石油と中東

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苦境続くシェブロン:五大国際石油企業2016年4-6月期決算速報(2)

2016-08-04 | 海外・国内石油企業の業績

1. 五社の4-6月期業績比較(続き)

(2)利益 (図:http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-52.pdf参照)

 利益が5社の中で最も多いのはTotalの21億ドルであり前年同期比3割減である。これに次ぐのがExxonMobilの17億ドルであるが前年同期(42億ドル)の4割にとどまっている。Shellは2社よりもさらに利益が低く12億ドルで前年同期の3分の1以下である。BPとChevronの両社は欠損であり、今期の欠損額は共にー14億ドル台である。BPは前期が58億ドルの大幅な赤字であったが今回は改善されており、Chevronは前期の黒字(6億ドル)から一転して赤字に転落している。

 

 利益を上流部門(石油・天然ガスの開発生産分野)と下流部門(石油精製および製品販売分野)で比較すると、ExxonMobilは上流・下流部門の利益がそれぞれ3億ドル、8億ドルであり下流部門の利益が上流部門の約3倍である(なお上記各社の総合利益には石油化学品部門あるいはその他の損益を含んでいるため上・下流部門の利益の合計額とは一致しない)。

 

 Totalは上流部門の利益(11億ドル)と下流部門の利益(10億ドル)がほぼ同じである。上下両部門で利益を上げたのはExxonMobilとTotalの2社だけであり、Shell、BP及びChevronの3社はいずれも上流部門が欠損であるのに対して下流部門が利益を計上している。このうちShellの上流部門は20億ドルの赤字、下流部門は17億ドルの黒字である。Chevronは上流部門の赤字が25億ドルに対し下流部門の利益は13億ドルにとどまっている。BPは上流部門がー1億ドル、下流部門は+14億ドルで差し引きでは黒字であるが、今期もメキシコ湾汚染事故処理の負担が発生したため全体としては赤字である。

 

 このようにTotalを除く4社はすべて下流部門の利益が上流部門のそれを上回っており、下流部門が上流部門を支えている状況である。国際石油企業の利益構造はこれまで利益の大半を原油・天然ガスの生産(上流部門)で稼ぎ、精製、石油化学など(下流部門)の低収益を補うという構図であったが原油価格の大幅な下落により収益構造が様変わりしている。即ち上流部門の利益が急減する一方、精製、石油化学部門は原料の原油・天然ガス価格が急落したため利益の出る体質に変化したのである。

 

(3)売上高利益率 (図:http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-53.pdf参照)

 売上高利益率はTotalが5.6%と最も高く、ExxonMobilが2.9%で続いている。Shellの利益率は1.9%にとどまりBP及びChevronはマイナス(それぞれー3.1%、-5%)である。前年同期の各社の利益率はChevron6.6%、ExxonMobil5.7%、Shell5.4%、Chevron1.4%であり、BPはマイナス9.6%で同社以外はプラスの利益率であった。5社は好調時には10%台と言う高い利益率を誇っていたこともあるが、近年各社の利益率は急速に悪化している。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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