ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその306-夜空はいつでも最高密度の青色だ

2018年02月26日 | 邦画
これが2017年キネ旬邦画ベスト1

キネマ旬報社が、毎年2月に発表する「キネ旬ベストテン」。アカデミー賞より古く、1924年から開始された。この歴史あるコンペティションは、映画を観る人にとっての「基準」となっている。
誰もが納得できる映画を観たい。
しかし、その指南が無いとなかなか映画を観る機会が無い。
私は、カンヌ国際映画祭を映画を観る一つの基準としている。
このブログをご覧の皆様も、映画を観る基準として、映画会社が展開するパブリシティ以外に、様々な映画賞等基準に観ておられる方も多いだろう。
今回紹介する映画は「夜空はいつでも最高密度の青色だ」2017年キネ旬ベストテンの第一位に輝いた作品である。
ストーリーを紹介しておこう。

しんじは若い日雇い労働者、美香は昼にナース、夜はガールズバーでコンパニオンとして働いている。
ある日しんじは、仕事仲間とガールズバーへ行く。そこは偶然にも美香の働いているところだった。
そこでしんじの仕事仲間の一人が、美香と知り合い、交際を始める。
しかし、ある日その仲間が突然死してしまう。
そして、しんじは、美香に徐々に惹かれだし、交際を始めるのだった。
お互いすれ違った心のままの交際することになるのだが........

正直、失望した。
前半から、香港のウォン・カウァイばりの流麗なカメラワークから始まったので、期待して観進めたが、若干良かったのはそこだけで、後は中身が無い。
製作者の主題、意図が全く感じられない。
原作は「詩集」と言う事だが、そもそも詩集を題材に映画を作るとは、凄いことだと思う。
ものの数行で完結してしまう、詩。それを一時間以上の映画としてまとめるのは至難の業だ。
事実この映画は、その点では失敗している。
もっと思い切った作りで、観客に挑戦するような創造物を作らなければ。
私は、原作の「詩集」を読んでいない。
映画を観る人によっては「この映画は原作を読んでおかないと」「原作を読めば映画の感想も変わる」と言う人もいるが、私はそう思わない。
映画は映画で、映画として成り立ち、観る人に「何かを」感じさせなければ、映画としての価値は無い。
よって私は、映画を観る前も映画を観た後も、原作を読んだりすることは無い。
この映画の監督は「川の底からこんにちは」「舟を編む」の石井裕也。
私は「川の底からこんにちは」(これもキネ旬ベストテンに入選している)を観た。しかし、その出来の悪さが、一種のトラウマになっているのか「舟を編む」も高評価していない。
今回の「夜空はいつでも最高密度の青色だ」は「川の底からこんにちは」と並ぶ程の作りの悪さである。
以前(二十年以上前)から、キネ旬ベストテンについては疑問を持っていた。
年によって当たり外れがあるのだ。
良い作品を選出してくれる年もあれば、今回のように「何故、この作品が」と疑問を呈する年もある。
映画を好きな人の指針となる「キネ旬ベストテン」もっとしっかりした感性で、作品を選んでいただきたい。
蛇足だが、キネ旬2017洋画部門のベスト1は、以前このブログでもご紹介した「わたしは、ダニエル・ブレイク」(ケン・ローチ監督)であった。
その出来の違いは「千羊の皮は一狐の腋に如かず」である。

2017年、日本製作、カラー108分、監督:石井裕也