気ままに

大船での気ままな生活日誌

佐藤愛子の何がめでたい90歳

2024-03-06 22:07:51 | Weblog

こんばんわ。

都内の美術館へもと外に出たが、あまりの寒さに、急遽、変更、藤沢駅と連結している図書館に籠った。そこで、手に取ったのが、佐藤愛子の”90歳、何がめでたい”。愛子さんが90歳になって、執筆活動を止めていたとき、女性セブンから連載を頼まれ書き始めたのをまとめたものだ。

90歳といえば卒寿としておめでたいこととされるが、めでたいことなど何もない。たとえば、地下鉄の駅まで、たたたっと15分で歩いていたのに、今は半分くらい歩くと、脚がどよーんとして重くなり、ぴょんぴょん兎さんからのろのろ亀さんに。足が上がっていないから、よくつまずく、つまずいても立て直しがきかずよろよろとつんのめる。うしろに来ていた自転車のおばさんに舌打ちを浴びせられる情けなさ。

と、こんな話が延々とつづくのかと思ったら、次のタイトルが”来るか?日本総アホ時代”。愛子の進軍ラッパが高々と鳴り響く(笑)。白髪混じりのタクシーの運ちゃんとのスマホ談義。そんなものが行き渡ると、人間はみなばかになる。調べたり考えたり記憶したり、努力をしなくてもすぐ答えが出てくるんだもの。おわりに、もう文明の進歩はこのへんでいい。進歩が必要だとしたら、それは人間の精神力であるとぴしゃり。

”子どものキモチ”では、今治で起きた”事件”を採りあげる。小学校で6年生の蹴ったサッカーボールが塀を越え、老人の乗るオートバイに当たり、転倒し、老人は足を骨折して入院。それから1年半後に肺炎で亡くなった。すると老人の遺族は少年の両親に5千万円の賠償を求めて提訴した。裁判所は、少年の家族に有罪判決を下した。”何ともおかしな話である”と、愛子砲が炸裂する。少年は道端や公園でなく校庭でサッカーの練習をしていた。何が”監督不行届き”か。ボールを蹴るときに塀の外に出ないようにやさしく蹴るように教えなければならないのか。しかも、老人が亡くなったのは1年半もたってから。骨折が肺炎の原因になったなど聞いたこともない。かっての日本人は”不幸”に対して謙虚だった。悪意のない事故も悪意のある事故もごちゃまぜにして元をとろうとするガリガリ亡者はいなかった。今はそのガリガリ亡者の味方を司法がしている。

犬の鳴き声がうるさい、子供の騒ぐ声がうるさくて昼寝もできないと文句をいう輩にも愛子の強烈パンチが炸裂する。あやしい奴が来たら吠えるのが犬の職分。子供は騒ぐのが商売。吠える犬は吠えないように訓練したり、近所に保育園が新設されると反対運動を起こすばかども、と。

ほかにもいろいろあるが、この本で初めて知ったこと。愛子さんは、1969年7月20日に、”戦いすんで日が暮れて”で直木賞をとられたが、そのときの芥川賞が庄司薫さんの”赤頭巾ちゃん気をつけて”だったそうだ。そして、この日はみんなが熱狂した人類が初めて月に立った日でもあった。

お二人は対称的な人生を歩む。庄司薫さんは、”赤”頭巾ちゃんのあと黒・白・青(四神)の入った題名の四部作を書いて、早々と執筆活動を引かれ、現在86歳で、お元気である。一方、佐藤愛子さんは昨年11月、100歳を迎えられている。この間、仕事を続けられ、ミリオンセラーとなったこの「九十歳。何がめでたい」は、94歳のときの作。きっと、「百歳。何がめでたい」も104歳頃書かれるのではないだろうか。

ぼくはせめて80代の大台まで届き、そして、本ブログで、”傘寿、何がめでたい”と大見得をきってみたいものだ。

佐藤愛子 | 著者プロフィール | 新潮社の画像

では、おやすみなさい。

いい夢を。

大谷、古巣エンゼルスとオープン戦。旧友トラウトと抱き合う。

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6 コメント

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愛でたさや (アナザン・スター)
2024-03-06 23:08:57
この本、笑い転げました。
寸での処で、本にお茶を飲ませるところ。
図書館で借りてなのを、弁償しなければなりません。
90歳、目出度さはありませんが、物事への捉え方でしょうか?

この本の読後、涙を拭きながら・面白くて泣けました、面白く暮らせる方法も浮かびました。
他人の為でなく、自分が愉しく生きればいいんだ。
てやんでぇ・文句あっか!
啖呵を切りたい。

一日を詰まらないだの、不幸だと言う前に、何をどうしたら楽しく過せるか?
一日24時間です。
泣けば前が見えません。
笑うと皺が増えます。
ですけども、心が、身体が悦ぶことをして逝きたいですわ。

謗ったり、妬んだりではなく、小さなことでも相手のいい処を見つけ、一緒に気持ちを通じあいたい。
文章の上手下手は別です。
詠んだ方が、どう受け取っても心を偽らないことと気づけましたの。

コメントも、同じことを決まりきって書くのではなく、何か感じた素直な想いを綴りたいとも。

ここにお邪魔いたし、学べることに感謝です。
おやすみなさいませ。
返信する
アナザン・スターさま (marbo)
2024-03-07 09:25:51
愛子さんは、夫がつくった大借金地獄から抜け出した苦労をしているので、いろいろ見えるのでしょうね。小気味よい文章がいいですね。

>一日を詰まらないだの、不幸だと言う前に、何をどうしたら楽しく過せるか?一日24時間です。泣けば前が見えません。笑うと皺が増えます。ですけども、心が、身体が悦ぶことをして逝きたいですわ。

同感です。ありがとうございました。
返信する
Unknown (雪椿)
2024-03-07 11:14:19
佐藤愛子さんの本を読むようになったのは高校生の頃からでした
遠藤周作さんのエッセイによく佐藤愛子さんの話が出ていて。同じ関西人で友達だったようで、遠藤周作さんから佐藤愛子さんの本も読むようになりました
佐藤愛子さんは可愛い女学生で憧れの人だったそうです

佐藤さんの自叙伝がドラマ化になって見てました
最初の結婚で離婚して子供を置いて来た事や
直木賞を受賞した時のお金を2度目に離婚したご主人の借金の返済に使ったとか
あの頃は、ただ話が面白い物を読んでましたが。

後になって
遠藤周作さんの沈黙などの小説を読みましたが
同じ人が書いてるいるのかと思ったものです

芥川賞を受賞した庄司薫さんが
好きな友達がいて、その友達の勧めで庄司薫さんの小説を読みました 
高校生の頃の私達にはピッタリと当てはまる小説家でした
後に庄司薫さんがピアニストの中村紘子さんと結婚して友達はガッカリしてましたが

それから
遠藤周作さんの本は読む事がなくなりましたが
佐藤愛子さんの本は今でも読むと面白いです
その内に100歳になった本も書かれるでしょうね

私の亡くなった両親も健在なら100歳は越してましたが。
同じくらいの年齢の佐藤愛子さんには
これからも頑張って、アレコレとけしからん!と思う事を書き連ねて欲しいです
返信する
Unknown (小父さん)
2024-03-07 11:37:48
おはようございます。

>あまりの寒さに、急遽、変更、藤沢駅と連結している図書館に籠った。

はっはっは、しかしmarboさんは本当にお元気ですね。
私なんか寒い時、暑い時はウォーキング以外は、ほとんど家でエヤコンのお守りをしています(汗)

>・・・佐藤愛子の”90歳、何がめでたい”

タイトルがいいですね~。

>たたたっと15分で歩いていたのに、今は半分くらい歩くと、脚がどよーんとして重くなり・・・

私は長兄や家内に近隣の高齢者などなどずーっと観察してきましたので、「明日の自分の姿だろう」といつも考えています。

>”来るか?日本総アホ時代”

大宅壮一のテレビで「一億総白痴化」という言葉を思い出しますね(笑)

>そんなものが行き渡ると、人間はみなばかになる。調べたり考えたり記憶したり、努力をしなくてもすぐ答えが出てくるんだもの。

うわっ、私の日常そのものだ~!(汗)

>進歩が必要だとしたら、それは人間の精神力であるとぴしゃり。

いい言葉ですね~。

>老人の遺族は少年の両親に5千万円の賠償を求めて提訴・・・裁判所は、少年の家族に有罪判決を下した。”何ともおかしな話である”と、・・・何が”監督不行届き”か。

そんなことがあったんですか。

>かっての日本人は”不幸”に対して謙虚だった。・・・今はそのガリガリ亡者の味方を司法がしている。

そんな風潮は感じますね。
ハリウッド映画やテレビをたくさん観ていると、西部劇時代くらいからか弁護士や裁判のシーンが出てきますね。

米国の歴史を否定するつもりはありませんが、日本も弁護士だらけになってしまって、法律を盾に相手を打ち負かした方が「正」みたいな上記の判例のような印象を持っています。

>あやしい奴が来たら吠えるのが犬の職分。子供は騒ぐのが商売。・・・保育園が新設されると反対運動を起こすばかども、と。

わっはっは、これも米国から来た文化なのか?権利、権利という言葉も頂点に達している気がします。

>・・・早々と執筆活動を引かれ、現在86歳で・・・「九十歳。何がめでたい」は、94歳のときの作。

素敵な人生の指針ですね。

>そして、本ブログで、”傘寿、何がめでたい”と大見得をきってみたいものだ。

いやー、いいことを聞きました。
私も3年3ヶ月強のひとつの目標が出来ました(笑)

写真の佐藤愛子さん、とてもチャーミングですね。

>大谷、古巣エンゼルスとオープン戦。旧友トラウトと抱き合う。

トラウトのコメントも先ほど聞きました。
大谷翔平選手って実に人間関係をとても大切にする男ですね。

有難うございました。
返信する
雪椿さま (marbo)
2024-03-07 18:00:01
高校生の頃から佐藤愛子ファンとは。100歳を越えて、まだお元気で、長い間、彼女の作品を読めて幸せですね。また、100歳、何がめでたいを読んでみたいですね。

愛子さんは遠藤周作とは中学時代からの友人らしいですね。北杜夫、川上宗薫とも親しく、川上宗薫の病気見舞いに行った日に直木賞受賞の連絡がきたと、この本に書かれていました。みんないなくなり、さびしいでしょうね。

いろいろ感想コメント、ありがとうございました。
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小父さんさま (marbo)
2024-03-07 18:09:54
>佐藤愛子の”90歳、何がめでたい”/タイトルがいいですね~。

ほんとですね。きっと、ご自分で決めたのでは。

>”来るか?日本総アホ時代” 大宅壮一のテレビで「一億総白痴化」という言葉を思い出しますね(笑)

白痴は禁止用語になったのでアホにしたのでは(笑)。

>米国の歴史を否定するつもりはありませんが、日本も弁護士だらけになってしまって、法律を盾に相手を打ち負かした方が「正」みたいな上記の判例のような印象を持っています。

現代は悪徳弁護士が幅をきかせています(笑)。

いろいろ楽しい感想コメントありがとうございます。

トラウト、今日は満塁ホームランを打ったようですね。由伸はどうしたことか。でも、まだオープン戦ですからね。大谷は順調に仕上げてますね。
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