその幇助になる可能性がある。のみならず、検事という行政機関の一員の持って行きたい方向に世論を誘導しかねない危険がある。

マスコミは権力機関の腰巾着ではない。国民の権利・自由を守るために権力機関を監視するという重要な役割を担っている。だからこそ、報道の自由や取材の自由が与えられ、手厚い保護を受けているのである。

日本のマスコミには、行政機関との密接すぎる関係を断つことを強く要望したい。その手始めは「記者クラブ制度」を廃止することである。欧米諸国には存在しないこの制度をいつまで温存させ、ぬるま湯につかる気なのか。

読売新聞社からの回答

2007年09月05日 | Weblog
2007年09月04日記載

「お尋ねの件ですが、YOL(※YOMIURI ONLINE のこと。)は速報性重視のニュースサイトです。「よみうり寸評」も約1週間で更新しており、一般のニュースについても同じ扱いをしております。」とのメールを頂いた。

その後担当の方と会話をしたが、速報ニュース・社説・寸評・コラムについては概ね1週間で更新されてしまうということであった。

しかし、時系列上、より遠い過去のニュース記事は見られるが、当該ニュース記事よりも現在に近いニュース記事が見られないところに、私はまだ疑問を持っている。ただ、これ以上の追及は不可能(報道機関の編集権をコントロールする権限は私にはないということ)なので、緒方重威被告人の裁判の行方を見守るしかない。



小泉政権以来、いわゆる国策捜査の類が増えているように感じているが、今回の事件で緒方被告人が無罪となった場合、今回の事件は国策捜査であった疑いが濃くなる。

騙されたはずの朝鮮総連側が騙されたという認識がないと言っていて、緒方被告人が騙していないと主張した場合、詐欺について合理的疑いを入れない程度まで検察が立証することが可能なのであろうか。

蓋し見物である。