旧聞に属する話ですが、新年早々(2019年1月3日)中国が月面に無人探査機の
着陸を成功させました。これはすごいですね。
中国も既に有人の宇宙飛行は出来ていますが、無人探査機での月面裏着陸は
それとは別の技術力の高さと宇宙開発ビジョンとを示したものだと言えます。
今回中国が実行しているミッションは、国家100年の計とも言える実利を得るための
戦略で、命の起源を探ろうと、同じような無人探査機「はやぶさ」を飛ばしている
日本とは目的が全く違うところにあります。
その実利の目的とは「He3」です。
中国は明らかに「He3(ヘリウム3)」を狙っています。
今から50〜100年後に商用化出来るであろう「核融合発電に向けての布石」
と考えるのが妥当です。He3は核融合炉の燃料として使えます。
ちなみに、He3は、パーティーグッズでボイスチェンジャーに使っているヘリウムと
同位体(元素記号は一緒だけど、中性子の数が違う)です。
核融合は2070〜2120年頃に商用化されると考えられている未来のエネルギー源ですが
もしこれが出来れば世界中で、エネルギーに起因する紛争はなくなると言われている程の
パワーを持っています。
どれほどのパワーか。
核融合炉の燃料としてHe3が25トンあれば、1年間アメリカ全土の電気をまかなえてしまうのです。
では、25トンとはどんな量かというと、スペースシャトルのペイロードが25トンです。
スペースシャトルの観音開きになるあの荷室に入ってしまう量のHe3があればアメリカで
使っている電気が1年間まかなえるのです。
鉄オタの人でしたら、日本の貨物列車1台(1両)で、石炭だと35トン、石油40トン程度の積載が
出来るので、イメージがつきやすいかと思います。
たったこれだけの量で莫大な発電が出来た上に、なんと核のゴミは出ません。
つまり、核融合炉+He3というのは、一気に世界の価値観が変わる大転換の発明なのです。
NASAは月計画の「Global Exploration Strategy」の中で Lunar Resource Utilization(ID:mLRU11)として、
次のように書いています。
Establish one or more alternative energy sources for Earth based on lunar resources.
Potential energy sources include Helium-3 mining for use in fusion reactors on Earth
and supplying materials and components for assembly and operation of space solar
power satellites in cis-lunar space and beamed power from the lunar surface.
この通り、NASA(=アメリカ政府)は「He3を核融合炉で使う」と明示していて、
中国とロシアもHe3に興味を持っていることを公の場で発表しています。
そしてNASAの文章や中国の探査機から推測されるように、実はHe3は月に非常に多くあることが
わかっています。これを大事な科学的なFactとして我々は押さえておく必要があります。
そのFactを踏まえると、
「核融合炉が出来た、燃料が必要、月にいっぱいある、じゃあ取りに行こう。
取りに行ってきた、みんな欲しがっている、高く売ろう、気に入った奴だけに売ろう」
というロジックになるのは誰でも容易に理解出来ると思います。
勿論、そもそもの話として、月までHe3を取りに行って、持ち帰り、精製して使うとなると
相応のコストがかかります。それが電力というUtilitiesとしてコストと利益と釣り合うかが
問題になってきます。
でも、もし何らかのプラットフォームが出来さえすればコストは右肩下がりに下がる可能性が
あり、そうなると月のHe3利権を押さえた中国・アメリカ・ロシアが新時代の資源大国として
覇権的な地位を確立するということになるかも知れないのです。
カール=シュミット、水野和夫、ロドルフ=デュランらは、空間の拡大や蒐集、そして海賊資本主義。
これら歴史の中で起こってきた事象について彼らは議論をしてきました。それと同じ事象が将来、
宇宙という周辺空間を舞台にもう1度繰り返されることになるのです。
歴史的に人類は中央から周辺に向かい、金・銀・胡椒・茶・美術品・労働力などを蒐集することで
富をつくってきました。そして真っ先に周辺に向かうのは、野蛮で勇敢な海賊たちであり、
継続的な果実を得るのはリスクを分けあって出資金を出す資本家達です。
地球上から周辺がなくなり、拡大が止まった後、サイバースペースという周辺空間を
アメリカは作り出し、この空間での覇権を握りました。
しかし、ここで宇宙という新しい周辺があることに気がついたのが、そのアメリカの海賊達です。
イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、ラリー・ペイジ、日本では堀江貴文などです。
彼らはサイバースペースを支配し、そこから得た資金を使い、宇宙という新たな周辺に
漕ぎ出そうとしています。
今回、月面裏に着陸した中国の探査機は単に中国の技術力を誇示したものではなく、
中国が国家として、宇宙という新たな周辺の覇権獲得に向けて、海賊国家及び資本家として
名乗りを挙げたという、大きな歴史的な転換点なのです。
このような、壮大なスケールと歴史観、深淵で明確な将来ビジョンとを持つ異形の国家中国に、
我々はどのような姿勢で相対するのか。
我々の想像力・構想力・胆力が問われています。
着陸を成功させました。これはすごいですね。
中国も既に有人の宇宙飛行は出来ていますが、無人探査機での月面裏着陸は
それとは別の技術力の高さと宇宙開発ビジョンとを示したものだと言えます。
今回中国が実行しているミッションは、国家100年の計とも言える実利を得るための
戦略で、命の起源を探ろうと、同じような無人探査機「はやぶさ」を飛ばしている
日本とは目的が全く違うところにあります。
その実利の目的とは「He3」です。
中国は明らかに「He3(ヘリウム3)」を狙っています。
今から50〜100年後に商用化出来るであろう「核融合発電に向けての布石」
と考えるのが妥当です。He3は核融合炉の燃料として使えます。
ちなみに、He3は、パーティーグッズでボイスチェンジャーに使っているヘリウムと
同位体(元素記号は一緒だけど、中性子の数が違う)です。
核融合は2070〜2120年頃に商用化されると考えられている未来のエネルギー源ですが
もしこれが出来れば世界中で、エネルギーに起因する紛争はなくなると言われている程の
パワーを持っています。
どれほどのパワーか。
核融合炉の燃料としてHe3が25トンあれば、1年間アメリカ全土の電気をまかなえてしまうのです。
では、25トンとはどんな量かというと、スペースシャトルのペイロードが25トンです。
スペースシャトルの観音開きになるあの荷室に入ってしまう量のHe3があればアメリカで
使っている電気が1年間まかなえるのです。
鉄オタの人でしたら、日本の貨物列車1台(1両)で、石炭だと35トン、石油40トン程度の積載が
出来るので、イメージがつきやすいかと思います。
たったこれだけの量で莫大な発電が出来た上に、なんと核のゴミは出ません。
つまり、核融合炉+He3というのは、一気に世界の価値観が変わる大転換の発明なのです。
NASAは月計画の「Global Exploration Strategy」の中で Lunar Resource Utilization(ID:mLRU11)として、
次のように書いています。
Establish one or more alternative energy sources for Earth based on lunar resources.
Potential energy sources include Helium-3 mining for use in fusion reactors on Earth
and supplying materials and components for assembly and operation of space solar
power satellites in cis-lunar space and beamed power from the lunar surface.
この通り、NASA(=アメリカ政府)は「He3を核融合炉で使う」と明示していて、
中国とロシアもHe3に興味を持っていることを公の場で発表しています。
そしてNASAの文章や中国の探査機から推測されるように、実はHe3は月に非常に多くあることが
わかっています。これを大事な科学的なFactとして我々は押さえておく必要があります。
そのFactを踏まえると、
「核融合炉が出来た、燃料が必要、月にいっぱいある、じゃあ取りに行こう。
取りに行ってきた、みんな欲しがっている、高く売ろう、気に入った奴だけに売ろう」
というロジックになるのは誰でも容易に理解出来ると思います。
勿論、そもそもの話として、月までHe3を取りに行って、持ち帰り、精製して使うとなると
相応のコストがかかります。それが電力というUtilitiesとしてコストと利益と釣り合うかが
問題になってきます。
でも、もし何らかのプラットフォームが出来さえすればコストは右肩下がりに下がる可能性が
あり、そうなると月のHe3利権を押さえた中国・アメリカ・ロシアが新時代の資源大国として
覇権的な地位を確立するということになるかも知れないのです。
カール=シュミット、水野和夫、ロドルフ=デュランらは、空間の拡大や蒐集、そして海賊資本主義。
これら歴史の中で起こってきた事象について彼らは議論をしてきました。それと同じ事象が将来、
宇宙という周辺空間を舞台にもう1度繰り返されることになるのです。
歴史的に人類は中央から周辺に向かい、金・銀・胡椒・茶・美術品・労働力などを蒐集することで
富をつくってきました。そして真っ先に周辺に向かうのは、野蛮で勇敢な海賊たちであり、
継続的な果実を得るのはリスクを分けあって出資金を出す資本家達です。
地球上から周辺がなくなり、拡大が止まった後、サイバースペースという周辺空間を
アメリカは作り出し、この空間での覇権を握りました。
しかし、ここで宇宙という新しい周辺があることに気がついたのが、そのアメリカの海賊達です。
イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、ラリー・ペイジ、日本では堀江貴文などです。
彼らはサイバースペースを支配し、そこから得た資金を使い、宇宙という新たな周辺に
漕ぎ出そうとしています。
今回、月面裏に着陸した中国の探査機は単に中国の技術力を誇示したものではなく、
中国が国家として、宇宙という新たな周辺の覇権獲得に向けて、海賊国家及び資本家として
名乗りを挙げたという、大きな歴史的な転換点なのです。
このような、壮大なスケールと歴史観、深淵で明確な将来ビジョンとを持つ異形の国家中国に、
我々はどのような姿勢で相対するのか。
我々の想像力・構想力・胆力が問われています。
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