石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

IMF世界経済見通し:低成長が続く先進国、ドイツはマイナス成長 (2)

2023-04-21 | その他

(注)本レポートは下記URLで一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0574ImfWeoApr2023.pdf

 

2. 2022年~2024年のGDP成長率

 主要な経済圏と国家の昨年(実績見込み)、今年(予測)及び来年(予測)のGDP成長率の推移を見ると以下の通りである。

 

(際立って低い今年と来年のEU成長率!)

2-1主要経済圏

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-01.pdf 参照)

 全世界の3年間の成長率は3.4%(2022年)→2.8%(2023年)→3.0%(2024年)であり、3%前後で推移する見通しである。昨年及び今年はコロナ禍が回復に向かった一方、ウクライナ危機が長引きプラスとマイナスの要因が景気を停滞させており、前後3年間の成長率に大きな変化は無い。

 

 ウクライナ危機の影響を最も大きく受けるのはEU圏である。3年間の成長率は3.7%→0.8%→1.6%であり、今年は3年間の中で成長率が大きく落ち込んでおり、他の経済圏と比べても際立って低い。ASEAN5カ国の成長率は5.5%→4.5%→4.6%であり、世界平均を上回る高い成長率を維持する見通しである。

 

 産油・ガス国が多い中東及び中央アジアの成長率はエネルギー価格の騰落に大きく影響され、3年間の成長率の推移は5.3%→2.9%→3.5%と見込まれている。昨年はエネルギー価格高騰の恩恵が大きかったが、今年及び来年は世界平均を少し上回る程度の成長率で推移する見通しである。

 

(中国を上回る高い成長率を続けるインド!)

2-2主要国

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-02.pdf 参照)

米国の昨年の成長率は2.1%であったが、今年(1.6%)、来年(1.1%)と連続して成長が鈍化する見通しである。日本の成長率は1.1%→1.3%→1.0%と1%台前半の低成長を続けるものとみられている。日本と同様先進工業国であるドイツの成長率は1.8%→▲0.1%→1.1%であり、今年はわずかではあるがマイナス成長になると予測されている。同国は原料のエネルギー輸入価格が高騰する一方、世界景気の低迷で輸出が伸び悩んでいることが低成長の大きな要因と考えられる。

 

中国は3.0%→5.2%→4.5%であり、昨年から今年にかけて経済成長を回復するものの、その勢いは持続せず来年は5%以下にとどまると予測されている。コロナ禍以前は二桁台の成長率を誇っていたことに比べ中国の成長率は伸び悩んでいる。これに対してインドの成長率は6.8%→5.9%→6.3%であり、世界平均を大きく上回る6%前後の高い成長を維持する見込みである。

 

 中国、インドなどと共に新興経済国BRICSの一翼を担ってきたロシアの成長率は対照的な様相を呈している。昨年(2022年)は一昨年に引き続くマイナス成長(▲2.0%)であり、今年(0.7%)、来年(1.3%)はプラスながらも低い成長率にとどまると予測されている。ウクライナ紛争は未だ終息の見通しが立っておらず、ロシアの今年の成長率が昨年同様マイナスに陥る可能性は否定できない。

 

産油国サウジアラビアの3カ年の成長率は8.7%→3.1%→3.1%であり、昨年は原油価格高騰の恩恵を受けたが、今年及び来年は世界景気の回復が遅れる一方インフレによる輸入価格の高騰のため、昨年のような高い成長率は期待できないようである。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                              E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(4月20日)

2023-04-20 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

 

(中東関連ニュース)

・スーダン、対立激化する二つの軍組織。日本は救援機派遣検討中

・サウジ外相、シリア大統領と会談。外交関係修復へ

・カタール/UAE、大使館再開に向け協議進展

・イエメン暫定大統領、サウジからアデン仮首都に帰還

・イラン:ハメネイ師、ロウハニ前大統領提案の国民投票を拒否

・サウジ、2月末の米財務証券保有高世界17位の1,170億ドル。1位は日本

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

SF小説:「ナクバの東」(84完)

2023-04-19 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

2023年4月

エピローグ(3)

 

84. 胡蝶の夢

 

突然、周囲のすべてが宙に舞い、悲鳴が聞こえ、体が浮き上がる感触を覚えた。どこか遠くから女性の呼びかける声がした。

 

「お客様、シートベルトをお締めください。」

 

うたた寝から目が覚めると目の前でスチュワーデスが微笑み返し、もう一度同じ言葉をかけてきた。

 

「乱気流に巻き込まれたようです。しばらくの間ご不便でしょうがシートベルトを締めてください。何か飲み物をお持ちしましょうか?」

 

彼は首を振ると、シートのベルトを掛けなおした。

窓の外を見ると地平線が白みかけていた。

機内のボードには機体の高度と位置が表示され、現在はイラン南部の上空を西に向かって飛行中であることがわかった。

 

<このルートは何度も飛んでいるけれど、ここらあたりは気流が安定していて乱気流に巻き込まれるなんてことはなかったはずなのに------>

 

<そう言えば少し前にこのあたりの上空で異常な爆発があったとのニュースが流れていたっけ。イスラエルがイラン上空で核を爆発させたなんて言う報道があったけれど、イラン当局もイスラエルも、そして米国も沈黙を守ったままだ。>

 

イラン上空を飛ぶME514に偶然乗り合わせただけの平凡な一市民である日本人ビジネスマンの膝の上には雑誌が開かれたままであった。そこにはパレスチナ人の老女と幼い女の子、そして母親の3人の写真があった。

 

彼はつい先ほどまで見ていた夢を思い出そうとしたが、夢の大半がそうであるように目覚めとともに記憶の外に消えていた。それは胡蝶の夢であったのだろうか。

----------------------------------------------------------------------------------

イラン上空で異変が発生していることを人類は未だ誰も感知していなかった。

 

核爆発の直後、地球のはるかかなた上空の闇がわずかに捩じれた。それはやがて波紋となり周囲に広がり、中心部に穴が開いた。穴は猛烈なスピードで拡大し、周囲の天体は波に巻き込まれ、次々と中心部のブラックホールに吸い込まれていった。それは光速を超える速さであったため、地球からは全く観測することができなかった。

 

 地球が波に飲み込まれるのが数百年先か、数千年先か数億年先か誰にもわからない。その時までヒトが生き延びているかどうかもわからない。宇宙の唯一の存在だけが地球の終末を見とどけることになるのだろうか?

 

(完)

 

 

荒葉一也

(From an ordinary citizen in the cloud)

前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(4月18日)

2023-04-18 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・サウジとオランダがロッテルダム港窓口にグリーンエネルギー協力で協議

(中東関連ニュース)

・シリア外相、アルジェリアとチュニジアを訪問。国交正常化図る

・イラン、サウジ国王招待を公式発表

・イエメン:3日間の捕虜交換終わる。190人が家族のもとへ

・米国在住の元イラン皇太子がイスラエル訪問を計画

・エジプト、投資協議会を最高投資評議会に改組

・UAEムバラダ、ブラジルでバイオ燃料に25億ドル投資

・UAEのADNOC、川崎重工業、JOGMEC/INPEXと水素燃料バリューチェーン開発。 *

JOGMEC/INPEXプレスリリース

 川重プレスリリース

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

IMF世界経済見通し:低成長が続く先進国、ドイツはマイナス成長 (1)

2023-04-18 | その他

(注)本レポートは下記URLで一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0574ImfWeoApr2023.pdf

 

IMF(国際通貨基金)が「世界経済見通し(World Economic Outlook、April 2023)」(以下、WEO)を発表した。 また付属資料として世界各国及び地域の主要な経済指標を示した「データベース(World Economic Outlook Database)」も同時に公表した。

 

本稿では世界、主要経済圏、主要国の今年(2023年)及び来年(2024年)の成長率を比較し、また前回1月の経済見通し(World Economic Outlook Update)に対してGDP成長率がどのように見直されたかを検討する。さらに昨年、今年及び来年の3か年の成長率の推移を比較する。また昨年4月、7月、10月、今年1月及び今回まで5回のWEO見通しで今年(2023年)の成長率がどのように見直されてきたかを精査する。

 

*WEOレポート:

https://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2023/04/11/world-economic-outlook-april-2023

*同データベース

https://www.imf.org/en/Publications/WEO/weo-database/2023/April

 

 

(今年の世界の成長率は前回1月見通しを0.1%下方修正し2.8%に!)

1.2023年のGDP成長率(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-08.pdf 参照)

 今回4月見通しでは今年の世界の成長率は2.8%とされており、前回1月の2.9%からわずかに下方修正されている。コロナ禍が終息したにもかかわらず、ウクライナ紛争の先行きが見えず、エネルギー価格も不安定な動きを示している。このことが中国の経済回復の遅れを招き、また日独など先進国の経済成長を下押ししている。

 

 経済圏別に見るとEU圏の2023年の成長率は0.8%であり、1月の数値を0.1%アップしている。またASEAN5カ国も4.3%から4.5%に上方修正されている。これに対して中東・中央アジア諸国は3.2%から2.9%に引き下げられている。EU圏はわずかに上方修正されているものの、ウクライナ紛争における対ロシア経済制裁及びエネルギー価格の急騰がブーメラン効果を及ぼしており、成長率は低い状態が続いている。

 

石油・天然ガスの産出国が多い中東・中央アジア諸国は、エネルギー価格高騰の恩恵を受け世界平均を上回る成長率であるが、エネルギー需要及び価格が共に低迷しているため今年の成長率は3.2%から2.9%に引き下げられている。

 

 国別では今年の成長率は米国1.6%、日本1.3%、ドイツ▲0.1%、英国▲0.3%、ロシア0.7%、中国5.2%、インド5.9%である。中国はコロナ以前二桁の高い成長を続けてきたものの、その後成長率が急減速している。しかしそれでも世界平均の2.8%を大きく上回る成長率が見込まれている。これに対してヨーロッパ諸国は上記の通りEU圏の成長率が1%を下回り、ドイツ及び英国はマイナス成長と見込まれるなど不振が際立っている。

 

 アジアでは中国及びインドは5%を超える成長率が見込まれ、特にインドは世界最高水準の成長を達成しそうである。ASEAN5か国の成長率も上記の通り4.5%であり、いわゆるグローバルサウスのアジア諸国は欧米先進国はもとより世界平均を大幅に上回る成長が見込まれている。産油国のサウジアラビアは世界平均を少し上回る3.1%の成長が見込まれるが、これに対してロシアは0.7%の低成長にとどまっている。ロシアはサウジアラビアに並ぶ石油・天然ガスの生産国であるが、ウクライナ紛争の長期化による国内経済の悪化及び欧米諸国による経済制裁が大きく響いているようである。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                              E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(4月16日)

2023-04-16 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

 

(中東関連ニュース)

・GCC、エジプト、イラク、ヨルダン各国がシリアのアラブ連盟復帰問題で協議

・イエメン内戦捕虜交換始まる。第一陣で16人のサウジ兵士など帰還

・イラン警察、スカーフ着用義務違反女性の摘発始まる

・岸田首相、G7環境相会議参加のCOP28議長国UAE工業相と面談

・2025大阪万博着工式にサウジ代表も参加

・イスタンブールに最新の金融センター完成

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週の各社プレスリリースから(4/9-4/15)

2023-04-15 | 今週のエネルギー関連新聞発表

4/13 ENEOS ホールディングス

(開示事項の経過)当社子会社によるミャンマー連邦共和国における石油・天然ガス開発事業からの撤退に関する同国政府の承認につい

https://www.hd.eneos.co.jp/newsrelease/upload_pdf/20230413_01_01_0960492.pdf

 

4/13 出光興産

廃棄物由来 国産クリーン水素製造の事業化検討開始について

https://www.idemitsu.com/jp/news/2023/230413.html

 

4/14 石油連盟

木藤 石油連盟会長定例記者会見 発言要旨・配布資料

https://www.paj.gr.jp/news/650

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(4月14日)

2023-04-14 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・原油価格:Brent $87.25, WTI $83.19

・OPEC、今年の原油需要見通しを据え置き

・パキスタン、ロシア原油を格安で輸入

・中国SINOPEC、カタールガス田の5%権益取得

(中東関連ニュース)

・サウジがエジプト等アラブ5か国代表とシリアのアラブ連盟復帰を協議

・カタールとバハレーンが3年半ぶりに国交回復

・エジプト/トルコ外相会談で大使任命等、外交関係修復を協議

・サウジとシリア両国外相が外交関係回復で協議

・UAE大統領エジプト訪問、シーシ大統領と内外問題協議

・アフガニスタン問題でイラン、中、露、パキスタンがサマルカンドで会議

・イエメンフーシ派がサウジの仲介作業に反対。捕虜交換遅れる

・リヤド、KAEC等国内4か所に特別経済圏設置。100%外資など優遇策

・イランの昨年死刑執行582件、前年の75%増:人権団体調査

・駐サウジ日本大使館が日本の大学卒業サウジ人をラマダン夕食会に招待

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

SF小説:「ナクバの東」(83)

2023-04-13 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

2023年4月

エピローグ(2)

 

83. ネオ・ギャラクシーの使命

キメラがネオ・ギャラクシーとなって地球に再上陸するまでそれほど長い時間ではなかった。

 

 ネオ・ギャラクシーとキメラの生き残りを賭けた壮絶な戦いが始まった。創造主が創り出し、宇宙飛行士モシェの体を通じて地球に送り込まれたネオ・ギャラクシーはキメラより強力であり、次第にキメラに取って代わっていった。発熱症状等が軽いネオ・ギャラクシーは静かにそして着実にヒトの体内に棲みついていったのであった。

 

 パンデミックの終息宣言が出された。ヒトは元の平穏な日常生活を取り戻した。しかしヒトの気づかないところでネオ・ギャラクシーの影響は出ていた。それはヒトのむやみな繫殖を抑制するという創造主がネオ・ギャラクシーに与えた新しい機能であった。

 

創造主はヒトの生殖組織を食い尽くすキメラを絶やす一方、ヒトの繁殖力を適切に維持する役割をネオ・ギャラクシーに付与したのである。これによってヒトの無計画な増殖は止まり、ヒトは他の生物と将来にわたって共存することになった。同時にそれはネオ・ギャラクシーの生存が保証されることでもあった。ヒトと他の生物とネオ・ギャラクシーの三者に平和な均衡が生まれようとしていた。

 

 すでに西欧先進国で下がっていた出生率が中東、アフリカ、南米など開発途上国でも同じ傾向を示し始めた。社会学者たちはその現象はヒトが豊かな生活を維持しようとして必然的に選んだ道だと解説した。

 

 それも一理はあったが、本当はネオ・ギャラクシーがヒトに棲みつき、その生殖機能をコントロールし始めたことこそが最大の理由だったのである。ヒトの思考と行動は到底創造主の思慮に及ばないのであった。

 

 

(続く)

 

 

荒葉一也

(From an ordinary citizen in the cloud)

前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石油と中東のニュース(4月12日)

2023-04-12 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

 

(中東関連ニュース)

・岸田首相、4月末からエジプト等アフリカ4カ国歴訪

・ヨルダン国王、天皇皇后両陛下と会談。 *

*参考:

ハシミテ王家家系図

(ニュース解説)ヨルダン王家に何が起こったのか?

ヨルダン・ハシミテ家の構図

・タリバンのアフガニスタン女性就労禁止で国連支援活動に重大な支障

・イスラエル首相、国防相解任を撤回

・イエメン和平交渉で居住者の保護を要請:南部解放組織トップ

・IMF、世界経済見通し発表。今年のGRP成長率は2.8%、独はマイナス

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする