石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2018年版解説シリーズ:石油篇(6)

2018-06-25 | BP統計

 

2018.6.25

前田 高行

 

(価格重視かシェア重視かー揺れ動くOPEC!)

(3)石油生産量の推移とOPECシェア(1970~2017年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-2-G02.pdf参照。)

1970年の世界の石油生産量は4,807万B/Dであったが、その後1979年の第二次オイルショックまで生産は大きく増加、1980年には6,295万B/Dに達した。その後価格の高騰により石油の消費が減少した結果、1985年の生産量は5,741万B/Dにとどまった。1980年代は石油の生産が歴史上初めて長期にわたり減退した時期であった。

 

1990年代に入ると石油生産は再び右肩上がりに増加し始めた。そして1995年(6,797万B/D)以降急激に伸び2000年に7,491万B/D、2005年は8千万B/Dを突破して8,188万B/Dに達している。これは中国、インドなど新興経済国の消費量が急増したことが主たる要因である。その後2000年代後半は原油価格の急騰とそれに続く景気後退で石油生産の増加は一時的に鈍化したが、2010年代は再び増勢に転じ2017年の生産量は9,265万B/Dに達している。

 

 地域毎のシェアの変化を見ると、1970年は中東の生産量が29%でもっとも多く、北米28%、ロシア・中央アジア15%、アフリカ13%、中南米10%と続き、アジア・大洋州は(3%)と欧州(2%)のシェアは小さい。その後北米の生産が停滞する一方、中東及びアジア・大洋州の生産が伸びており、現在(2017年)では中東のシェアが34%と飛び抜けて高い。北米は1980年代には欧州・ユーラシア地域にも追い抜かれ2000年代半ばにはシェアは17%まで落ち込んだが、その後シェール・オイルの生産が急増したことにより2017年のシェアは22%に高まっている。

 

 石油生産に占めるOPEC加盟国のシェアの推移を見ると、1970年は48%であり、世界の石油生産のほぼ半分を占めた。しかし1970年代後半からシェアは下落し85年には30%を切った。その後80年代後半からシェアは回復し、1995年以降は40%台のシェアを維持している。2017年のシェアは43%である。

 

2014年後半から石油価格が急落する中でOPECは価格よりもシェアを重視する方針を打ち出したが、OPECのシェアは思ったほど伸びなかった。その背景にあったのは近年急激に生産を拡大し価格競争力をつけてきた米国のシェール・オイルであった。シェール・オイルの追い落とし策としてOPECが掲げた低価格政策は2016年半ばに行き詰まりを見せ、OPEC産油国の中にはベネズエラのように財政に行き詰る国も出てきた。このためOPECはロシアなど非OPEC産油国を巻き込んでOPEC・非OPEC協調減産の体制を作り上げ、2017年1月から合わせて180万B/Dの減産体制をとり、ことし(2018年)12月末まで継続することを申し合わせた。この結果、原油価格はかつての20ドル台から70ドル前後まで上昇し、現在はサウジアラビアおよびロシアは協調減産の出口戦略を模索、6月22、23日のOPEC総会及びOPEC・非OPEC合同閣僚会合において減産緩和の方針が打ち出された。

 

なお長期的な需給で見ると石油と他のエネルギーとの競合の面では、地球温暖化問題に対処するため太陽光、風力などの再生可能エネルギーの利用促進が叫ばれている。さらに石油、天然ガス、石炭の炭化水素エネルギーの中でもCO2排出量の少ない天然ガスの人気が高い。このように石油の需要を取り巻く環境は厳しいものがある。その一方、中国、インドなどのエネルギー需要は今後も拡大するとする見方が一般的である。基幹エネルギーである石油の需要は底堅く、今後も増えていくものと予測される。

 

供給面で特筆すべきことはシェール・オイル、サンド・オイルなど「非在来型」と呼ばれる石油が商業ベースで生産されるようになり、特に米国におけるシェール・オイルの生産には目を見張るものがある。このような技術的要因に対して政治的・経済的な要因としてはイランに対する経済制裁が緩和されさらに米国による再制裁と目まぐるしく変化しており、また有力産油国のリビア、ベネズエラの治安及び経済が悪化している。米国のシェール・オイルは石油価格に敏感に反応し、スイング・プロデューサーの役割を果たすと考えられ供給面における不確定要素は少なくない。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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