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ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその226-サンドラの週末

2016年03月19日 | ヨーロッパ映画
復職を目指す、けなげな女性の姿

「ストレス社会」と言われて久しい。会社勤めの人々は、何かしらストレスを抱えている。
ストレスも行過ぎると「うつ病」などになり、人生の苦渋をいやと言うほど味わうことになる。
適度な「息抜き」が必用だが、なかなか忙しさに紛れてそうもいかない。
本日紹介する映画は「サンドラの週末」うつ病で休職を余儀なくされた女性が、復職に向かって行動を起こす物語である。
ストーリーを紹介しておこう。

サンドラはうつ病により、休職をしていた女性。
彼女はうつ病も回復し、会社への復職を希望する。
しかし、会社側は、社長の命令として「サンドラを復職させるなら、社員のボーナスをカットする」と言い、既に社員十六名のこの件についの投票を行なった。
結果は「ボーナス」を希望する者の圧倒的多数で、サンドラは復職できなくなる。
しかし、サンドラは、社長に直訴し、再度投票を行なうことにこぎつける。
時期は翌週の月曜日、無記名で十六人の社員の再投票を行なうことになった。
投票まで残された期間は三日、サンドラは十六人の社員宅を個別にまわり、自分への投票を懇願するのだが......

厳しい現実である、人一人救うか、自分のボーナスを守るか。
しかし、サンドラはなんとしてでも、復職したい。彼女は、精神安定剤を飲みながら、夫の励ましに支えられながら、淡々と社員宅を訪問する。
だが快くサンドラに投票すると言った者は少ない。
ある家庭では、親子で会社に勤めているため、サンドラの目前で喧嘩をはじめたり、またある家庭では、夫婦けんかが始まったりと、人間の欲望の中枢を彼女は目の当たりにする。
しかし、絶対不利の中、サンドラはなんとか過半数近くの自分への投票者を確保する。
そして、月曜日。再投票が始まる。
結果は八対八の同数。サンドラは過半数を得ることが出来なかった。
だが、サンドラは社長に呼ばれ、過半数近くを獲得した、サンドラの功績を認め、再就職を約束する。
しかし、それは現在契約雇用中の二人の社員が、契約切れになるのを待ってからの再就職と言うことだ。
サンドラは言う「私が復職する結果、二人の契約社員が失業する、そのような条件で復職はできない」と。
社長は「契約社員の契約時期を延長しないだけだから問題ない」と言う。
しかし、サンドラは自分に投票してくれた、契約社員が居ることを知っている。他人を犠牲にしてまで、自分の我を通すのを良しとしないのだ。
それを言い放った、サンドラの清清しい顔が印象的である。
ラスト、サンドラは何かをやり遂げた如く、満足げな表情で夫に電話をする。
「新しい就職先を決めなきゃね」と。
この映画は「ロゼッタ」等で知られる「ダルデンヌ兄弟」の作品である。
あまり話題にならなかった作品だが、実にしっかりできた映画である。
個人的には「ロゼッタ」に次ぐ傑作と、私は評価している。
是非、興味を持たれた方は観ることをお勧めする。

2014年ベルギー、フランス、イタリア合作、カラー、95分、2015年日本公開、監督:ジャンピエール・リュックダルデンヌ。

明日のためにその218-サウルの息子(今年のアカデミー外国語映画賞)

2016年03月01日 | ヨーロッパ映画
今年のアカデミー外国語映画賞。

「ホロコースト」
アユシュヴィッツが有名である、ドイツ軍によるユダヤ人大量虐殺のことである。
この件については、第二次世界大戦の最大の汚点であり、人類史上ゆるすべからざる行為である。
以前このブログに投稿した「夜と霧」が、ホロコーストについてはドキュメンタリーで伝えることに成功している。
戦争と言う狂気が生み出した、この人類最悪の惨事を忘れてはいけない。
本日紹介する映画は、このホロコーストを扱った「サウルの息子」である。
ストーリーを紹介しておこう。

サウルは、ユダヤ人強制収容所の「ゾンダーコマンド」
ゾンダーコマンドとは、数ヶ月の延命をすることにより、収容所の清掃等を行なう、作業員である。
サウルはある日、死にきれなかった少年を、医師が絶命させるところを目撃する。
彼はその少年を、自分の息子と認識し、ちゃんとした埋葬をすることを誓う。
まずは、ラビと呼ばれる「ユダヤ人聖教者」が収容所にいることを聞きつけ、彼を探そうとする。
サウルは、収容所内を奔走し、ラビをひたすら探す。
一方、他のゾンダーコマンド達は、武装蜂起を計画、収容所からの脱出を計画する。
その計画に加わることになったサウルだが......

印象的なのは、ファーストシーン。
画面全体がほやけている。すわ、投影ミスかと思い、暫くみていると、奥から何人かの人達がやってくる。
彼らは、ちらばり、一人だけ画面の手前に進んでくる。
すると、ある位置でカメラのピントが正確に合う。
それが主人公「サウル」なのである。
なかなか面白い趣向であると思った。しかも、スクリーンサイズは今では滅多に使用しない「スタンダードタイプ(昔のテレビの4対3とほぼ同じ比率)」を採用している。
その後も、ピントのフォーカスはサウルに合ったまま。他の映像はサウルに近づかない限り、全てフィルターを使用したように「ぼやけて」いる。
このあたりは、サウルを中心に、彼の目線からストーリーを進めて行こうと言う、監督の意思が見て取れる。
ただ残念なのは、どうしてもサウルの心情に成りきれないことだ。
彼の目線から、物語を目の当たりにしても、彼の心情を汲み取ることは、私はできなかった。
かなり斬新で、けれんのある映画の作りは、監督の意欲、観客に対するアピールはできていると思う。
しかし、映画全体として、作りが浅く、どうしても納得のゆく作品として完成していない。
映画の後半については、現在公開中なので、割愛させていただく。
後半、ラストシーンについても、観客に対する訴えかけが無いように私には感じられた。
前々回紹介した「ディーパンの闘い」もそうだったが、もっと映画の作りが深く、主題を持った映画を作ってもらいたいと、今回「サウルの息子」を観て再度私は思った。
この映画は、昨年のカンヌ映画祭でパルムドールに次ぐグランプリを受賞している。
そして、昨日開催された、アカデミー賞でも外国語映画賞を受賞している。
アカデミー賞の外国語映画賞は、信頼に足りるもので、今までも多くの傑作を世に出すことに成功している。
私は、アカデミー賞の外国語映画賞は特に気にしている。
今回観た「サウルの息子」は前述のとおり、アカデミー外国語映画賞とカンヌのグランプリを受賞した作品である。観る方も、それなりの期待をして観る。
しかし、今回この映画を観た感想は「とても残念な出来」と言う他ない。
現在公開中なので、興味を持たれた方は、観ることをお勧めする。
しかし「過大な期待」はしない方が良い、と私は思っている。

2015年、ハンガリー製作、カラー、107分、監督:ネメシュ・ラースロー、第68回カンヌ映画際グランプリ、第88回アカデミー賞外国語映画賞

明日のためにその216-ディーパンの闘い

2016年02月27日 | ヨーロッパ映画
内戦が招いた男の悲劇。

現在も各国で、内戦が後をたたない。
内戦は、一般市民を巻き込み、彼らを悲劇のどん底へ突き落とす。
戦争経験者が減る一方の日本では、彼らの悲しみを慮るすべもない。
本日紹介する映画は「ディーパンの闘い」
スリランカ内戦が招いた、悲劇の物語だ。
ストーリーを紹介しておこう。

ディーパンは内戦で妻子を亡くした兵隊。
彼は、現状に嫌気がさし、国を去ろうと決意する。
一方同じスリランカに住む、女性ヤリニは孤児を探して奔走していた。
彼女はようやく、イラヤルと言う少女を見つける。
そして、三人は偽造パスポートを作り、フランスへと逃亡する。
三人は偽りの家族を装い、フランス郊外の集合住宅を住まいとした。
しかし、妻子を亡くしたディーパンは、寂しさから、その偽りの家族の距離を縮めようとする。
一見平穏な居住環境だと思われたが、近所には麻薬の売買をする若者達がたむろしていた。
ある日、ディーパン達の住む近所で、銃声が鳴り響く。
平穏な生活を望んでいた、ディーパンだったが......

物語の設定は、ディーパンがスリランカ少数民族の「タミル族」出身となっている。
よって、前編台詞は「タミル語」である。
タミル語で思い出すのは「インド」ではないだろうか。
インドは多言語国で、タミル語以外にも「ヒンディー語」「ウルドゥ語」など複数の言語がある。
また、タミル語はシンガポールでも公用語として使用されている。
フランス製作の映画であるが、この設定であるため、全編タミル語での会話となっている。
あまり聞き慣れない言葉なので、最初は戸惑うかもしれないが、映画が進むうちに慣れてしまう。
そこが「映画」の良いところでもある。
話がそれたので、本題に戻ろう。
映画はゆったりとした時間の中、カメラが漂うように映像を映し出す。
とてもゆっくりとした時間が、そこにはある。
心地よいリズムを刻む映像には好感が持てる。
特に要所に用いられる「像」の映像は印象的だ。
物語は、この「像」の映像と「フェードアウト」を多用した、省略法で進んでゆく。
ただし、最初の各人物の設定に説明が無い。
これは、しっかりした説明が無いと、その後の展開に必用な要素がたりなくなり、不満が残る。
ただ、独特の映像美を持った映画なので、映画全体としては、良い評価をしてもいいだろう。
しかし、映画の宣伝文句につられて観ると、不満が残ると思う。
映画の宣伝文句については、以前から気になっていたが、観衆の興味を煽るために、過大広告を行なう傾向が多い。
その結果、期待して観たわりには、納得のゆかない映画が多くなってきてる。
映画の広報を担当する者は、もっとしっかりしたパブリシティを行なうべきである。
今回も「愛のため、家族のために闘いの階段を昇ってゆく」と宣伝文句にはあるが、あまりそれに期待しないほうが良いだろう。
映画のラスト、クライマックスについては、実際に映画館に足を運び、この映画を観てもらいたい。
よって、今回はこの件については記載しないことにする。
この作品は昨年の第68回カンヌ映画際で、最高賞の「パルムドール」を受賞している。
この映画が、その賞に値するか否かは、評価が分かれるかもしれない。
公開中の映画なので、この点についての私見は慎みたいと思う。
是非、興味を持たれた方は、この映画を観ることをお勧めする。

2014年、フランス製作、2015年日本公開、カラー、115分、監督: ジャック・オーディアール、第68回カンヌ映画際パルムドール受賞



明日のためにその176-ジミー、野を駆ける伝説

2015年09月30日 | ヨーロッパ映画
最後まで闘った男。

現代、何でも叶う時代。
世の中には、物が溢れ、与える側、与えられる側、探すことなくお互いの欲求を享受できる。
インターネットは、一瞬で世界を駆け巡り、必用な情報を素早く手中にできる。
本当に、便利になりすぎた現代である。
しかし、或る意味可哀相な面も持っている。クリエイティビティの劣化である。
与えられる側は、何も考えず、ゲーム等に熱中しているが、与える側の意思に忠実でなければならない。
そこには与えられる側のクリエイティビティは、殆ど存在しない。
私の幼い頃や少年~青年期には、インターネットも無ければ、ゲーム機も無かった。
しかし、それなりに今まで遊んできた遊びに、手を加え新しい遊びを作ったものだ。
それに、カルチャーイノヴェーションと、若い時期に遭遇できたのも良い経験だった。
少年期に現れた、テレビゲームのテニス等は夢中になったものだ。
テニスと言っても、画面左右に上下に操作できる長いブロックがあり、小さなブロックをそれに当て、相手に返すと言う、とてもシンプルなテレビゲームである。
しかし、今まで「ピンボール」しか遊んだことの無い、少年期の私にとってそれは、一大革命であった。

前置きが長くなってしまった、今回は「ジミー、野を駆ける伝説」と言う映画を紹介する。
社会派監督、ケン・ローチの作品だ。
ストーリーを紹介しておこう。

1930年、10年間アメリカに滞在していた、アイルランドの活動家、ジミー・グラルトンが故郷に帰ってくる。
彼は10年前、朽ち果てた小屋をホールに改造し、周りの人々の助けを借りながら、絵や音楽、ダンス等を村人達に教えていた。
久しぶりに帰って来た彼に、村の人々は「ホールを再建し、また様々な文化を教えて欲しい」と懇願される。
母親との平凡な生活を過ごすため、彼は帰ってきたのだが、やがてまたホールを再建するとに情熱を燃やす。
信頼する周囲の人々と彼はホールを再建し、アメリカから持ち帰った蓄音機でジャズを鳴らし、ダンスを教える。
他の人々は、それぞれの得意分野のカルチャー教室を開き、彼の再建したホールは大いに賑わった。
しかし、そのことが村の保守層の逆鱗に触れる。
順調にホールを営んでいた、クラルトンだったが........

時は1930年代、場所はアイルランド。何も無い時代であり、何も無い場所である。
そこで、人々は娯楽として素朴な文化レクチャーに夢中になる。
今では考えられないほど、素朴なことでもだ。
クラルトンはやがて保守層から「共産主義者」「反キリスト派」呼ばわりされ、様々な妨害を受けることになる。
ラスト、クラルトンはアメリカ国籍を持っていると言う理由だけで、アメリカへ強制送還される。
トラックの荷台に、手錠をかけられ、搬送されていく彼の後を、ホールでの教え子達が自転車で追いかける。
なんとも切なくなる、ラストである。
前述したが、現代は何でも叶う時代である。それが悪いとは言わない、しかし、この映画のような時代があったこと、最後まで保守層と戦った男がいたということを忘れてはいけない。
ジミー・クラルトンは実在の人物である、この映画は彼のドキュメンタリーとも言えるものだ。
是非、万人に観ていただきたい、映画である。

2014年、イギリス・アイルランド・フランス製作、カラー109分、2015年日本公開、監督:ケン・ローチ

明日のためにその152-サマータイムキラー

2015年08月05日 | ヨーロッパ映画
イタリアン・ノアールの佳作。

以前このブログに書いたように、1970年代の映画界は「アメリカン・ニューシネマ」がメインストリームになっていたが、その他「パニック映画」や「フレンチ・フィルムノアール」も多く製作されていた。
「パニック映画」その名称のとおり、多くの人達が様々な事故によってパニックに陥る状況を描いたものである。
「フレンチ・フィルムノアール」はフランス製作のギャングの世界や、ギャングと警察の世界を描いたものである。
今回紹介する映画は「サマータイムキラー」
イタリア製作のノアールものである。
ストーリーを紹介しておこう。

十数年前、父親をマフィアに殺されたレイ。
彼は復習を誓い、自ら孤独な殺し屋となってゆく。
そして彼の復讐劇ははじまる。
次々と父親を殺したマフィア達を殺し、やがて組織の大物アルフディに近づく。
しかしアルフディの身辺警護は固く、なかなか復讐を果たすことができない。
しかたなくレイは、彼の娘タニアを誘拐、監禁してしまう。
娘を人質に、復讐を果たそうとするレイだったが........

物語後半で、レイとタニアはいつしか愛し合う仲になってしまう。
タニアは、自分の父親を殺さないように、レイを必死に説得する。
さて、その願いは叶えられるのか。
ラスト、物語はレイとタニアにとってはハッピーエンドを迎える。
しかし物語に登場するある人物にとっては、悲しい結末となる。
私はそのラストシーンが、未だ鮮明に脳裏に焼きついている

主人公レイを演じたのがアメリカ映画界の大御所「ロバート・ミッチャム」の息子「クリストファー・ミッチャム」
タニアを演じたのが「オリビア・ハッセー」
眩しい二人の若さにも注目だ。

この映画もテーマ曲が秀逸である。
下にリンクを貼っておいたので、是非お聴きになる事をお勧めする。

映画「サマータイム・キラー」主題歌「Run and Run」


明日のためにその149-灰とダイヤモンド

2015年07月27日 | ヨーロッパ映画
レジスタンスの抵抗と悲しみ。

戦争はいけない。
人が人を殺し、それが評価されるような世界は正常とは言えない。
私達は今、とても平和な世界で暮らしている。
それを当然と思うことなく、世界では常に紛争が起こり、数々の犠牲者が出ていることは知っておくべきだろう。
今回紹介する映画は「灰とダイヤモンド」
終戦時のポーランドで起こった反政府運動者の若者の物語である。
ストーリーを紹介しておこう。

1945年戦争も終りかけたころ、ポーランド労働者党書記のシチューカの暗殺を命じられたロンドン亡命政府系の若い暗殺者マチェック。
しかし彼は誤って他人を射殺してしまう。
なんとかシチューカを歓迎する宴会に潜り込んだマチェック、しかし彼はその場のウエイトレス「クリスティーナ」と恋に落ちてしまう。
それをきっかけにシチューカの暗殺を最後に、暗殺者を止め彼女と暮らすことを決意するマチェックだったが.......

ラスト、マチェックは悲しい運命に導かれる。
あまりにも残酷なラストである。
この「灰とダイヤモンド」は「世代」「地下水道」とならび、アンジェイ・ワイダ監督の抵抗三部作と呼ばれる。
私は三作とも観たが、やはり「灰とダイヤモンド」衝撃が一番強い。
マチェックを演じた、ズビグニェフ・ツィブルスキは39歳の若さで逝ってしまった。
走り出した列車に飛び乗ろうとして失敗し、命を落としたのだ。

前述したとおり、世界各地で未だ戦火の絶えることはない。
平和のありがたさを再認識すべきである。
観ていない方は是非観ていただくよう、お勧めする。

1958年、ポーランド製作、モノクロ、103分、1959年日本公開、監督:アンジェイ・ワイダ

明日のためにその128-天才スピグェット

2014年12月30日 | ヨーロッパ映画
優しく、心温まる一品。

家族。
時に愛おしく、時に疎ましい存在である。
しかし人間は一人では生きてゆけない。
年齢を重ねる程人は故国を目指し、家族は自身にとって安住の場となるのである。
今回紹介する作品は「天才スピグェット」
「アメリ」と撮ったジャン=ピエール・ジュネの作品である。
ストーリを紹介しておこう。
アメリカの西部モンタナ州に住む10歳のスピグェットは天才少年。
両親と姉、弟と住んでいる。
ある日弟が銃の暴発がもとで死んでしまう。
スピグェットは弟が自分より可愛がられていたと思っており、自分が弟の代わりに死ねば良かったとおもう日々。
そんな彼のもとへワシントンから彼の発明した装置が栄誉ある賞に選ばれたと電話がかかってくる。
スピグェットは一大決心、一人でワシントンへ向かおうとするのだが......
さすがジュネ監督、遊び心一杯の作りが良い。
観ていてとても心温まる作品になっている。
ラスト、終始優しい目線でこの作品を撮ったジュネ監督の優しさがしみじみ感じられる感動的なシークエンスである。
以前観た「アメリ」ももう一度観てみたくなってしまった。
彼の作品はどの作品もその目線は優しい。
映画ファン全員にお勧めできる傑作である。

2013年、フランス・カナダ合作、2014年日本公開、カラー105分、監督:ジャン=ピエール・ジュネ

今年もこのブログを読んでいただいた方に感謝いたします。
皆様良いお年をお迎えください。

ダーリン三浦


明日のためにその126-タイピスト

2014年09月30日 | ヨーロッパ映画
だから男、されど男ロマンチックな恋のゆくえ。

パソコン全盛の現代、マウスのみで操作できるソフトもあるがメールなどはやはりキーボードで文章を打つことになる。
自身の自慢をするわけではないが、私は俗に言う「ブラインドタッチ」ができる。
つまりキーボードを見なくてもタイピングが出来るのだ。
昔プログラムを組んでいた時にはとてもこの技術に助けられた、画面を見たままキーボードが打てるのはやはり便利である。
しかしこの技術を習得するのは一朝一夕では不可能である、地道な努力が必要なのだ。
今回紹介する映画は「タイピスト!」
タイトルが示すようにタイピングをテーマにした映画だ。
ストーリーを紹介しておこう。

時代は1950年代後半、フランスの田舎に住んでいる女性ローズ・パンフィルはパリに上京し仕事を探す。
そこで彼女はルイ・エシャールと言う男性が経営する保険代理店で働くことになる。
彼女には特技があった、タイプライターの早打ちである。
しかし彼女のタイピングは我流で人差し指一本でタイピングするのだ。
それ以外はとりえのない彼女にルイは「タイプライターの早打ち大会に出場し優勝すること」と自分の会社に勤め続ける条件を出した。
パンフィルは職を失わない為にタイピングの特訓を始めるのだが......

物語が進行するにつれ、ルイとパンフィルは恋に落ちる。
しかしルイはその気持ちをあえて黙殺し、彼女に対して平静を装う。
このルイの気持ちの表現がとても良い。
じれったいこと極まりないのだがそこが良いのだ。
彼の性格、男としての我慢、様々なものが見えてとても良い仕上がりになっている。
映画全体で流れる音楽もその当時の物を使っているのだろう、その雰囲気たるやしてやったりと言えるほどセンスの良い選曲である。
この映画は純愛的なラブストーリーの佳作だ。
是非観ていただきたい作品である。

2012年、フランス制作、カラー、110分、監督:レジス・ロワンサル

明日のためにその91-風にそよぐ草

2013年06月14日 | ヨーロッパ映画
荒唐無稽な男女の喜劇。

アラン・レネ。
以前このブログで紹介した「夜と霧」を撮った監督である。
既に86歳を越えてなお現役の監督である。
今回紹介する映画は「風にそよぐ草」
アラン・レネ監督の最新作である。
ストーリーを紹介しよう。
歯科医の女性マグリットはある日ショッピングモールで持っていたバックを少年にひったくられる。
後日彼女の財布だけ駐車場に落ちているのを初老の男性ジョルジュが見つける。
彼女に直接電話をして届けるべきか彼は悩むのだが、結局警察に財布を届け出ることにする。
後日マグリットからジョルジュにお礼の電話が入る。
彼女のお礼だけのそっけない電話に彼は失望し、しかしなんとしても彼女と会いたいとあの手この手で彼女に接近しようとするジョルジュだったが.....
とにかくこの映画、荒唐無稽でハチャメチャな展開である。
しかし不思議なことに映画を観進むにつれてそれが自然に思えてくる。
なんといっても86歳のアラン・レネがこのような映画を撮れたことがすごいことである。
映画はラスト思わぬ展開と結末になる。
その内容たるやまずは観てのお楽しみである。
大笑いできる喜劇では無いがなんともシニカルな笑いの映画なので是非観ることをお勧めする。
2009年フランス、イタリア合作、2009年フランス公開、2011年日本公開、カラー104分、監督アラン・レネ


明日のためにその87-ル・アーヴルの靴みがき

2013年05月31日 | ヨーロッパ映画
余裕のある人生の小さな幸せ。

いつもながら思うが日本の社会はせせこましい。
余裕をもって働いている人は僅かであろう。
人生を中心に考えたときこの様な状態でよいのであろうかと思うときがある。
難しいが人生の余裕の中に仕事が存在しているのが理想ではないか。
今回紹介するのは「ル・アーヴルの靴みがき」
フランスを舞台にした物語である。
ストーリーを紹介しておこう。
フランスのル・アーヴル地方で靴みがきをなりわいとしているマルセル。
彼は慎ましやかに妻と愛犬一匹と暮らしている。
ある日彼女が病に倒れ入院することとなる。
それと入れ違いであるきっかけで知り合った違法難民の黒人少年と彼は生活を共にすることとなる。
その少年は既にイギリスのロンドンに入国している母親の元に行きたいと切望している。
マルセルはなんとかして彼を母親の元に行かせるべく考えを巡らすのだが........
とにかく映画の雰囲気が抜群に良い。
善人しか登場してこないところもとても良い。(たった一人を除いてだが)
登場人物は善人にしておおらかだ。
監督はアキ・カウリスマキ、フィンランドが生んだ名匠である。
「マッチ工場の少女」や「レニングラード・カーボーイズ・ゴーアメリカ」などで知られる。
日本の小津安二郎に影響を受けておりこの映画でも様々なショットで小津を彷彿とさせる。
果たして黒人少年は無事母親の元にたどり着けるのか?
入院した妻は回復するのか?
そして感動のラスト、私は流るる涙のそのままにしばらくその場から動けなかった。
是非万人に観ていただきたいお勧めの作品である。
2011年フィンランド、フランス、ドイツ合作、2012年日本公開、カラー93分、監督アキ・カウリスマキ。