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鈍いなまくら刀で社会を斬る!

デザイン・サッカー・世の中など思ったことを(出来るだけ)冷静に、(極力)論理的に

決裁とは何か(シリーズもの10)

2018年06月12日 01時05分19秒 | 決裁・稟議
前回より

稟議について

決裁が交際費や交通費、備品の購入ではなく、もっと大きい案件の場合「稟議」とい
う方法を使います。以前、決裁は「文章/項目」+「ハンコを押す欄」というのがそ
の基本的な体裁の文書だ、と書きましたが、稟議も同じような体裁で見た目の違いは
稟議の場合は「ハンコを押す欄」が沢山あるということです。

以前書いた決裁のこれらの項目の
1.件名:
2.起案日:
3.起案者:
4.管理番号:
5.内容:
6.相手先:
7.金額:
8.サイン欄:

最後の8.サイン欄:が、沢山あると思っていただければ良いです。一辺が2.5cmく
らいの正方形のサイン欄(捺印欄)が並んでいるイメージです。

色々な部署の決裁権者が目を通して、この案件が自分の立場から問題ない案件なのか、
その案件を実施するにあたって合理的な判断が出来ているか、そしてその合理的な判
断の説明がこの稟議文書(決裁文書)の中に論理的に表現出来ているのか、を見るわ
けです。そして問題がなければ「OK」とハンコ(日付も入れて)を押すわけです。
サインの場合も稀にありますが、日本企業は昔からハンコ文化ですのでハンコが多い
です。これはカルチャーとしか言いようがないのと、詳細は別に譲りますが、そもそ
もハンコでなくサインを認めるような「先進的な」(苦笑)企業では、稟議という意
思決定システム自体が存在していないことが多いです。事業部のトップや取締役のトッ
プダウンで、組織の意思決定上もサイン一発で決まってしまうことも多いです。

勿論、先述した通り、オンライン化されている稟議システムも世の中には多数ありま
すし、普通はオンライン稟議が大部分かと思います。この場合のハンコとサインとい
うのは象徴だと思っていただければと思います。

そもそも稟議という行為を何故やるのかというと、先述した内容とかぶるところはあ
りますが、公務員・会社員に関わらず、組織としての大きな意思決定のプロセスを明
確に、過不足なく動かない紙などに証拠として残す、ということをするためです。
それをやっておくことで、組織の中でこの案件を担当者が勝手に実行したのでなく、
組織としてその時点での合理的な判断のもと意思決定し、実行した、ということの証
拠書類となります。

この証拠書類があれば、その時点の意思決定が論理的に正しいことを証明出来るので
す。例えばその時点では、会社のマネジメント全員が「行ける」と判断したことでも、
大失敗するプロジェクトもあるわけです。しかしながら、その時点では全員で考えて
色々と検討した結果論理的に考えて「行ける」と判断した記録が残っているというこ
とは、大事な証拠となるのです。

そしてその論理的な正しさを官公庁の場合は国民に、会社の場合は株主に説明する
根拠(証拠)資料となるという訳です。稟議で意思決定したことが、後に大成功をし
たとしても、大失敗したとしても、結果はどうあれ「やる」と決めた時にロジカルに
考え、合理的に判断をした、ということを、組織のステークホルダー(国民や株主)
に、後から検証可能なカタチで意思決定の記録を残す行為が稟議というものなのです。

そう考えると、この稟議を後から書き換える、改ざんすることの罪深さがわかると
思います。後からそのプロジェクトの結果を見た(例えば失敗した)後に、当時の
稟議を書き換えて「私はイマイチって思っていましたが、しょうがなく賛成しました」
とかにしてしまったら、株主からの付託を受けて行っている経営の根本が崩壊します。

それをやってしまうと、何を信じて良いのか、組織としてよって立つ足場が完全になくなり
検証可能な積み上げが無くなってしまうのです。経営は因果関係を作り出すことです。
因果関係を示す証拠の1が稟議なのですから、決裁文書を後から書き換えるということ
は絶対にやってはいけません。それは組織(以下、官公庁・民間企業の両者を指す)を
裏切り、欺く行為です。

ちょうど、先日ロシアワールドカップの直前になって、ハリルホジッチ監督をクビにすると
いう事がありました。これは改ざんとは関係ありませんが、果たしてロジカルに考えて合理的
に判断したという記録が残っているのでしょうか。協会の会長がエイヤーで感覚的に決めて
しまったのではないかと推測します。何故なら会長は記者会見で「選手との信頼関係が多少
薄れてきた」という信じられないくらい曖昧な理由しか語らなかったからです。

この曖昧な稟議や決裁文書に残らない、ユルい決断が監督更迭という重大な場面で行われて
しまった為、ハリルホジッチ監督下の日本代表のこの3年間は検証不可能となりました。
積み上げてきたものに、何が意味があり、何が意味がなかったのか、全くわからないまま、
何も記録がないまま判断が下されました。因果関係をたどる1つの手がかりが失われて
しまったのです。

つづく

その1

決裁とは何か(シリーズもの9)

2018年06月02日 16時57分31秒 | 決裁・稟議
前回

承認のポイントは「自分の立場から合理的な説明がつく」というところにあります。
組織では必ず決裁権限が職位によって決まっています。当然、係長、課長、部長、
事業部長では権限が違いますし、立場が違います。決裁は自分の立場から見える
景色の中で、合理的な説明がつくものについて承認を行うのです。

例えば決裁権限は

係長:なし
課長:交通費・勤怠・10万円までの経費支出
部長:上記に加え、国内出張・30万円までの経費支出、NDA締結
事業部長:上記に加え、交際費・海外出張・1,000万円までの経費支出、
     50万円までの不良債権処理、契約締結
取締役:上記に加え、3,000万円までの経費支出、100万円までの不良債権処理
代表取締役:上記に加え、3,000万円以上の経費支出、100万円以上の不良債権処理、
      特に重要な契約締結
取締役会決議:1億円を超える経費支出、1,000万円を超える不良債権処理、
       経営に係る重要な契約締結

このような職位ごとに細かく決めてある場合もあれば、スタートアップしたばかりの
ベンチャー企業などはすべて代表取締役の決裁ということもあります。

考え方のセオリーとしては、適切な職位には適切な権限と給与を与えるということです。
そうでないと、見ている景色がいびつに見えてしまい適正な承認行為ができなくなって
しまいます。

私が子どもの頃、母が「最高裁判所の判事とかは、給料高いのよ」と言っていました。
「何で?エラいから?」という問いに「ある程度の給料をあげていないと、お金の為に
買収されたりして法律を捻じ曲げる可能性があるから」と言っていたのを思い出します。
これも職位とそれに見合った権限と対価という話です。

大企業はだいたい権限は昔から決まっていて、そのせいで、だいたいが柔軟な判断が
出来ず硬直した組織になっていく、というのが常です。

逆にベンチャー企業の内部統制で一番気をつけるべきはこの決裁権限です。ベンチャー
の場合は、創業者であるCEOに権限が集中していることが良くあります。全ての決裁を
CEOが見ることが多いですし、最初はそれで大丈夫です。私の経験では、50人くらいの
組織まではCEOが全部見る、で対応出来ます。しかし50人を超えると、権限を委譲して
いかないと回らなくなります。

このあたりの組織と権限の付与については、シリアルアントレプレナーや起業して会社を
潰したことのある人などにアドバイスを貰うとよいと思います。どんな業種のベンチャー
でも、組織と権限付与について、ノウハウはほぼ同じですので、同じ失敗や苦労をした
人は沢山います。悩まずに、自分達の事例が特殊な事例であるとか考えず、とっとと
先達にアドバイスを求めに行きましょう。

つづく

その1

決裁とは何か(シリーズもの8)

2018年05月28日 23時37分22秒 | 決裁・稟議
前回

次に決裁のやり方と体裁を見ていきましょう。

決裁のやり方は決まっています。
基本的にはワードなどで文書で書いてプリントアウトして申請し、それを判断すべき立
場の人間が、承認する場合、ハンコかサインを日付入りでする、というやり方になって
います。これはデジタル化(オンライン化)されていても同じです。文書がネットワー
ク経由で回ってきて、ブラウザ等で閲覧して、問題ないと判断すれば、クリックしてデ
ジタル署名(=デジタルのハンコ捺印)をします。

たまに、デジタル化されているのに「プリントアウトして持って来い」というオジサン
がいますが、それは同情しつつ寛大な気持ちでプリントアウトして持っていってあげま
しょう。

そして、体裁は「文章/必要項目」+「ハンコを押す欄」というのがその基本的な
体裁です。文章や列挙してある項目を読んでその内容が会社もしくは組織としてOKで、
自分の立場から合理的な説明がつくものであるなら、自分のハンコを押す、というもの
です。いま話題になっている例の財務省近畿財務局の決裁文書も同じです。書いてある
ことの中身がOKだったら、ハンコを押すということをしています。

そして具体的な決裁文書のフォーマットですが、とてもシンプルでいろいろ自分で書け
るようになっています。項目はこのような感じで、ほぼ大枠だけあって、あとはフリー
記述ということになります。

1.件名:
2.起案日:
3.起案者:
4.管理番号:
5.内容:
6.相手先:
7.金額:
8.サイン欄:

先に例に出した、決裁の1類型である交際費や交通費などは専用フォーマットがほとんで、
物品購入の場合も専用フォーマットを使うこともあります。ですので逆にそれらが「決裁
行為」であることが忘れられがちですが、本格的な決裁はフリー記述がほとんどです。

5の内容以外は、だいたい自動的に決まるかと思います。
他は小さな枠だったり、一行しかないですが、この5の部分だけは大きなスペース
(だいたい、全体の2/3くらい)になっていてフリー記述が出来るようになっています。

この5に書くことは
(1)何を判断する決裁か
(2)概要
(3)特記事項
この3つだけです。

(1)何を判断する決裁か
判断して欲しい事柄は何かを端的に頭書きとして書きます。
例えば
「新アプリの検証を目的に、スマートフォンを購入してよいか伺います」
などと簡潔に一文で書きます。
「〜を目的に、〜してよいか伺います」がお約束のフォーマットです。
自分がこの決裁で決裁者に何を判断してもらいたいのか、自分でキチンと理解して
明確にしていないと、意外と書けません。この部分はダラダラと書かないで
決裁者が「これから私は何の判断を迫られるのだろうか」と覚悟させるよう
簡潔に書くところです。

普段、上司と話す時、いきなり「料金100万円で決めていいですかね」などとは
言わないですよね。必ず「先日の●●社との新規取引の件ですが」と前振りして
上司にその案件を思い出させてから「料金100万円〜」と言うと思います。
それと全く同じです。まずは決裁者にどの案件について、何の判断を求めている
のかを書いて、宣言しておくことが必要です。

(2)概要
今回の案件の概要を書くのですが、フリーフォーマットですので、背景や経緯も
含めつつ、こちらも簡潔に書きます。特に本件と何か関連している案件が
あれば、それも書きます。

例えば背景と経緯はこんな感じです。

「現在、●●社との■■アプリプロジェクト(決裁管理番号01-001)を進めて
 いるが、開発中にスマホ新機種が複数機種発売された。その為、検証用として
 次の端末が必要となった」

この例で「決裁管理番号01−001」と書いてあるのは、このプロジェクト自体を開始
する時に承認を得た決裁文書の参照先を明記して、そもそもが、承認を得たプロジェ
クトを進めている中で、必要となったスマホなんですよ、ということをわかりやすく
書いているわけです。

・機種:Xperia XZ
・選定理由:アプリの動作検証の際、画面解像度が1920×1080である必要があった為
・金額:80,000円(税抜き)+6,400円(消費税)  合計86,400円
・購入先:格安電気秋葉原店
・購入先選定理由:価格ドットコムで調べたところ、最も安価であった為
・端末管理者:祖兄太郎
・添付資料:価格ドットコムプリントアウト

という感じです。

どんなプロジェクトを進めていて、なぜこの端末を買う必要があるのかを
客観的にそして誤解が起きないように記入します。何も知らない人があとから読んだ時
解釈に幅が生じないようにして書いていきます。

例えば、端末は複数発売されたのに、なぜXperiaXZだったのか、という理由ですが、
何も知らない人が、先入観なく後から読んだ時に、理由が書いてなければ
「デザインがカッコいい」とか「自分が欲しかったから」選んだのか?と曲解する可能性が
出てしまいます。そういう事を思われないように1つ1つ、重なりなく漏れなく書いて
行く必要があります。

今回、アプリ動作検証で使うのであれば、そのアプリ検証の要件が

こうなって

・1920×1080サイズの画面
・OSはAndroid
・CPUはMSM8996
・メモリが3GB
・一番売れている(=多くの人が持っている)

いるから、この機種にしました。
そして、この機種を買うにあたっても、価格ドットコムで価格を比較して最安値の
業者から買っています、

と書いてあれば、あとから誰が読んでも、この正当性を否定することは出来ません。

しかしながら、あまりに細かく書きすぎると承認する側が読みきれませんので、
ある程度、抽象化したり、詳細は添付とリファー先を書いていくようにしていきます。
例えば、検証を行うアプリについて、細かく説明を書き始めたら、読む方は読みきれ
ませんが、もしかして後からその部分が気になる人も出てくるかもしれませんので、
添付資料でアプリ概要をつけておけば、完璧です。

そして最後に

(3)特記事項
を書きます。
ここには、普段ではあまりないことをやる場合にそのことについて書くセクションです。
例えば、今回購入するスマホですが、検証のために購入したらアプリ開発会社に貸し出す
必要があるとしたら、それを書いておきます。

「なお、本端末はアプリ開発を委託している株式会社亜府里にアプリ納品時まで無償で
貸与することとする」

とか書いておきます。自社で買った端末は普通、当然、自社に置いて管理します。
しかし今回は、特別、かつ正当な理由がありますので、包み隠さず特記事項として
予め書いておきます。

もし、貸与している端末を委託先が紛失した場合、決裁に書いてあれば「しょうがない」
ですむかもしれませんが、書いてないと「勝手に貸して、失くしやがって」と
八つ当たりのような非難を受ける可能性が出てきます。
ですので、普通ではあまりないことや、特別な条件などがある場合は、必ず特記事項に
書いておきましょう。

つづく

シリーズもの1

決裁とは何か(シリーズもの7)

2018年05月26日 14時03分46秒 | 決裁・稟議
前回

そして、発注方法と納期と適切な価格が判明したら、実際に発注です。

当たり前ですが、発注は決裁の承認が下りる前にやっては絶対にいけません。

いくら家電量販店から「急いで」「この価格は明日まで」とせかされても、発注は必ず
承認の後です。「どうせ承認おりるから」と発注日付が承認日付より前、ということが、
もし監査の時などに発覚したら、あなたが勝手に発注した、あなたが会社の金を勝手に
使ったということで、業務上横領の刑事罰に問われる可能性が出てきます。明後日にな
ると価格が上がり、会社が余計にお金を払わなければならないとわかっていても承認前
の勝手な発注は絶対にしてはいけません。

話を戻して8万円のスマホと2万円のプリンターですが、カタチのある物品ですから、会
社の所有物として管理する必要がありますので、情報システム部門(情シス)から管理
番号を振られて、テプラでかっこ悪いシールを貼られたりします。

会計的に言うと、8万円と2万円ですから消耗品として、経費として一発で落とすことが
出来ます。ただ、iPhone等の高級(?)スマホになると、10万円を超えてきますので、
償却資産扱いになり、そうなると場合によって6年で償却とか、一括で3年償却とか、そ
ういうこともあるかも知れません。

償却とは簡単に言うと、10万円を6年で償却という場合、
10万円÷72ヶ月(6年)=1,388円。
毎月1,388円を経費(費用)として売上からひいていく。ということになります。
キャッシュは買った瞬間に1回で出ていきますが、それをまとめて1回の費用と考えて
計上してしまうと経営状況が正確に把握出来なくなってしまいますので、分割して、
使った分だけ費用化していこうと考えるのです。

これは複式簿記の基本的な考え方なので、興味のある方は複式簿記を勉強してみると良い
かもしれません。

例えば、何か10万円の機器を買った時、その日に1回使って10万円分の価値がなくなった
ので使い捨て(=価値が0円)ということは、普通はありえませんので、その機器が6年く
らいは使えるだろうから6年間使えば6年後には古くなって価値も0円になる、つまり6年
(72ヶ月)で毎月毎月ちょっとずつ価値が目減りしていく、という考え方です。この6年
というのは使い続けられる年数ですので「耐用年数」という正式名前がついていて国税庁
が決めています。

よく区役所や古い事務所で使ってる灰色っぽい金属の机とか椅子は15年、パソコンは4年、
軽自動車は4年、自転車は2年、鉄筋コンクリートの建物は50年とかです。

今回例に上げたスマートフォン、スマホは、お役所が新しい技術に対応出来ていないという
よくあるパターンで、実は正式なところでは国税庁は耐用年数を掲示していません。
一般で使うリヤカーは4年、業務用のリヤカーは2年と割と細かく決まっていますがスマホ
は決まっていません。ですので現状は税理士や監査法人が場合によって解釈し、実例を積み
重ねているという状態です。

スマホは、小さなコンピュータであると解釈すれば、パソコンと同等であると考えて4年。
通信機器として考えるなら、電話設備その他の通信機器で、設備以外のもので10年。
カメラと解釈するのであれば、光学機器で5年。
音楽を聴く為の機器であれば、音響機器で5年。

と、色々な解釈が出来るのが実情なのですが、どちらにせよ、我々の今の常識から考えると
「そんな長く使わねーよ」だと思います。
パソコンの4年でも長い。通信機器の10年などあり得ないかと思いますので、実情に合わ
せるのなら3年に設定するのがReasonableかと思いますよ、国税庁さん。
ちなみにこれらの情報は国税庁のホームページに載っていますので見てみると面白いです。

みなさんが大企業にいるようでしたら、そのスマホさえなくしたりせず、キチンと管理さえ
しておけば、償却とかは大して気にしなくて良いですが、小さな企業や個人事業主の人は、
会計上の償却については注意が必要です。税理士とよく相談しましょう。

つづく

シリーズもの1

決裁とは何か(シリーズもの6)

2018年05月24日 01時31分17秒 | 決裁・稟議
前回の続きで

6.支払い方法(立替え・請求書・現金)

この部分は支払いの方法を書きます。
自分のクレジットカードや現金で立替え払いや、もし口座があるようなら法人取引の請求書払いに
してもらったり、また、アドバンスで経理から現金を貰って買いに行く等の支払い方法を決めます。
普通は自分のカードで立替え払いが多いですが、先ずは経理にきいてみれば良いと思います。

ここまで記入したところで、発注方法についても確認をしましょう。
発注方法は色々あります。

業者側で指定の発注書があって、そこに会社の契約印を捺印して発注するという場合や
表見代理を適用して、管理者の捺印でも良いという場合もあります。
組織によっては、決裁文書に発注書を必ず付けて出すという場合や、発注書は別途
後から経理に提出して経理から発注書に捺印をしてもらうとか、
ネットでコーポレートカードで買うので、決裁完了後、商品の支払い情報で
コーポレートカードの情報を入力して購入するとか、パターンは様々です。

そして発注前に「2.いつ(発注日と納品日)」は必ず確認をしてください。
この納品日については、会計年度をまたぐ付近では特に気をつけなければなりません。
プリンターを例にしてみます。

「お、今期予算余ってるじゃん。デスクの横に置けるモノクロプリンター買おう」
「いいっすねー」

なんて素敵な会話をした本日、3月28日。相見積もすぐに取れて、
「じゃ、最安値2万円の有限会社迅速商会に発注しますか」
「そういえば納品は4月2日って言ってました」
ということになると、これ、来期予算で購入することになります。

今期の余ってる予算は使うことにはなりません。
もし現金で3月28日に先払いで払って、4月2日に納品でも同じです。
リアルなキャッシュ(現金)は2万円、今期で支出していますが、
その品物を実際に使い始められるのは4月2日ですので、計上は来期になります。

いや、別に来期の予算に2万円のプリンターを買うって予定しているのであれば良いです。
でも、今期の予算が余ったから買うっていうことじゃなかったでしたっけ??
そうであれば、なんとしても3月31日までに納品してもらうように業者と交渉しましょう。
「今期予算なんで3月31日までに納品されなければ買いません」とか言うと、
最初の4月2日は何だったんだというくらい、業者はダッシュで29日とかに持って来てくれる
ことが多いです。

余談になりますが、こういう年度末の買物は、絶対に厳密にやらなければなりません。
税務署や国税は、確実に狙ってきます。税務調査に入った時、本当に29日納品されているか
反面調査も当たり前のように普通にやります。反面調査とは、例えば発注側に税務調査に
入っている際に、税務上怪しい取引があったら、受注側にも当該取引について調査に
入ることを反面調査と言います。勿論、その反対もあって、その場合も同じく反面調査と言います。
税金のチョロまかしと株のインサイダー取引は監督官庁が本気出したら絶対に
バレますのでやらないのが利口です。

更に余談ですが、2万円の期ズレの発注・納品を国税の調査が入った際の「お土産」として
あえて置いておく、という高度なことをやる経理や財務担当もいます。
このあたりは、純粋な皆さんは知らなくてい良い事ですので、これ以上書きません。

つづく

シリーズもの1

決裁とは何か(シリーズもの5)

2018年05月23日 00時27分30秒 | 決裁・稟議
続けて

2.いつ(発注日と納品日)
3.どこで(会社名・店名・住所)
4.何を買う(商品名・個数・型番)
5.いくらかかる

ですが、商品の金額や、その組織のルールにも依存しますが、相見積は取ったほうが良いです。
最近は、価格比較サイトもありますので、その比較サイトをプリントアウトして
添付することもよくあります。これはその商品をその時の最安値で買っているか、
つまり、会社のお金(費用)を効率的に使っているかどうかを客観的に見るために必要な
ことです。これも一種の相見積になるので、これでも構いません。

全く同じ商品が、オフィス近くの家電量販店では8万円なのに、ネット(オンラインショッ
ピング)では送料込み7万円であれば、当然ネットで買うべきです。会社の費用で買うのです
から、同じ商品であれば当然安い方が良いわけです。

ですのであなたがどのような組織にいて、何を発注をするにせよ、相見積もり相当の作業として
最低限やるのは価格比較サイトをプリントアウトすることになります。

そして、出来れば時間がかかりますが複数社から見積もりを取り寄せて相見積もりをとっておく。
更に各社に対して価格交渉をする、ということまで出来ればベストです。
勿論、この相見積もりと価格交渉については、購入する商品価格と、かける手間のバランスを
考える必要があります。1,000円のものを買うのに、相見積を取って交渉に1時間も時間を
かければ、あっという間に時給分をオーバーすることになりますので、意味がありません。

一方で、価格を比較して安いからそれで全てOKというわけではありません。
家電量販店とくらべて1万円安いネットで買った場合、実は商品到着まで5営業日かかるとなると
商品を手にするのは来週になってしまいます。もし、明日にでもすぐ使う必要があるのであれば、
1万円高くてもオフィス近くの家電量販店に走って買いに行く方が、組織としては良いわけです。
明日必要なものを、安いからと言って来週に貰っても、全く意味はなく、それなら買わない方が
マシ、ということになります。

そういう場合は、決裁文書に「ネットショップで1万円安い見積もりが出たが、納期が間に合わ
ないため、家電量販店で購入することとする」とかその時点での判断を書いておくのです。
そうすれば、後から誰が見ても、その時点での判断は正しいということになりますし、
逆にこれを書いておかないと、後から問題となる場合があります。
というのは、後から見ると、時間軸、物事の前後関係がわからず、「何で安い方で買わない」
「ポイントを付けたかったから家電量販店で買ったのでは?」などと勘違いされる場合が結構
あります。ですので、決裁文書にその時の判断を書いておくことで、自分の身が守れ、
誰も嫌な思いをせずに済むのです。

スマホを買う場合の、この「4.何を買う(商品名・個数・型番)」「5.いくらかかる」は、
スマホを端末として購入するのでしたら特に問題はありませんが、気をつけなければならないのは
端末+SIMの場合、つまりスマホに通信契約が付随しているものを買わざるを得ない場合は、
気をつけなければなりません。スマホ以外でも、例えば毎月保守契約を締結しなければならない
等の場合も同じです。

こういう場合、契約者を誰にするのかという話と、毎月の通信料・通話料・保守料をどう払うのか、
という話になってきます。
会社の費用で会社の利益の為に購入するものですから、当然、名義は会社名義・法人名義になりますが、
法人名義となると、申込み用紙には会社の契約印が必要になります。そうなると、決裁の方法や
経理への申請方法が変わってくることもあり、毎月の引き落としをコーポレートカード
(法人名義のクレジットカード)で行う為に別途社内での手続きが必要になったりします。

一般的に会社というところでは一度契約すると継続して何か費用が発生するというものは、
承認のハードルが高いと考えておくと良いでしょう。
何故かと言うと、継続して支払うものについては管理がきかなくなることが多々あるからです。
毎月毎月、売上に関係なく、ほぼ決まった金額が出ていく。
挙句、これが必要だと考えていた担当者が、異動や退職で不在になってしまい、元々なんの為にこれを契約
したのか不明になって、5〜6年後に誰かが「これ、いらなくね?」と言い出すまで、惰性でずっと払い続ける
ということがよく起こります。これ、本当によくあります。

ある程度経験のある管理者(決裁の承認者)であれば、その未来が間違いなく訪れることがわかっているので
承認のハードルを高くせざるを得なくなってしまうのです。

しかしながら、今回はとりあえず、そうではなく、スマホを端末として、モノとして、小さなPCとして
購入するというイメージの話だとご理解ください。

つづく

シリーズもの1

決裁とは何か(シリーズもの4)

2018年05月22日 01時29分27秒 | 決裁・稟議
前回の続き

他にも、仕事でどうしても必要な最新スマホを買うといった場合も同じです。
最新スマホを買う場合に上司が決裁する書類には、

1.何の目的で購入するのか
2.いつ(発注日と納品日)
3.どこで(会社名・店名・住所)
4.何を買う(商品名・個数・型番)
5.いくらかかる
6.支払い方法(立替え・請求書・現金)

を記入します。

1.何の目的で購入するのか
このスマホを購入する目的を書きます。
デモ用の端末として使うとか、アプリやシステムの検証用端末として使うとかを
書いておきます。ちなみに、業務用で毎日使うとか書くことは通常は有りえません、
それは事業部で個別に買うべきものではありません。情シスが購買をかけて買うものです。

そして、何故この機種を数多あるスマホから選んだのか、を書きます。
業務上の判断には全て理由があります。スマホは世の中に数え切れないほど種類があります。

その中で、今回買うことに決めたこの機種は、
「ターゲットユーザに一番売れているから」
「SoCがsnapdragonのMSM●●●●だから」
「OSがFirefoxだから」
今回の●●を目的とした検証用として最適と判断し、選択をした、とか書きます。

論理的な理由や、誰もが納得するようなもっともらしい理由がない、「ヤマカン」の判断というのは、
お仕事では存在しません。勘が鋭い経営者と言われる人もいますが、それはその人なりの
論理性に則った判断で、周囲の人がその人のロジックを理解出来ていないだけです。
そもそも、人間は同じものを見ても同じように認識していません。
花を見ても、綺麗という人もいれば、怖いと思う人もいます。
それは数字でも同じです。「本日の気温が30度」と言われても、人によって認識は違います。
30度は客観的な数字です。しかしそれをどう認識するかは個人に依存します。
簡単にいえば、ケニアの人が思う30度とシベリアの人が思う30度は違うということです。

その前提で、この機種を選んだ理由を、納得いくように説明をしなければなりません。
何故、最新のスマホである必要があるのか、中古の二世代前の機種でも良いのではないのか?
という疑問にちゃんと応えられる理由を書く必要があります。

つづく

シリーズもの1

決裁とは何か(シリーズもの3)

2018年05月20日 23時19分05秒 | 決裁・稟議
前回の例を交際費にしてしまったので、営業サイド、お金を稼ぐ側の
部署の人でないと、身近ではないかも知れませんので、コストセンターにいる人も含めて
もっと身近なところの例も挙げておきたいと思います。

一番身近な決裁は交通費です。

交通費の申請と承認も決裁という行為の1つになります。
「日付:何月何日」「区間:何駅〜何駅」「目的:●●会社と打ち合わせ」のようなものが
Excelなどで一覧になっていて、それをプリントアウトして、自分のハンコを押して
月末に上司に申請すると、上司もOKならハンコを押します。つまり決裁します。

交通費も会社の経費を使うという行為ですので、必ず自部署の管理者が確認して
決裁をするのです。そして、管理者の決裁後にその書類を経理に回すと翌月の給料と
合算して立替えた交通費が振り込まれる、というのがよくあるパターンです。
ネットワークやクラウドを使ったシステムも考え方は基本的には一緒です。
余りに日常的すぎて、且つ、少額のことが多いのでこれが決裁であると
意識をしていない人も多いですが、これも決裁という行為の一種となります。

つづく

シリーズもの1

決裁とは何か(シリーズもの2)

2018年05月17日 22時12分48秒 | 決裁・稟議
前回のつづきです。

交際費の決裁文書に記入する必要な事項は、次のような感じですが、
結構細かく色々と書く必要があります。これは会社が細かいのではなく、国税庁のルールが細かいのです。
国税庁も交際費は、勝手に会社のカネで飲み食いしてないか?ということろを一番疑います。
業務上本当に必要で使っているのかをチェックしますので、ちゃんと書くようにしましょう。

1.実施日時(何時から何時まで)
2.実施場所(店名・住所・電話番号)
3.先方の出席者全員の名前(会社名・役職・氏名)
4.当方の出席者全員の名前(役職・氏名+社員番号)
5.先方との関係性(顧客、Aヨミ、パートナー等)
6.想定合計金額と一人あたりの金額
7.支払い方法(立替え:カード・現金、請求書払い)
8.実施の目的
9.実施後にミニッツ(書く会社もあります)

1〜7は、それほど考えずに事務的に決まってくるかと思います。
6の金額は、事前に出しているので、正確な金額は当然わかりませんが、当日
お酒をだいぶ飲んでしまって、高くなるということもありますので、金額は多めに
余裕を持って出しておきます。実施金額がかなりオーバーすると、
再提出ということもありますので、メニューなどから事前にちゃんと推測しておきましょう。

そして、一人あたりの金額も忘れずに書かなければなりません。
これは先方と当方の人数を合計金額で割れば良いだけですので簡単ですが以外と重要です。
もしこの一人あたりの金額が5,000円以下に抑えられたりすると
「損金算入」が出来ます。費用、必要経費として扱うことが出来ます。
その分、費用計上出来る訳ですから、売上から引かれて、会社が払う税金も少なくなることに
なります。

5,000円を超える場合は、課税対象になりますが、資本金が1億円以上か
以下かで扱いが変わります。このあたりは国税庁のホームページで確認してください。

8の実施の目的ですが、接待だから「接待です」とは書きません。大人なので。
「当社の顧客であるA社の意志決定のキーパーソンである、購買部長の●●様と
 次年度の取引についての意見交換と懇親を目的に実施する」
とか書きます。大人なので。

これらの項目をキチンと書いておくのは交際費を使う上で大事なのですが、それは先述した
国税庁の対応という話もありますが、社内の目も気にしたほうが良いという理由もあります。
社内で絶対に変な想像や疑いを持たれるような体裁をとってはいけません。
人間はかなり嫉妬深く、「いつも会社のカネで飲み食いしていいな」とか
アドミン担当から「いつも飲みに行ってる」とか、余計な噂を流されることを
避けなければならないのです。
それを避ける一番いい方法は、売上を上げまくり、稼ぎまくることです。
ただ、そういうわけにもいかないでしょうから、先ずは体裁をキチンとした決裁の
申請と承認(依頼)をすることを心がけましょう。

その話につながってきますが、交際費の申請のコツとしては、必ず事前に出しておくことです。
使っても使わなくても出しておいた方が良いです。
今日、お客さんとの打ち合わせが17時から入っている。今年も暑いから
もしかしたら、終わった後に暑気払いにビアガーデンに行こうとかなるかもって
ピンときたら、とりあえず申請をしておきましょう。
店名はわからなくても、その他は書けます。値段もおおよそで良いので
ビアガーデンなら1人5,000円とかエイヤーで決めて書いておきます。

事前に出しておけば、使わなければ後日、上司や経理に「使いませんでした」と
一言伝えればOKです。また、結果、ビアガーデンではなく、ちょっと高級な
ところにいったので、1人5,000円ではなく1万円だったとしても、修正や再度
出して承認を貰うことは出来ます。
しかし、事前に出していないと面倒です。事後は兎に角避けるようにしましょう。
これはあくまで決裁ですので、事後、というのは最も避けるべきことです。
立て替え払いだとしても会社の金を承諾なく、結果として勝手に使ったということになります。
これはマズい。
交際費という性格上、突発的に起こることも会計的には理解出来ます。
しかし決裁と考えると、事後になることは最も避けるべき事態ですので、
先読みをして事前に申請をして了承をとっておきましょう。

つづく

決裁とは何か(シリーズもの1)

2018年05月17日 01時38分25秒 | 決裁・稟議
決裁文書を、後から書き換えるというのは「犯罪」です。それは、公務員でも
会社員でも同じことです。この「犯罪」というのは、公文書偽造や私文書偽造
のような罪もあるかも知れませんが、それよりも何よりも、自分が所属している
組織に対する裏切りです。株式会社でいうなら、株主に対しての裏切りであり、
一緒に働いている同僚への裏切りという「犯罪」です。

ここ最近のニュースを見ていて、決裁文書の書き換え問題が多く出てきていますが
それに対してのリアクションをなんとなくみていると、あまり世の中の人が
決裁を知らない感じがしたので「決裁」について少し書きたいと思います。


そもそも決裁とは何かというと、組織として何かを決定することを「決裁する」と言います。
ここのポイントは「組織として」「決定する」ということです。
組織に所属する個人が、個人的に、個人的な目的の為に決めることは決裁とは言いません。

事業部長や部長が個人で決裁する(=何かを決める)こともあるかも知れませんが、
その決定は、その人個人が判断して個人的に決めたものではありません。事業部長という
職位の人間が、その職位・職責から組織の利益になると判断して、決定するのが決裁です。

例えば、事業部長の部下である部長が、得意先と忘年会を開催したいので、交際費として
5万円の申請を事業部長にしてきたとします。その際、事業部長はこの得意先の年間売上高
利益率、今後の取引の継続性や発展性などを考え、今回忘年会で5万円を使う事に
意味があるのかどうか、5万円を使うことが合理的な説明がつくかを考え、判断するのです。
もし、その得意先との年間の取引が10万円しかなかった場合、その売上の半分の5万円を
忘年会に使うというのは、組織として全く持って合理的な説明がつきません。
この1回の忘年会で費用が取引の50%を占めるわけですから(勿論、それで申請する
部長も部長ですが…)。

でも、実は得意先の取引見直しが年明けにあることがわかっていて、上手くすると逆に
来年度から年間1,000万円の取引高になる可能性がある、というのであれば5万円を
使うのは合理的であると判断しても良いと思います。上手く行けば今回の費用は売上の
0.5%ですから。

事業部長として自分が所属している組織の売上向上という明確な目標があり、
その目標に向かって貢献する一つの方法として、その得意先と忘年会を開催することで、
年明けの取引見直しについて何かしらの情報を得てくる。また、得意先の担当と人間同士、
個人的な信頼関係をつくっておく。取引見直しで競合他社とコンペになり最後の2社に残り、
経済条件もほぼ同じで、どっちにする、となった場合、得意先担当者の最後のひと押しで
一言だけ「こちらの会社の方が仕事し易い」と言ってもらう。

そんなことを考えて、事業部長は決裁をするわけです。
部長が個人的に良い奴だから、この間、誕生日にプレゼント貰ったから、たまには
得意先と飲みに行かせてもいいか、と考えて判断するのではありません。
そんなものは決裁でも何でもありません。組織としての決定ではなく、事業部長の
個人的な感情での決定でしかなく、自分の組織や職位・職責に対して背任行為と
会社のお金を私的な目的に使ったという横領を行っただけです。

ある程度の職位・職責につく人間は、それに見合った権限が与えられます。
そのような地位にいる人間はは自らを律し、
「李下に冠を正さず」ということわざの通り、怪しく曖昧な判断をしてはいけないのです。

つづく