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気ままに

大船での気ままな生活日誌

大岡信展 言葉を生きる 言葉を生かす 

2025-04-13 21:26:42 | Weblog

こんばんわ。

神奈川近代文学館前の満開の芸亭(うんてい)の桜をみた後、同館で開催中の大岡信展/言葉を生きる、言葉を生かすを覗いてきた。大岡信というと朝日新聞に長く連載されていた”折々のうた”で知っている程度。そうそう、東海道線三島駅前の”大岡信ことば館”にも入ったことがあったっけ。ぼくは三島の町が好きで、もう何度も訪ねている。三島は富士山の伏流水が地上に噴きだす場所にあたり、いくつもの清い川が流れ、”水の都”と呼ばれている。大岡信は、この町に生まれ育っているのだ。ぼくが”大岡信ことば館”に入ったのは、ここで谷川俊太郎展が開催されていたから。2016年9月に三島大社の金木犀の花を見に行ったときだった。

大岡信と谷川俊太郎は同い年で、生涯の友だった。本展の中に”クローズアップ 詩友 谷川俊太郎”というコーナーがあって、まず、そこから紹介したい。谷川は高校生の頃から詩を書いていて、それが父親の谷川徹三や父の友人で詩人の三好達治に認められ、”二十億光年の孤独”という詩集にまとめた。この詩集を見た大岡が彼の詩才にショックを受けたという。谷川も大岡の才能を認め、生涯の朋友となったようだ。このコーナーには、”二十億光年の孤独”の初版本があった。文庫本ほどの大きさで、三好達治の推薦文の帯がつけてあった。谷川の大岡宛の手紙もいくつか展示されていた。なお、大岡は2017年に86歳で亡くなったが、谷川が追悼詩を書いている。その一節だけを。本当は人の言葉で君を送りたくない/砂浜に寄せては返す波音で/風にそよぐ木々の羽音で/君を送りたい。

もう一つの"クローズアップ ”春のために”。ここでは妻、かね子とのことが。若き日の二人の写真セットと大岡の彼女との恋愛時代を詠った”春のための詩”の全文が展示されている。ぼくは初めて見る詩だが、大岡の代表作の一つだそうだ。一節だけをここに。

春のための詩 (大岡信)

砂浜にまどろむ春を掘りおこし
おまえはそれで髪を飾る おまえは笑う
波紋のように空に散る笑いの泡立ち
海は静かに草の陽を温めている (あと4節つづく)

大岡は、かね子(のちに筆名深瀬サキ、劇作家)と結婚するが、詩を書いた頃はかね子との結婚を家族に反対されていて、自分も神経衰弱の薬を飲んで目ばかり光らせていたという。この(ロマンチックな)詩は苦しい現実に対しての”意識的挑戦と無視”であり、あらかじめ謳われた自賛の歌だったと述べている。

以上は本展の本筋からははずれるものであるが、ついでながら、もうひとつ、はずれたものを(笑)。ドクトルマンボウの北杜夫ともつきあいがあったようで、彼から”非芸術院会員”の大きな賞状が贈呈されている。賞金はマンボウ・マブゼ共和国の紙幣が何枚も(笑)。写真撮影が可能であれば、このコーナーだけでもお楽しみいただけるのだが、文学展は概ねけちんぼでここもご多聞にもれず、撮影禁止である。

大岡の代表作といえば、折々のうた。1979~2007に6762回にわたる長期連載で、1年ごとに岩波新書で合わせて19巻も刊行されたという。とりあげる題材は、短歌、俳句に限らず、漢詩、川柳、現代詩、歌謡と幅広く、それらから毎日一つとりあげ、解説を行っている。実に幅広い学識を有していることがわかる。

あと、どんなものが展示されていたかをメモ程度に。自身の著作や創作ノート、写真、書簡、墨書など。卒業論文「夏目漱石・修善寺吐血以後論」の実物も印象に残った。また、正岡子規に「貫之は下手な歌よみにて『古今集』はくだらぬ集に有之候。その貫之や『古今集』を崇拝するは誠に気の知れぬこと」と罵倒された紀貫之の復権を試みた大岡の著作とその解説も興味を引いた。

 
ぼくのメモ程度の紹介では片手落ちになるので、最後に本展の公式サイトより。
卓越した知性を内包し、詩歌を読み、書き、その魅力を余すところなく発信した大岡信(おおおか・まこと 1931-2017)。批評『現代詩試論』でデビューしたのち、詩集『春 少女に』などで愛や生きる歓びをうたい、ライフワーク「折々のうた」では詩歌を人びとにとって身近なものとしてきました。その織り成す言葉は、人びとを魅了し続けています。
 当館では2020年以降、大岡家をはじめとする方々から大岡の遺した書、原稿、創作ノート、書簡などを受贈し、「大岡信文庫」として保存しています。本展ではこれらの資料を中心に〈おおらかな感性の詩人・大岡信〉の生涯を追いながら、広く人びとにひらかれた、豊かな言葉の世界を展開します。
 
では、おやすみなさい。
 
いい夢を。
芸亭(うんてい)の桜
 
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掲載・撮影禁止 (アナザン・スター)
2025-04-13 22:10:14
文学館はケチで撮影禁止。
分かるような、そうでないような有り体さです。
全文を丁寧に読む程の者はいません。

其処まで禁止しなくてもね。
但し、盗作はあります。
そういうことで、撮影禁止でしょうか。

今年は、寒さが長引いたせいか、桜の時期も延長でしたね。
堪能させてもらえましたこと、感謝申します。

月も眺め、春の大曲線も愉しめ、有難い。
おやすみなさい。
返信する
アナザン・スターさま (marbo)
2025-04-13 22:40:04
そちらは満月が見えましたか。うらやましい。こちらは、夕方から雲が出てきて、すっかり雲隠れです。早朝は晴れそうなので、沈みゆく満月が見られればと思っています。
”けちんぼ”はただの冗談ですよ(笑)。でも、ぼくの地道な冗談発言のせいか(笑)、最近、撮影許可の展覧会がだいぶ増えてきました。
返信する
大岡信 (Rancho)
2025-04-13 23:50:11
大岡信氏の記事を詳しくありがとうございます。

しかし大きなテーマで企画されていますね^^
大岡信は手広いので、企画が大変でしたでしょうね。

私なぞは大岡信は『折々の歌』を読んだくらいで、後はほとんど知らないです。
道真と貫之が好きで、ブログのカテゴリーにも入れているので、お二方に関しておられることを講義か何かで うっすらと知っているだけです(笑)

ご紹介いただいた
    春のための詩
いいですね^^

谷川俊太郎氏のコーナーもあったのですね^^
こちらはずいぶんと親しみ深い(笑)
この方も良い詩を多く残されていますね!
子どもが幼い頃も多くの詩を読み聞かせていました^^

今日は雨の中、京都府立植物園に行きました。
雨に立ち向かって、花桃が鮮やかに咲いていました。
比叡山がうっすら見えていました^^

お邪魔しました。
返信する
P.S (Rancho)
2025-04-13 23:53:53
先日、お花のお写真を載せていただいた際に、大岡信の展示があると紹介されていたので、気になっていました^^

ご紹介いただき、心より感謝申し上げます。
ありがとうございます!
返信する
Ranchoさま (marbo)
2025-04-14 09:07:57
大岡信展、楽しんでいただいたようでうれしく思います。ぼくも”折々の歌”を知っている程度でしたが、展覧会で幅広い活動を知り、おどろきました。Ranchoさんのように古典にも西洋にも詳しく、折々の歌にも古今東西の”歌”を取り入れています。

谷川俊太郎の詩を子供さんに読み聞かせていたとのこと、いい教育になりましたね。子供たちの合唱曲にも取り入られていますね。

京都植物園のチューリップがきれいになりましたね。ありがとうございました。
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