前回
次に決裁のやり方と体裁を見ていきましょう。
決裁のやり方は決まっています。
基本的にはワードなどで文書で書いてプリントアウトして申請し、それを判断すべき立
場の人間が、承認する場合、ハンコかサインを日付入りでする、というやり方になって
います。これはデジタル化(オンライン化)されていても同じです。文書がネットワー
ク経由で回ってきて、ブラウザ等で閲覧して、問題ないと判断すれば、クリックしてデ
ジタル署名(=デジタルのハンコ捺印)をします。
たまに、デジタル化されているのに「プリントアウトして持って来い」というオジサン
がいますが、それは同情しつつ寛大な気持ちでプリントアウトして持っていってあげま
しょう。
そして、体裁は「文章/必要項目」+「ハンコを押す欄」というのがその基本的な
体裁です。文章や列挙してある項目を読んでその内容が会社もしくは組織としてOKで、
自分の立場から合理的な説明がつくものであるなら、自分のハンコを押す、というもの
です。いま話題になっている例の財務省近畿財務局の決裁文書も同じです。書いてある
ことの中身がOKだったら、ハンコを押すということをしています。
そして具体的な決裁文書のフォーマットですが、とてもシンプルでいろいろ自分で書け
るようになっています。項目はこのような感じで、ほぼ大枠だけあって、あとはフリー
記述ということになります。
1.件名:
2.起案日:
3.起案者:
4.管理番号:
5.内容:
6.相手先:
7.金額:
8.サイン欄:
先に例に出した、決裁の1類型である交際費や交通費などは専用フォーマットがほとんで、
物品購入の場合も専用フォーマットを使うこともあります。ですので逆にそれらが「決裁
行為」であることが忘れられがちですが、本格的な決裁はフリー記述がほとんどです。
5の内容以外は、だいたい自動的に決まるかと思います。
他は小さな枠だったり、一行しかないですが、この5の部分だけは大きなスペース
(だいたい、全体の2/3くらい)になっていてフリー記述が出来るようになっています。
この5に書くことは
(1)何を判断する決裁か
(2)概要
(3)特記事項
この3つだけです。
(1)何を判断する決裁か
判断して欲しい事柄は何かを端的に頭書きとして書きます。
例えば
「新アプリの検証を目的に、スマートフォンを購入してよいか伺います」
などと簡潔に一文で書きます。
「〜を目的に、〜してよいか伺います」がお約束のフォーマットです。
自分がこの決裁で決裁者に何を判断してもらいたいのか、自分でキチンと理解して
明確にしていないと、意外と書けません。この部分はダラダラと書かないで
決裁者が「これから私は何の判断を迫られるのだろうか」と覚悟させるよう
簡潔に書くところです。
普段、上司と話す時、いきなり「料金100万円で決めていいですかね」などとは
言わないですよね。必ず「先日の●●社との新規取引の件ですが」と前振りして
上司にその案件を思い出させてから「料金100万円〜」と言うと思います。
それと全く同じです。まずは決裁者にどの案件について、何の判断を求めている
のかを書いて、宣言しておくことが必要です。
(2)概要
今回の案件の概要を書くのですが、フリーフォーマットですので、背景や経緯も
含めつつ、こちらも簡潔に書きます。特に本件と何か関連している案件が
あれば、それも書きます。
例えば背景と経緯はこんな感じです。
「現在、●●社との■■アプリプロジェクト(決裁管理番号01-001)を進めて
いるが、開発中にスマホ新機種が複数機種発売された。その為、検証用として
次の端末が必要となった」
この例で「決裁管理番号01−001」と書いてあるのは、このプロジェクト自体を開始
する時に承認を得た決裁文書の参照先を明記して、そもそもが、承認を得たプロジェ
クトを進めている中で、必要となったスマホなんですよ、ということをわかりやすく
書いているわけです。
・機種:Xperia XZ
・選定理由:アプリの動作検証の際、画面解像度が1920×1080である必要があった為
・金額:80,000円(税抜き)+6,400円(消費税) 合計86,400円
・購入先:格安電気秋葉原店
・購入先選定理由:価格ドットコムで調べたところ、最も安価であった為
・端末管理者:祖兄太郎
・添付資料:価格ドットコムプリントアウト
という感じです。
どんなプロジェクトを進めていて、なぜこの端末を買う必要があるのかを
客観的にそして誤解が起きないように記入します。何も知らない人があとから読んだ時
解釈に幅が生じないようにして書いていきます。
例えば、端末は複数発売されたのに、なぜXperiaXZだったのか、という理由ですが、
何も知らない人が、先入観なく後から読んだ時に、理由が書いてなければ
「デザインがカッコいい」とか「自分が欲しかったから」選んだのか?と曲解する可能性が
出てしまいます。そういう事を思われないように1つ1つ、重なりなく漏れなく書いて
行く必要があります。
今回、アプリ動作検証で使うのであれば、そのアプリ検証の要件が
こうなって
・1920×1080サイズの画面
・OSはAndroid
・CPUはMSM8996
・メモリが3GB
・一番売れている(=多くの人が持っている)
いるから、この機種にしました。
そして、この機種を買うにあたっても、価格ドットコムで価格を比較して最安値の
業者から買っています、
と書いてあれば、あとから誰が読んでも、この正当性を否定することは出来ません。
しかしながら、あまりに細かく書きすぎると承認する側が読みきれませんので、
ある程度、抽象化したり、詳細は添付とリファー先を書いていくようにしていきます。
例えば、検証を行うアプリについて、細かく説明を書き始めたら、読む方は読みきれ
ませんが、もしかして後からその部分が気になる人も出てくるかもしれませんので、
添付資料でアプリ概要をつけておけば、完璧です。
そして最後に
(3)特記事項
を書きます。
ここには、普段ではあまりないことをやる場合にそのことについて書くセクションです。
例えば、今回購入するスマホですが、検証のために購入したらアプリ開発会社に貸し出す
必要があるとしたら、それを書いておきます。
「なお、本端末はアプリ開発を委託している株式会社亜府里にアプリ納品時まで無償で
貸与することとする」
とか書いておきます。自社で買った端末は普通、当然、自社に置いて管理します。
しかし今回は、特別、かつ正当な理由がありますので、包み隠さず特記事項として
予め書いておきます。
もし、貸与している端末を委託先が紛失した場合、決裁に書いてあれば「しょうがない」
ですむかもしれませんが、書いてないと「勝手に貸して、失くしやがって」と
八つ当たりのような非難を受ける可能性が出てきます。
ですので、普通ではあまりないことや、特別な条件などがある場合は、必ず特記事項に
書いておきましょう。
つづく
シリーズもの1
次に決裁のやり方と体裁を見ていきましょう。
決裁のやり方は決まっています。
基本的にはワードなどで文書で書いてプリントアウトして申請し、それを判断すべき立
場の人間が、承認する場合、ハンコかサインを日付入りでする、というやり方になって
います。これはデジタル化(オンライン化)されていても同じです。文書がネットワー
ク経由で回ってきて、ブラウザ等で閲覧して、問題ないと判断すれば、クリックしてデ
ジタル署名(=デジタルのハンコ捺印)をします。
たまに、デジタル化されているのに「プリントアウトして持って来い」というオジサン
がいますが、それは同情しつつ寛大な気持ちでプリントアウトして持っていってあげま
しょう。
そして、体裁は「文章/必要項目」+「ハンコを押す欄」というのがその基本的な
体裁です。文章や列挙してある項目を読んでその内容が会社もしくは組織としてOKで、
自分の立場から合理的な説明がつくものであるなら、自分のハンコを押す、というもの
です。いま話題になっている例の財務省近畿財務局の決裁文書も同じです。書いてある
ことの中身がOKだったら、ハンコを押すということをしています。
そして具体的な決裁文書のフォーマットですが、とてもシンプルでいろいろ自分で書け
るようになっています。項目はこのような感じで、ほぼ大枠だけあって、あとはフリー
記述ということになります。
1.件名:
2.起案日:
3.起案者:
4.管理番号:
5.内容:
6.相手先:
7.金額:
8.サイン欄:
先に例に出した、決裁の1類型である交際費や交通費などは専用フォーマットがほとんで、
物品購入の場合も専用フォーマットを使うこともあります。ですので逆にそれらが「決裁
行為」であることが忘れられがちですが、本格的な決裁はフリー記述がほとんどです。
5の内容以外は、だいたい自動的に決まるかと思います。
他は小さな枠だったり、一行しかないですが、この5の部分だけは大きなスペース
(だいたい、全体の2/3くらい)になっていてフリー記述が出来るようになっています。
この5に書くことは
(1)何を判断する決裁か
(2)概要
(3)特記事項
この3つだけです。
(1)何を判断する決裁か
判断して欲しい事柄は何かを端的に頭書きとして書きます。
例えば
「新アプリの検証を目的に、スマートフォンを購入してよいか伺います」
などと簡潔に一文で書きます。
「〜を目的に、〜してよいか伺います」がお約束のフォーマットです。
自分がこの決裁で決裁者に何を判断してもらいたいのか、自分でキチンと理解して
明確にしていないと、意外と書けません。この部分はダラダラと書かないで
決裁者が「これから私は何の判断を迫られるのだろうか」と覚悟させるよう
簡潔に書くところです。
普段、上司と話す時、いきなり「料金100万円で決めていいですかね」などとは
言わないですよね。必ず「先日の●●社との新規取引の件ですが」と前振りして
上司にその案件を思い出させてから「料金100万円〜」と言うと思います。
それと全く同じです。まずは決裁者にどの案件について、何の判断を求めている
のかを書いて、宣言しておくことが必要です。
(2)概要
今回の案件の概要を書くのですが、フリーフォーマットですので、背景や経緯も
含めつつ、こちらも簡潔に書きます。特に本件と何か関連している案件が
あれば、それも書きます。
例えば背景と経緯はこんな感じです。
「現在、●●社との■■アプリプロジェクト(決裁管理番号01-001)を進めて
いるが、開発中にスマホ新機種が複数機種発売された。その為、検証用として
次の端末が必要となった」
この例で「決裁管理番号01−001」と書いてあるのは、このプロジェクト自体を開始
する時に承認を得た決裁文書の参照先を明記して、そもそもが、承認を得たプロジェ
クトを進めている中で、必要となったスマホなんですよ、ということをわかりやすく
書いているわけです。
・機種:Xperia XZ
・選定理由:アプリの動作検証の際、画面解像度が1920×1080である必要があった為
・金額:80,000円(税抜き)+6,400円(消費税) 合計86,400円
・購入先:格安電気秋葉原店
・購入先選定理由:価格ドットコムで調べたところ、最も安価であった為
・端末管理者:祖兄太郎
・添付資料:価格ドットコムプリントアウト
という感じです。
どんなプロジェクトを進めていて、なぜこの端末を買う必要があるのかを
客観的にそして誤解が起きないように記入します。何も知らない人があとから読んだ時
解釈に幅が生じないようにして書いていきます。
例えば、端末は複数発売されたのに、なぜXperiaXZだったのか、という理由ですが、
何も知らない人が、先入観なく後から読んだ時に、理由が書いてなければ
「デザインがカッコいい」とか「自分が欲しかったから」選んだのか?と曲解する可能性が
出てしまいます。そういう事を思われないように1つ1つ、重なりなく漏れなく書いて
行く必要があります。
今回、アプリ動作検証で使うのであれば、そのアプリ検証の要件が
こうなって
・1920×1080サイズの画面
・OSはAndroid
・CPUはMSM8996
・メモリが3GB
・一番売れている(=多くの人が持っている)
いるから、この機種にしました。
そして、この機種を買うにあたっても、価格ドットコムで価格を比較して最安値の
業者から買っています、
と書いてあれば、あとから誰が読んでも、この正当性を否定することは出来ません。
しかしながら、あまりに細かく書きすぎると承認する側が読みきれませんので、
ある程度、抽象化したり、詳細は添付とリファー先を書いていくようにしていきます。
例えば、検証を行うアプリについて、細かく説明を書き始めたら、読む方は読みきれ
ませんが、もしかして後からその部分が気になる人も出てくるかもしれませんので、
添付資料でアプリ概要をつけておけば、完璧です。
そして最後に
(3)特記事項
を書きます。
ここには、普段ではあまりないことをやる場合にそのことについて書くセクションです。
例えば、今回購入するスマホですが、検証のために購入したらアプリ開発会社に貸し出す
必要があるとしたら、それを書いておきます。
「なお、本端末はアプリ開発を委託している株式会社亜府里にアプリ納品時まで無償で
貸与することとする」
とか書いておきます。自社で買った端末は普通、当然、自社に置いて管理します。
しかし今回は、特別、かつ正当な理由がありますので、包み隠さず特記事項として
予め書いておきます。
もし、貸与している端末を委託先が紛失した場合、決裁に書いてあれば「しょうがない」
ですむかもしれませんが、書いてないと「勝手に貸して、失くしやがって」と
八つ当たりのような非難を受ける可能性が出てきます。
ですので、普通ではあまりないことや、特別な条件などがある場合は、必ず特記事項に
書いておきましょう。
つづく
シリーズもの1