森羅万象、政治・経済・思想を一寸観察 by これお・ぷてら
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2つの党大会
二つの党大会が終わった。
安倍晋三が自民党大会であらためて改憲を明確に位置づけたのにたいして、民主党の大会はまったく印象が薄い。
当たり前のことだが、改憲の前には手続き法案を通さねばならない。したがって大会のもようを伝える報道のかぎりでは、自民党の並々ならぬ決意が大会の内外で示されている。
これにどう打ち勝つのか。民主党はそれにこたえる必要があると思うのだが、それを聞くことはできなかった。(参院戦での)与野党逆転を小沢一郎党首はぶちあげた。それならば野党第一党の民主党はこれにこたえなければならない。国民投票法案に反対するのか、賛成するのか。むろん、民主党案が準備されているのは承知の上だ。
メディアも辛らつだ。与党と区別がつかないと酷評している。メディアの論評のように自民党(の政策)とほとんど区別がつかないのが民主党のいまの状況で、だから、別のエントリーでのべたように、経団連の選択基準に民主党が入るわけだ。
このあたりの構図について、blog-bluesさんが簡潔かつ的確に紹介されているので参照いただきたい。
敵勢力が思い描く最善のシナリオは、民主党が左派・市民派の票を取り込んで、自民は安泰、社共が壊滅することです。反対に最悪のシナリオは、民主党が保守層の票を取り込んで前進、左派・市民派の票は社共がキープしたまま、自民が一人負けを喫することです。仮に民主党が過半数を制しても、社共壊滅なら全然オッケー、なんですね。下掲は11日付毎日新聞朝刊の切抜記事。敵勢力にとって、民主党は手の内なんですよ。確かな数字は僕には分かりませんが、民主党議員の3割以上は、新自由主義・改憲志向なんじゃないのかな。
元を辿れば、小選挙区制は、なぜ導入されたのか。半永久的自民党政権に終止符を打つためなんかじゃござんせん。
それは、表向き。真の狙いは、日本の米国化。日本を米国型の左派を排した二大政党制にするためのものなんよ。もちろん、ターゲットは、日本国憲法改正。
押し付けてくれたのも米国なら、取り上げようとするのも米国だ。
通常国会がはじまる。
国民投票法案を成立させることが自民党にとっての「至上命題」なのだ。すでに民主党は揺さぶりをかけられているといってよい。参院選までに自民党が争点にしようとしている改憲問題、正確にいえば手続き法案はある意味でこの国会で決着がつく可能性を残している。その可能性はつみとらなければならない。
だから、民主党が国民投票法案に反対の立場をとりうるかどうかが、当面の焦点だといえる。
当面の「護憲派の結集」が必要なのはそのためだ。国会内外の多様な市民の運動が改憲阻止の条件を切り開く。
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教育貧困国ニッポン -格差拡大もたらす
毎年、盆暮れに出身大学の学生がカンパを取りにくる。サークルの後輩といっても、もう卒業してン十年も経っておよそ親子ほどの歳の差があるのに、だ。理系出身の私のところにはちゃんと理系の学生が取りにくる。むろんまったく面識がないわけではなく、集会や講演会などでたまには顔をあわせる。だが、これくらいのつきあいにすぎない。
こんな事情だから、話の糸口を何に見出すのに、いろいろと苦労する。結局、いまの世の中の移り変わり、おおげさにいえば世界・日本の情勢や学生生活というところに落ち着く。
その学生生活だが、われわれの頃とは周知のとおり様変わりだ。勉学の内容がかわっていることは当たり前の話だが、勉学の条件が激変していることにあらためて驚かざるをえない。あとで示すように国立大学でさえ授業料は月額に直すと約7万円になっている。私の時代は月額1000円だったので約70倍だ。物価上昇を見込んでもこれはひどい。「機会の均等」を考えるとこれは重大な問題であることを喚起したい。
青年の学びたいという要求は今も昔もかわらないのではないか。しかし、親に負担をかけることができず学費のためにアルバイトに精を出さざるをえない、と考える受験生や大学生も多いだろう。これはまだしも、月額7万円という授業料がハードルになって進学自体をあきらめざるをえない人も少なくないだろう。フランスでは0円。必要なのは学籍登録料1万9000円のみだ。ドイツも原則無料、一部の州で1万8000円の登録料がかかる。学力問題で日本との比較で取沙汰されるフィンランドではいっさいお金がかからない。奨学金も充実し、学生が学業に専念できる体制がつくられている。(国際比較の表を参照してください、クリックすると拡大します)
日本は世界一高い学費なのだ。初年度納付金(入学金+授業料)は国立で82万円、私立で131万円。
この教育の分野でも世界各国は高等教育の無償化という流れにある。1966年に国連で採択された国際人権規約は「高等教育の無償化にむけて努力すること」「すべての人がお金のあるなしにかかわらず均等に教育の機会があたえられるようにすること」と定めている(13条2項C)。ほとんどの国がこの規約を批准、無償化にむけた努力をすすめているというのだ。
一方のわが日本。人権規約は批准すると体裁をととのえたのはよいのだが、周知のとおり中・高等教育の無償化は「財政的にむずかしいから」という理由で遅々としてすすまない。世界では同じ立場をとっているのはマダガスカルとルワンダしかないらしい。世界第二位の経済力をもつ日本になぜできないのか。こんな疑問がでてくる。つまるところ税金のつかいみちにいきつく。日本は高等教育費支出における公財政の負担割合が41.5%にすぎない。国際比較でその割合がいかに低いのかよく分かる。(図をクリックしてください)
だから、その一方で当ブログで扱ってきた米軍再編のための支出や「思いやり予算」、環境破壊のダム建設などむだな大型開発がはたして妥当なのかどうか、考えなければならないだろう。
どこからみても教育の貧困な国になった日本。それでも、これをよしとする連中がいる。たとえば、斎藤貴男に批判された三浦朱門。
100人に2、3人は必ずいるはずのエリートをみつけそのエリートを伸ばすための「選民教育」を主張した。できないものはできないままでよい、エリート以外はせめて実直な精神だけがみにつけばよいなどと発言したことはよく知られている。
その三浦は、「魚屋の息子が官僚になるようなことがあれば不幸になる」と、私にはあからさまな「階級差別」的とうつる発言を繰り返している。
この三浦の発言は、いまの政権の教育政策と基本方向は同じだと私はとらえている。いまの教育行政の行き着く先は、まさに階級の固定化をめざす「貧困な教育行政」だと指摘しておくことが必要だ。
こんなことを学生から教えられ、そして考えた。
こうした現状を考えると、心の底から、未来は青年のものと叫ぶことができないのがなんとも辛い。
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政治とカネをめぐる問題
昔から議論されてきた政治とカネの話。だから、政治の話は嫌いだという人もいる。かつてジェラルド・カーティスらによって「土建国家」ニッポンとも称されたが、その言葉に象徴されるように、公共事業をめぐって談合・腐敗・汚職がはびこった。それはいまでも変わらないようである。各地の県知事のあいつぐ汚職。それが、県知事任期制の議論にも「発展」している。
ようするに最近、政治と金をめぐる話題に日本は事欠かないのだ。
しかし、政治とカネの関係の問題をめぐる各党の認識は、政党助成金、そして政治資金規正法改定にたいする対応ですでに尽くされている、と私は思っている。
■公明党議員の政務調査費不正使用問題
目黒区議会では公明党議員団全員の政務調査費不正使用が発覚し、関係議員全員が辞職している。この問題について、雑木帖さんが詳しくフォローされている。
これは、住民が収支報告書に添付された領収書を検証したことが発端となっている。政務調査費の目的は「議員の調査研究に資するため必要な経費の一部」(地方自治法第100条第13項)とされ、自治体は条例で使途基準を定めている。しかし、問題は、適切かどうかを検証しようとしても、政務調査費を何に使ったのか、領収書の添付を義務付けていない議会がまだ多くあることだ。その基準に照らして不適切な支出は当然、返還されるべきだ。
全国47都道府県、17政令市(今年4月から政令市に移行する新潟、浜松を含む)中、収支報告書への領収書添付を、「すべての支出」で義務付けているのは、都道府県議会では、岩手、宮城、長野、鳥取の4県で、「5万円以上の支出について」など条件付きが北海道、京都、滋賀、和歌山、山口、高知の6道府県、ほかの37都府県議会は領収書添付をいっさい求めていない。政令市議会では、静岡、浜松の2市が完全義務付け、札幌、さいたま、京都、大阪、広島、福岡の6市が一部義務付けているが、半数以上が義務付けなし。
解決のためにはとりあえず、領収書添付をまず義務づけることだ。だが、地方議会では、自民、公明、民主もふくめてこれに反対している実情があることも事実だ。
■政治資金規正法にかかわる事務所費の処理
新年早々、どこをたたいても埃の出そうな農水相・松岡利勝の疑惑が浮上した。出資法違反容疑で捜査を受けた会社の関係団体をNPO法人として認めるよう彼の秘書が内閣府に働きかけた疑惑につづき、巨額の事務所費をめぐって疑惑が持ち上がったのだ。しかし、事態はそれですまなかった。つづいて出るは出るは、何人もの政治家の名前があがった。閣僚も、党首も。
今回、メディアをにぎあわせているのは政治資金規正法にかかわる事務所費の支出にかかわってである。例を一つだけあげると、たとえば、松岡農水相の対応はつぎのとおりだ。
== 朝日新聞(1・16) ==
松岡農林水産相の政治団体による不透明な経理処理問題で、松岡氏は16日、閣議後の会見で、家賃のかからない議員会館に事務所を置く資金管理団体「松岡利勝新世紀政経懇話会」が01~05年で年間約2500万~3300万円を事務所費として支出していることについて、「政治資金規正法にのっとって報告している。説明責任はすでに果たしている」と述べた。
使途を尋ねられると、松岡氏は「説明する決まりにはなっていない」と明かさなかった。
総務省によると、事務所費に計上するのは、事務所の家賃、火災保険などの保険料、電話使用料、切手購入費、修繕費といった事務所の維持に通常必要とされる経費。政治資金収支報告書によると、懇話会の事務所費の01~05年の事務所費は各年の人件費とほぼ同額で、04、05年には3000万円を超えている。
いかにも怪しい。たしかに(政治資金規正法では)「説明する決まり」にはなっていないのだ。でも、それでよいのか。閣僚たるものの資質として適格なのかどうか、疑わざるをえない。かけられた疑惑は払わなければならない。
公明党国対委員長・漆原良夫は14日、事務所費問題について「政治の信頼を取り戻すためには、(政治資金の)入りと出について、明確な処理をする必要がある。この国会でぜひとも、国民の皆様にご理解いただける制度改革ができればいいと思う」と述べたという。だったら、地方議会でその範を垂れよ。
また、毎日新聞(1・16)はつぎのように伝えている。閣僚も方針不一致、いよいよもって曖昧模糊としてくる。
伊吹文明文部科学相らの政治団体事務所費に関する「不明朗な支出」との指摘が出たことを受け、16日の閣議後の記者会見では、全17閣僚のうち11閣僚が政治資金規正法の見直しについて透明化策を検討する必要があるとの認識を示した。また自身の政治団体の事務所費の支出については、大半の閣僚が「法に基づいて適正に政治資金収支報告書に記載している」(尾身幸次財務相)などと述べ、適正処理を強調した。
政治資金規正法の見直しに関し、現行法で領収書の添付が不要となっている事務所費について渡辺喜美行政改革担当相は「勘定科目を分ける工夫はあってもいい」とより詳細な報告が必要との認識を表明。伊吹文科相は「例えば借料(賃貸料)なんかは領収書を添付したほうがいいのでは」と語った。両相を含めて5閣僚が法の見直しに前向き姿勢を示し、6閣僚が透明性の向上が検討課題との認識を示した。
一方、長勢甚遠法相は「(領収書の添付は)相当手間がかかる」、甘利明経済産業相は「専門の人を雇う資金的な余裕がなく、事務量との関係を勘案する必要がある」と法改正による事務処理負担の増大に懸念を示した。
■政治資金規正法改定
現行法では、外国人等(株式の過半数を外国人や外国法人が保有している企業=外資企業を含む)からの献金は禁止されている。これは、外国の勢力によって政治が影響を受けることを未然に防止するためで、国家主権にかかわるからだ。この規制があったので、これまで外国株主比率が過半数を超えるキヤノンは献金できなかった。それを、自民党・民主党は政治資金規正法改悪案を衆院2時間余、参院1時間半余のわずかな審議で強引に成立させた。
最近、日本経団連の役員企業の外国株式保有が増加しており、そこで、外資企業であっても証券取引所に上場していればよいとすることで、規制の骨抜きを図ったわけだ。献金できるかどうかを、民間企業の証券取引所が定める上場基準にゆだねること自体重大だといえる。
また、経団連は、2003年から、政党に「通信簿」をつけ、成績良好と判断した政党への「献金促進」策を推進している。法人税減税や労働規制の緩和など身勝手な財界の要求を政党につきつけ、カネが欲しければ「良い成績」を取れという「買収」にほかならない。
政治資金規正法がこのように、カネの力で政治への影響力を行使したい財界と、企業献金の増額をめざす自民党・民主党の思惑が一致し、強行されたことを頭においてよいだろう。
以上にあげた政治資金法をめぐる政党の対応は、かつて政党助成金をめぐる問題でも問われたことだ。政党助成金と呼ばれているが、正式には政党交付金という呼称だ。この名称にすでにその性格が示されている。国が交付するのだ。
1994年に成立した政党助成法によって、われわれは強制的に自らの支払った税金を支持もしていない政党に配付させられることになった。なぜ支持していない政党に税金が渡るのか。参政権はなくて税金は納めている外国人や未成年者がなぜ政党の資金を負担しなければならないのか。
しかも、要件に当てはまらない政治団体は一定の得票を得ていたり地方議会で数多くの議席を得ていたり首長を出していたりしても助成金をもらえない問題など、納得できないことが多い法律の一つだ。
政治とカネをめぐって国会内外でさまざま論じられてきた。以上にあげた事例にたいする各党の対応が、「政治とカネ」の問題にたいする姿勢を如実に物語っている。
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格差社会支える日本の「最低賃金制」
OECDが日本の格差の進行に警鐘をならしたのは記憶に新しい。それによれば、日本は先進国のなかで貧困層の割合が2番目に高かった。可処分所得の広がりを分析した結果、平均値と比較して所得が半分未満の「相対的貧困層」の割合が加盟30カ国のうち2番目だった(1番目はアメリカ)。
日本(の貧困率)が2番目に高かった理由として、正社員が減少する一方で、賃金が低く抑えられたパートなど非正社員が増えていることを、OECDの報告書はあげていた。
そこで、格差と貧困が広がるなかで、世界各国では最低賃金制の役割が重視されている。賃金の底上げをしようというのである。ヨーロッパ諸国は、格差と貧困の拡大を重視し、その是正のために、最低賃金を大幅に引き上げている。過去6年間の引き上げ率は、最も低い国でも13%、最も高い国では44%に達している。この間の日本の引き上げ率は、わずか2%。ヨーロッパ諸国ではまた、最低賃金を、労働者の平均賃金の50%にすること、将来的には60%に引き上げることも決めています。日本は、平均賃金の約3割にとどまっている。(図は最低賃金の国際比較、クリックすると拡大します)
ところが、日本では、政府与党は世界各国とは異なる対応をどうも考えているようだ。私が見損ねていて、ゴンベイさんに教えていただいた、つぎの日経新聞の記事がある(12・26)。この見直しの方向は最低賃金制の役割重視という立場とはまったく異なる。
最低賃金制度見直し、生活保護との「逆転」解消・厚労省
厚生労働省は企業が労働者に支払う賃金の下限を定めた最低賃金制度を見直す。都道府県が地域別の最低賃金の額を決める際、その地域の生活保護の支給額に配慮する必要があることを最低賃金法に明記する。働いた賃金よりも生活保護の方が多いねじれを解消するのが狙い。生活保護の引き下げと最低賃金の水準切り上げの両方で対応する。
厚労省は最低賃金法の改正案を年明けの次期通常国会に提出する方針だ。新制度では地域別最低賃金を働く人の賃金の安全網(セーフティーネット)と位置付け、「地域の生活費や賃金、事業者の支払い能力」を基準に決めるようにする。具体的な金額はこれから詰めるが、最低賃金の水準は上昇する見込みだ。
だが、これではおそらく改善はしない。最低賃金をまず上げよ。そして、生活保護には手をつけるべきではない。ここには生活保護を切り下げる理由は見当たらない。
生活保護の実態は、財務省資料では被保護人員は140万人(2004年度)。一人あたり180万円となっている。これは、平成16年度の生活保護費(実績。医療扶助を含む。地方負担分も勘案。)を被保護人員数で除したもので、医療扶助もふくまれる点など、少し注意を要する。格差社会が進み、働いているのに生活保護水準以下という人と考えられるワーキングプアは400万人を超えたともいわれるので、あわせると実に500万人を突破する。
最低賃金の水準を引き上げて、一方で生活保護を引き下げるということは、単純化すれば、この500万人の枠組みのなかで配分をかえるということにいきついてしまう(むろん配偶者などが一定の収入を得ていて、最低賃金で働いている労働者がいるのは承知している)。問題なのは、この500万人への配分をいかに保障するか。ここが、手をつけなければならないところだ。
日本の社会では、安すぎる最低賃金制が格差社会を支えている。
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注;日本の最低賃金制は、制度面でも、金額でも、ヨーロッパの最低賃金制から大きくたち遅れている。
日本の最低賃金制は、地域別最低賃金を基本とし、一定の地域の産業部門で産業別最低賃金を設定しています。地域別最低賃金は、47都道府県ごとに設定され、適用される労働者は、約5000万人。産業別最低賃金の適用労働者数は、約400万人。2006年度の地域別最低賃金は、719円(東京)~610円(沖縄、秋田、岩手、青森)で、加重平均は673円。産業別最低賃金は、これより10%程度高く設定されている。
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自殺つづくイラク帰還自衛隊員
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昨年3月には防衛庁(当時)は国会で、イラク派兵隊員の自殺者について陸自が4人、空自が1人と答弁していました。それ以後、あらたに2人の自殺者が出たことになります。
アメリカ軍がかつてベトナムに、そしてイラクに大量のアメリカ兵を派兵し、その帰還兵の3割に精神障害がみられることが伝えられてきました。
最近でも、昨年11月にNHKが『イラク帰還兵 心の闇とたたかう 』というドキュメンタリーを放映し話題をよびました。それは、およそ以下の内容をわれわれに伝える好番組でした。
イラクから帰還したアメリカ兵の間に、今「PTSD=心的外傷後ストレス障害」が増えている。アメリカの医学雑誌が米軍の協力のもと行った調査によると6人に1人がPTSDなど深刻な精神的な問題を抱えているという。イラク武装勢力との戦いの中、いつどこから襲われるかわからない恐怖、民間人を誤殺してしまった罪悪感などが兵士の極度のストレスを生んでいる。番組ではイラクから帰還した兵士たちを取材。彼らがイラクで何を経験し、何が彼らを苦しめているのかの証言を得た。一方、アメリカ軍は長引くイラク駐留で兵士の数が不足し、PTSDなどによる兵士の戦線離脱を防ぐための対策を迫られている。全米各地のアメリカ軍施設を取材し、イラク帰還兵の心の闇に迫ったものでした。
今回の報道は、同様の事態が自衛隊員のなかにもあることを示すものです。現地に派遣された自衛隊員はおそらく緊張と恐怖、そして心労の毎日を送ったにちがいありません。自殺した自衛隊員が「『米兵には近づくな、殺される』と騒いでいた」と関係者が証言しているともいいます。
今回、同紙が入手した内部文書「平成17年度自殺事故発生状況」(防衛庁)によれば、== 以下、引用 ==
リストには自殺した日時、所属、職種、階級、既婚・未婚、自殺の手段などのほか、「特記事項」として通院状況や「海外派遣」の有無などが記入されています。
防衛省は、自殺した隊員の所属などは「プライバシーにかかわる」として公表していません。
自衛隊員の詳細な自殺者一覧の存在が明らかになったのは初めてです。
同文書によると、自殺者総数は47人(2006年1月現在)で、目を引くのはイラク派兵の隊員です。
▽05年4月3日 第一次イラク復興支援群に参加した北部方面隊第2後方支援連隊(旭川駐屯地)の二曹(29)が午前5時、自宅で自殺。
▽同5月27日 第四次イラク復興支援群に参加した東北方面隊第20普通科連隊(神町駐屯地=山形県東根市)の陸士長(23)が早朝、同演習場で自殺。
▽同8月7日 第二次イラク復興支援群に参加した北部方面隊第11師団司令部(真駒内駐屯地)の三佐(38)=イラクで警備中隊長=が午前4時、一般道の車内で自殺。
安倍内閣は「防衛庁」から「防衛省」への昇格に合わせて、自衛隊の海外活動も「本来任務」に“格上げ”しました。米軍の新たなイラク増派策を無条件で支持し、「(国際貢献で)自衛隊の海外派兵はためらわない」(NATO理事会で安倍首相)と、自衛隊の海外派兵のいっそうの推進を表明しました。
自衛隊OBの一人は「自衛隊の海外派兵は憲法違反であり、イラク派兵のような海外活動が増えれば、一般隊員を危険にさらし、さまざまな犠牲を強いることになる。“一将功成り万骨枯る”という悲惨な海外派兵=海外活動の本来任務化は絶対反対だ」と話しています。 == 以上、しんぶん赤旗1・14 ==
注;
『アメリカ精神医学ジャーナル』の10月号に、イラクから帰還した兵士の多数が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に悩まされているとの調査結果が発表された。
PTSDとは、重大な身の危険を伴う苦痛な出来事が起こった後に発生する不安障害のことである。フラッシュバックが起こると、現実感がなくなり、過去に体験した恐ろしい出来事がもう一度起きてしまうのではないかとの不安に駆られることになる。
「ウォルター・リード陸軍医療センター」のトーマス・グリーガー教授(精神医学)らのチームは、イラク帰還兵600人を調査して、時とともにPTSDの発生率が高くなることを発見した。
帰還1カ月後には、PTSDが4.2%、うつ病が4.4%、4ヶ月後にはPTSDが12.2%、うつ病が8.9%、7カ月後にはPTSDが12%、うつ病が9.3%の割合で発生していた。
また、これまでの調査によると、PTSDを発症する割合は、重傷を負った兵士とそうでない兵士の場合でほとんど変わらないことも発見されている。
http://www.janjan.jp/world/0610/0610193006/1.php
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ホワイトカラー・エグゼンプションは「資本家の内乱」?
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財界のトップといえる経団連会長・御手洗富士夫は新年早々、「御手洗ビジョン」を発表した。ここに、財界としての国づくり計画が示されている。さらに、経団連は、参院選を前にして07年版政党選択基準「優先政策事項」を発表した。これは、企業献金をちらつかせながら、財界のいわば思うがままの政治にするために、政党の評価をおこない、支持する政党を決め、会員企業にそれを徹底しようというものだ。
こんな構図をみると、西欧ではすでに生誕200年に「再評価」されクローズアップされたマルクスに登場してもらい、彼による鮮やかな分析と闘争の組み立てを披瀝願いたいものだ。
ホワイトカラー・エグゼンプションを残業代ゼロ法案と私はよんだが、結論を先にいえば、この法案は、これまでの「賃金が労働時間によって決定されるという大原則」を崩すものといえる。
いうまでもなく、マルクスの時代には最低賃金制度などは存在しなかった。そのなかで賃金は―いまもそれはかわりはないが、労働者にとって生活費であって、ときには相対的な人口過剰などによって賃金が生活費以下に切り下げられる状況を常にかかえていたといえる。
マルクスの言葉を引用してみよう。
労賃そのものは、また、きわめて多様な形態をとるが、この事情は、経済学の概要書からは知ることのできないものである――これらの概要書は、素材にたいして強烈な関心をもつだけで、どのような形態的区別をも考慮しない。とはいえ、これらの形態のすべてを叙述することは、賃労働の特殊理論の範囲に属し、したがって本書の範囲外である。その代わりここで、二つの支配的な基本形態を簡単に展開しなければならない。
労働力の販売は、われわれが記憶するように、つねに一定の時間を基準にして行なわれる。それゆえ、労働力の日価値、週価値などを直接に表示する転化形態は、「時間賃銀」の形態、すなわち日賃銀などである。 == 『資本論』第一部第六篇、新日本出版社版 ==
マルクスは賃金を以上のように一定の時間を基準にして売られる労働力の対価ととらえていた。この賃金をめぐって、マルクスは「隠された内乱」といったことがある。それが、「労働時間」をめぐる労働者と資本家の階級闘争だった。つまり、資本家は労働者を雇った以上、いいかえると労働させる権利を金で買い取った以上、労働者一人ひとりをどのように酷使してもよいという権利を手に入れる。かたや労働者は、労働者として働きつづける状態―マルクスのいう「労働力の再生産」が可能な状態―を要求する権利があるだろう。ここに衝突関係が存在する。この相対する権利の闘いが階級闘争として、また「隠された内乱」として存在してきたことを歴史の事実をあげて指摘したのがマルクスだった。
こうして200年。資本主義のなかで労働者が働く人間としてかちとってきた労働時間にもとづく賃金、という概念が突き崩されようとしているのだ。
いま世論の動向、国民の反応をみて、与党内では動揺もみられ、対象となる下限を900万円以上などという声もあるが、900万円以上だからよいという問題では少しもない。
そもそも、この限度となる年収は<法律でなく政省令で定める>のだから、いったん導入すれば歯止めはなくなる。
すでに成果主義賃金が導入されている。労働の「成果物」で年俸を決定するというわけだ。それがはたして賃金といえるのか、はなはだ疑わしい。
この法案が成立すれば、はたして年収400万円の労働者はこの残業代不払い法案でどうなるのか。労働運動総合研究所の試算がある(代表理事・牧野富夫日本大学教授)。(図は日本共産党ホームページから、クリックすると拡大されます。)
それによれば、月80時間残業した場合、140万円も減少する(26%ダウン)。総額では11.6兆円にのぼるとしている。年収700万円の人では246万円ダウンする。
以前に中野麻美の著書『労働ダンピング』を紹介した。そこで示されていたのは、ダンピング競争の波にまともにさらされる商取引化する非正規雇用を一方に、他方に「ノルマ」「成果主義賃金」「自爆」などのように請負化する正規雇用を置くという労働の二極化がすすんでいる姿であった。共通しているのは、中野の言葉でいいかえると、労働法による規制が機能せず、使用する側本位で決めた値段で働き手が自己責任で成果物やサービスを提供する「労働の液状化」である。ここに作動しているのは市場原理である。条件を決めるのは各人の力しかない。こんな労働の液状化という環境のなかで、働き手=労働者にとっては労働が苛酷な条件で取引される商品に収斂していくことを中野は「雇用の融解」と呼んでいた。したがって際限のない労働ダンピングが横行することになる。低コストでダンピング可能、そして法制によって拘束されることなく、権利を働き手に保障する必要もないとなれば、商品としての労働の競争力は強力だ。こんな労働が正規雇用との競合関係に置かれたとたんに、こんどは正規雇用に影響が及び、そのなかでの「値崩れ」、競争がはじまる。
以上の試算の結果は、財界のねらいが、ホワイトカラー・エグゼンプションというダンピング=残業代ゼロであることを如実に物語っているだろう。
さらに、残業代という考え方がなくなるので、過密労働・長時間労働が無制限に広がっていくことが懸念されている。労働者には賃金の減少による生活破壊だけでなく、精神的・肉体的破壊も待っている。今回のホワイトカラー・エグゼンプション=残業代ゼロ法案は「過労死促進法」になりかねない。
マルクスに賛成する人も、しない人もいま、マルクスの著作をひもといてみるのもよさそうだ。
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ゆがんだナショナリズム二題
日米両国政府は11日、嘉手納基地などの米軍機訓練を本土の自衛隊基地に移転する計画について、費用分担を日米それぞれ75%、25%とすることで合意した。
おなしな話だ。米軍の訓練の移転なのに、なぜ日本が負担するのか。
日本側が負担するのは、米軍戦闘機の飛行経費や人員・物資の輸送費などで、どうみても米軍が自ら負担すべきものだ。むしろ移転先側は基地周辺住民にとって軍用機の爆音と事故の危険性と向かい合わせの生活を強いられることになる。
訓練の移転先は、千歳(北海道)、百里(茨城)、小松(石川)、築城(福岡)、新田原(宮崎)、三沢(青森)の各基地。
どこまでもアメリカへの追随は及ぶ。
マスメディアはこれをどう報じているか。『朝日新聞』(1・11)を引用しよう。だが、見出しも「米軍が4分の1負担」などと、まるで主客が転倒している。
米が4分の1負担 在日米軍の訓練移転費で日米合意
米軍嘉手納基地(沖縄県)のF15戦闘機の訓練などを全国6カ所の自衛隊基地に分散移転する計画をめぐり、日米両政府は11日、移転にかかる費用を日本側が4分の3、米側が4分の1の割合で負担することで合意した。両政府は3月までに訓練移転を実施する方向で調整を進めており、日本側は06年度の補正予算案に約4400万円を盛り込んでいる。
訓練移転のためには、戦闘機や整備員の輸送費や燃料費、宿泊費などが必要になる。米側は「日本側の事情による移転なので費用は日本が負担するべきだ」と主張してきたが、日本側は「米軍と空自が共同訓練することは、日米の相互運用性の向上につながり、米側にとっても利点だ」と押し切り、米側も一部を負担することで合意した。 == 引用おわり ==
さらに米軍は、東京都の都立青山公園の一部を不法占拠し米軍麻布ヘリポート基地として使用している。東京都は、基地の一部を米軍が返還すると同時にこれを引き続き使用させることを在日米軍、東京防衛施設局と合意したことを12日、発表した。
同基地は面積3万1670平方メートル、ヘリポートのほか、「星条旗」新聞社(米軍準機関紙)社屋、宿舎などがある。返還されるのは同基地の一部4700平方メートルで公園にする。
また、都によれば、幹線道路の建設完了後、米軍が現状に戻す協定を結び臨時ヘリポートとして使用しながら、道路建設終了後も使用しつづけてきた都立青山公園の一部4300平方メートルを、今後も使用させるという。
不法占拠はもってのほか、全面返還すべき。むろん地域住民から即時返還の要求が出ていた。
石原慎太郎はかつて盛田昭夫と『「NO」と言える日本』を書いたはずだが、このていたらく、あきれたナショナリストだ。
アメリカの前では、従順な羊のような日本。
一方、こんなことを書いているうちに、安倍晋三がNATO理事会で「自衛隊の海外活動ためらわない」と演説したことが伝えられていた。
ゆがんだナショナリズムは底なしだ。
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巨泉の反語的精神
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ちょっとペシミスティックな響きが感じられないわけでもないですが、ほんとはどうでしょうか。どっこい、最後の部分に注目したい。「叫んでも空しいのは解るけど、言わざるを得ない悲しい72才」と言い切るところに、どうしても譲れない一線で踏ん張る巨泉さんの心意気を私は感じるのです。
林達夫じゃないけれど、巨泉の反語的精神をそこにみるのです。安倍に未来なんか託すものか!
絶望に悩む72才より 大橋巨泉(著述業)
人間はしょせん時代的にしか生きられない。最近はとみに絶望的になっています。長い間護憲を訴えつづけて来ましたが、この呼びかけ人リストを見ても解るように、われわれの仲間は皆高年齢です。若い人は一人も入っていません。
マッチ擦るつかの間海に霧ふかし
身捨つるほどの祖国はありや
早大俳句研究会の後輩で、ボクに俳句をやめさせた天才、寺山修司の名作短歌ですが、これは皇民化教育を叩きこまれ、しかも敗戦で百八十度の価値観の転換を余儀なくされた世代にしか、本当の意味は解らないでしょう。代々の政治家の家に、銀のスプーンをくわえて生まれて来、坊ちゃん大学を出た首相に、この国の未来を託して、一体どこへ行こうと言うのですか? 呼びかけ人は一人一人死んで行きます。立ち上がるのは、若い君たちなのですよ。叫んでも空しいのは解るけど、言わざるを得ない悲しい72才なのです。(了) == よびかけ人「三十六歌仙」(10) ==(1・1)
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総理が2人いる日本
日本には総理が2人いる、近頃つくづくそう思うようになりました。
■■■は、2007年1月、わが国が今後めざすべき道筋を具体的に示す新しいビジョン「希望の国、日本」を公表した。われわれが実現をめざす「希望の国」のかたちとは、確かな成長に裏打ちされた精神面を含むより豊かな生活であり、開かれた機会と公正な競争に支えられる社会であり、また、世界から尊敬され親しみを持たれる国である。
グローバル競争が激しさを増し、人口減少社会が到来する中、日本が「希望の国」となるためには、政治の強いリーダーシップによって、経済の成長力を最大限に引き出す戦略を実施するとともに、簡素で効率的な政府を実現するための改革を強力に推進すべきである。また、自主・自立の精神に基づいた選択の自由の拡大と人々の協調的行動を促す開放的・横断的な絆の強化に向けて、社会のあり方を刷新する必要がある。
この文章の主は誰だかお分かりでしょうか? そう、日本経団連です(上記文中の■■■には日本経団連が入ります。下記に「当面の優先政策」を掲載)。経団連は新年早々、「ビジョン」を発表したので、すぐにお気づきの方もおられるでしょう。
それにしても、この文章の分かりにくいこと。平易な言葉でつくられていますが、何をいっているのか、分かりづらい。
だから、分かりにくさでは評判の安倍晋三首相とまちがえた人もおられるかもしれません。文中に、「希望の国」などと、安倍首相が常に誇らしげに言い放つ「美しい国」とうり二つの言葉を使うものですから、それも無理からぬことでしょう。
「『希望の国』のかたちとは、確かな成長に裏打ちされた精神面を含むより豊かな生活」だそうです。しかし、その実現をめざす「われわれ」とは、決して勘違いしてはなりませんが、私たち国民のことではなく、経団連に会員として加盟している大企業をさしています。そう置き換えてみると、なるほど意味が通ります。
「開かれた機会と競争に支えられた社会」-これも分かりにくい。しかし、新自由主義の名でさけばれてきたことをここで思い出してみるの悪くはありません。機会と競争とは、何やら世の中が変わるかもしれないと受け取られてきた「規制緩和」にほかならないでしょう。その結果、国民にもたらされたものが格差の拡大ではないでしょうか。
タネを明かすと、この文章は、経団連が新年の「ビジョン」につづき、発表した政党選択の基準の一節です。この中で、よりいっそう露骨に(資本家の)心情を吐露している、と私は思います。
経団連は政治献金を復活させることをすでに明らかにしました。この政党選択の基準(正式には、07年版政党選択基準「優先政策事項」)は、政治献金を行う際の基準で、まさに「金も出すし口も出す」の典型です。金を出す以上、口を出し、企業の利益追求を確保しようという財界の魂胆を隠そうともしていません。
経団連は、ここで①法人実効税率を30%目標に引き下げを明記しているだけでなく、②「憲法改正」もうたっています(法人実効税率は現在でもすでに30~35%程度になっているともいわれています)。
経団連は、どこか誤解しているようで、憲法を改定することで「世界から尊敬され親しみを持たれる国」になることができると思っているようです。しかし、現実には、アメリカの後をついてまわるばかりで、世界の国々から、とくに北東アジアの諸国からほとんど相手にされてこなかったのがこの5、6年だった、というのが私の感想です。
経団連の政党選択の視野には自民・民主の両党が入っているようです。つまり、これは自民党も民主党も大企業にとってそれほど変わらないということの裏がえしです。
昨日11日には、「残業代ゼロ法案」を通常国会に提出する意向を政府は明らかにしました。
財界・大企業の横暴勝手をこれ以上許すのか。これでは国民はたまったものではありません。企業献金と支持ほしさに目がくらみ、「優先政策」を飲んでしまうような政党を伸ばしてしまっては、歪んだ日本の姿をいっそう加速させてしまいます。
総理が2人いる日本。安倍晋三と経団連会長・御手洗富士夫。経団連会長はこれまで久しく財界総理とよばれてきました。
その財界総理がいよいよ幅をきかせています。
日本の政治状況はまさにいま、財界総理に飲み込まれるように私は思うのです。
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当面の優先政策
このような観点から、当面、以下の10項目の政策の推進が極めて重要であると考える。
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ファシズムを撃て -『茶色の朝』がきたらどうする
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だが、これは単なる起こりそうもない話と突っぱねることはできない。日本のいまの動いている状況をじっくりみわたせば、その可能性がまったくないわけではない。つれあいが薦めてくれた『茶色の朝』という本はそれをテーマにしている。
話の主人公、俺はシャルリーと一緒にコーヒーを味わっているところから、この寓話ははじまる。
俺とシャルリーは、とくに何を話すというわけでもなく、お互い顔に浮かんだことをただやりとりしていた。
それぞれ相手がしゃべる中身に
たいした注意は払っていなかった。
コーヒーをゆっくり味わいながら、時の流れに身をゆだねておけばよい、心地よいひとときだ。
シャルリーが犬を安楽死させなきゃならなかった
と言ったときはさすがに驚いたが、ただそれだけだ。
静かに時が流れ、そのなかにゆったりと身を置いておく。こんな日常がしだいに変わっていく。すでにその予兆はこの一節の中にも現れている。
この寓話の背景には、1980年代以降の極右政党・国民戦線の台頭がある。作者・フランク・パヴロフが本書『茶色の朝』を書いたのは、フランス社会がやがて茶色に染まっていくのにたいする不安とそれへの抵抗を喚起するためだ。これを理解するには、フランス人にとって茶色のもつ意味を予備知識として入れておく必要がある。本書には、高橋哲哉氏による秀抜なメッセージ「やり過ごさないこと、考えつづけること」が加えられている。
それによれば、フランス人にとっての茶色brunとは、つぎのようにナチスを連想させるものらしい。
ヒトラーに率いられたナチス党(国民社会主義ドイツ労働者党)は、初期に茶色(褐色)のシャツを制服として着用していたので、茶シャツ隊 les chemises brunes はナチスの別名になったのです(もっとも、細かいことを言えば、後にナチス党内で勢力を強めたヒムラー率いる親衛隊SSが黒の制服を着用したため、「茶シャツ」は、ヒトラーによって粛清されるレーム率いる突撃隊SAに限られた征服になりました)。
「茶色」は、ナチスを連想させるだけではありません。そのイメージがもとになり、今日ではもっと広く、ナチズム、ファシズム、全体主義などと親和性をもつ「極右」の人びとを連想させる色になっています = 以上、メッセージから引用 ==
話に戻ると、犬の安楽死に驚いたものの、「ただそれだけ」と主人公・俺はやり過ごしていく。安楽死とは、「ペット特別措置法」で茶色でない犬や猫が処分されることをさしている。だが、そんな中でも、不安を感じつつ茶色に守られている心地よさを感じ、時は過ぎてゆくのだ。そして、だからこそ、この寓話の最終盤で、主人公・俺はこう考えなければならなかった、こういう結末を迎えざるをえなかったのだ。
ひと晩じゅう眠れなかった。
茶色党のやつらが
最初のペット特別措置法を課してきやがったときから、
警戒すべきだったのだ。
けっきょく、俺の猫は俺のものだったんだ。
シャルリーの犬がシャルリーのものだったように。
いやだと言うべきだったんだ。
抵抗すべきだったんだ。
でも、どうやって?
政府の動きはすばやかったし、俺には仕事があるし、
毎日やらなきゃならないこまごまとしたことも多い。
他の人たちだって、
ごたごたはごめんだから、おとなしくしているんじゃないか?
だれかがドアをたたいている。
こんな朝早くなんて初めてだ。
……
陽はまだ昇っていない。
外は茶色。
そんなに強くたたくのはやめてくれ。
いま行くから。
この主人公・俺をわが身に置き換えてみるがよい。だれでもがこの俺にすり替わることはそんなにむずかしいことではない。いまの日本社会は、こんな条件を次第につくりつつあるのではないか、われわれがこの俺になる条件を。
本書はとても短い。そして、はじめて日本版にヴィンセント・ギャロの挿絵「Brown Morning」がつけられたという。この挿絵が楽しい。何よりも全編が、マルチン・ニーメラーの言葉(別エントリー)を想起させる構成となっている。
ファシズムにたいする直接的批判や告発を本書は含まない。だが、そのことで逆に絶妙なファシズム告発、全体主義批判となりえている。
――――――――――――――――――
フランク・パヴロフ『茶色の朝』(大月書店・メッセージ:高橋哲哉、訳:藤本一勇)
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吉永小百合 -『言葉』をもつ人間の使命
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最初に断っておきますが、私はサユリストでも何でもありません。ただ、吉永小百合さんの平和や戦争にたいする発言とその内容に関心があるのです。むしろ、平和・戦争にたいする発言はだれのものであっても、それは気になるのです。
戦争の時代の波に巻き込まれながらも家族を守り、たくましく生きる女性を描く吉永さん主演、山田洋次監督の映画「母(かあ)べえ」(08年公開予定)のロケが埼玉県川口市の映像産業拠点「SKIPシティ」で始まるそうです。川口市といえば、かつて吉永さんが貧しい鋳物職人の娘を演じ、スターの座に駆け上った、「キューポラのある街」(日活)の舞台となった街です。それ以来、吉永さんの同市でのロケは45年ぶりといいます。
吉永さんが平和の朗読詩をうたい、反戦・平和について発言されていることはよく知られています。
その吉永さんが、『憲法を変えて戦争へ行こう という世の中にしないための18人の発言』に文章を寄せられています。その一節を紹介します。
人間は、『言葉』という素晴らしい道具を持っています。その道具で粘り強く話し合い、根っこの部分の相違点を解決していく――報復ではなく、半歩でも一歩でも歩み寄ることが、『言葉』を持つ私たち人間の使命だと思います。
戦争とは、国が人に人殺しを命ずること。命じられた人間は、選択の余地もなく、人を殺さなければなりません。おそろしいことです。
戦争は絶対にいやです。私の甥が戦争に行く、兵隊に召集される、そんな事態は何としても阻止しなければなりません。
今、日本は世界有数の軍事費を使い、戦争への道を進もうとしています。私たちがしっかり考えて行動しなければ、大変なことになる。仕事仲間とも友人とも話し合って、みんなで声を出したいと思います。
武器ではなく、憲法9条こそが、私たちを守ってくれます。
== 以上、引用・18-19頁 ==
戦争の本質と、平和的解決の方法=外交の要諦をこれほど簡潔に表した文章はあまり見かけません。すぐに制裁をちらつかせ、あげくのはてには核保有をももちだす、いまの政権につく連中に、くりかえしこれを読んでもらわなくてはならないのではないでしょうか。
「人間は、『言葉』という素晴らしい道具を持ってい」るのです。
吉永さんは、平和を望むわれわれがどうふるまうべきかについても語っています。
「私たちがしっかり考えて行動しなければ、大変なことになる。仕事仲間とも友人とも話し合って、みんなで声を出したいと思います」。
十日戎に出かけ願いをかけた人びとの想いをかなえるには、そこでにぎあう人びともふくめて、『言葉』を発する行動が日本のあちこちで起こらなければなりません。
こうすることが、平和を願う人びとのとるべき使命なのでしょう。
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「悪夢のサイクル」 -格差社会にどう立ち向かうのか
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しかし、目にみえないゆるやかな変化を人が気づくことはなかなかありません。
1週間前のあなたが世界をどうみていたのか、世界がどうあったのかは、今日のあなたがどうであったのか、そして1週間の世界がどうであったのかとはほとんど変わりがないようにみえます。(プロローグ)
こんな書き出しで本書『悪魔のサイクル』ははじまる。この書き出しを読んで、マルチン・ニーメラーの言葉をにわかに思い出す人もいるだろう。ニーメラーの言葉はよく知られているように、ファシズムに世の中が移行しようとするその姿を表したものだ。世の中はかわっていくが、その際の一つひとつの小さな変化に、すでに本質的な変化が含まれていることをそれは示している。また、少しの変化に気づいてはいても、わずかの変化だから、と考え、眼をつぶろうとする人間の心理を、それでよいのかと問いかける言葉でもある。わずかの変化をみのがしてはならない。
おそらく内橋氏は同じ立場で、先の一節を書いているのだろう。わずかな変化を見通せなかった日本でも、さすがに10年、15年と時が流れていけば、もはや誰の眼にもその変化、ちがいが分かるようになった。無視できなくなった。
しかし、格差が単にそこにあるということではない。格差社会という言葉で表され皆が思い浮かべるのは、その格差が広がり、普遍化している今日の事態だろう。日本の社会が単純に二極化されているわけでもない。これから一握りの高額所得者と、そうではない層に、分りやすくいえば分断させる社会に移行しようとしているのである。大多数の一方の側は、この意味で貧困化に向かうといっても過言ではないだろう。
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当時、アメリカでとられた政策はほとんど今日の日本で具体化されているものと同じだ。列挙すれば、1.規制下にあった産業を自由化する、2.累進課税をやめる、3.貿易の自由化だ。3を除けば、日本がアメリカの後追いをしていることがただちに分かる。
内橋氏があげる、アメリカでとられた政策によってもたらされた結果はドラスティックだ。
1959年に上位所得者トップ4%の総収入は、下位所得者の下から35%の総収入と同じだったという。それが規制緩和後の91%には、トップ4%の総収入は下位51%の人びとの総収入と等しくなった。これこそ先にのべたように単純に二極化されているわけでなく、二極分化がすすみ、上に行くのはわずかだということだ。日本もそのあとを追い、同じような変化を辿るというわけである。
内橋氏が著した『悪夢のサイクル』は、このように、日本に格差社会をもたらす結果になった新自由主義=市場原理主義を料理する。同氏にはすでに『規制緩和という悪夢』という書物もあるので、本書はその続編ともいえる。
この『悪夢のサイクル』は8章からなるが、私はその論点を大きく4つの部分に分けることができると考えている。
1.市場原理主義の起源と日本への導入
2.市場原理主義によって何がもたらされるのか、予測しえたのになぜ受け入れられたのか
3.市場原理主義の循環サイクル(悪夢のサイクル)
4.市場原理主義をどう克服するのか
しかし、なぜ日本では市場原理主義が受け入れられていったのか。「みずからの首をしめるような政策変更」(内橋氏)になぜなびいていったのか。内橋氏によれば、その理由は以下のようである。
①「規制緩和」を戦後の官僚支配を打破する特効薬といて錯覚したこと
②学者をメンバーにいれた一見中立にみえる政府の審議会、あるいは首相の私的(!)諮問委員会の口あたりのいいキャッチフレーズにまどわされたこと
③これら審議会の意見を大きくアナウンスしたマスコミの存在
④小選挙区制度の導入
この同氏の整理と指摘にはいろいろな意見があるだろう。これら4つの相互関係はどうか、どれが主たる要因なのか。近くで我われ自身が経験した、一昨年の「9・11」、衆院選での国民の判断はこれを再び繰り返したことにはならないか……。しかし、氏のあげた4つの点のどれもが要因の一つになっていることだけはまちがいなさそうである。
そして、本書のタイトルである「悪夢のサイクル」が解き明かされる。内橋氏は、アメリカ、南米、アジア、そして日本、1960年代から起こった変化の波を俯瞰して、「ネオリベラリズム(新自由主義)循環」あるいは「市場原理主義の循環運動」とでもいえる一つの「法則性」があるという仮説を立てる。これは、佐野誠氏(新潟大学)によって、アルゼンチンの80年代以降の経済研究をもとにした「ネオリベラリズム・サイクル」と名づけられることになる。
それではこれにどう打ち勝つのか。それが、第8章に示されている。氏はそれを「国家でもない、市場でもない、第三の道がある。国家が市場を計画し、すべてをきめるのではなく、市場が人間を支配するのでもない、第三の道。それは、人間が市場をつかいこなすという道です」と説いている。新自由主義は、それ以前の経済政策を「国家が市場を計画」と表現すれば、いうまでもなく「市場が人間を支配」するといえるだろう。
その上で北欧の経験も紹介しながら、氏は「市民参加型資本主義」という、「市民社会的制御の下に市場メカニズムというものを置き、その市場のメカニズムの幸福を増してゆく方向」を提起している。要するに、人間が市場をつかいこなすのだ。
本書は、このように検討するに足る論点がいくつも提起されている。議論はこれからだろう。だが、はっきりしているのは、これは、国民自身が深め、決めなければならないということだ。
内橋克人氏は本書の末尾で「賢者の勇気」の話に言及している。話は元に戻るのだ。歴史と現実をみつめることをやめれば、どんなに奮い立ってもそれは「愚者の勇気」にすぎないだろう。内橋氏は、そうではなく、すこしの変化をもみすえるような、歴史と現実を見る眼をもとうとよびかけているのではないか。
――――――――――――
内橋克人『悪夢のサイクル』(文藝春秋社)
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格差社会 -今年は「明るい年」になるのか
『日経新聞』(1・6)が2007年予想をテーマに世論調査を行っている。
それによれば、「今年は、去年より明るい年になってほしい」という願いを込めて、モニター(回答者;2551人)を対象におこなったという。
今年は、去年より明るい年になる? | 数字:% |
いいえ | 41 |
わからない | 38 |
はい | 21 |
結果は、「明るい年になる」は2割だった。興味深いのは、一方で「明るい年にはならない」と答えた人が4割に達したことだ。その理由がまた、面白い。
- 格差社会が広がる 724人
- 社会保障の先行きが不安 337人
- 凶悪犯罪が多発 212人
- 教育の荒廃 205人
と続いている。日本に社会的格差が存在するという現実は日本国民の共通の認識になってきつつあるようだ。社会保障の先行きが不安だということもまた、国民の多くが抱く心配事になってきた。これだけ、医療や福祉が連続して改悪されると、ほとんどの国民が犠牲となることはいまや誰の目にもはっきりしてきたといえる。
同紙に寄せられたモニターからの声を紹介している。その部分を引用すると、
「いじめや飲酒運転問題など、あらゆる面で社会を動かそうという機運がわき上がっている。この動きが加速しそうな気がする」(神奈川、43歳女性)。昨年の不幸な事件・事故を反省材料に、社会がよい方向に進むことを期待する意見もありました。
「明るい」と予想した人にその理由を尋ねると、「景気回復の兆しが見える」を挙げた人が突出していました。
確かに、昨年11月、政府は「いざなぎ景気」超えを発表しました。そのせいか、「日銀が金利を引き下げる」と予想したモニターも7割近くにのぼりました。
一方で、「明るい年にならない」と予想した人にその理由を尋ねたところ、「格差社会が広がる」不安を挙げる人が最多でした。
「景気が良くなるだろうが、確実に格差社会になって、良いのは上の階層の人ばかり」(福岡、32歳女性)
「企業だけがもうかり、民は困窮する時代になる」(神奈川、30歳男性)と、景気回復を実感できるのは一部の層のみとみているようです。
「安倍首相退陣」「石原都知事の3選」についての予想はいずれも拮抗しています。
== 引用おわり ==
所得格差をはじめとした社会的な格差が現にいまあるというだけではない。所得格差についていえば、ワーキングプアとよばれる層が確実に広がることが今後も予想されるのである。格差は一部の人だけの問題ではない。かつての「中流」といわれた層もその限りでは飲み込まれてしまうのである(別エントリー;格差社会 -階級という言葉は「死語」なのか)。
私は、国民はいずれ必ずかわると理由もなく確信しているが、以上に紹介されている声はいまの日本社会の核心をとらえていると思う。このまますすめば、今年は「明るい年」になるとは残念ながら予測しがたいと多くの人が思うのではなかろうか。
以前に二宮厚美の著書を紹介した。二宮の説くのは、つづめていえば9条と25条は対としてとらえることが必要だということだった。そう考えると、参院選は一つの節だといえる。ここで、いまの政治=悪政をかえることができるのか、これを問いたいものだ。それは、すなわち護憲勢力をどう前進させるかにかかっている。
追記;
「凶悪犯罪が多発」をかなりの人があげている。注意を要するのは、先の教育基本法改悪時には社会の犯罪多発も喧伝されてきたが、敗戦後の時期にくらべると今、はるかに犯罪発生が低いことだ。たとえば、こちら(『警察白書』から集計したもの)。
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米軍基地再編または日本の「無関心」
地方紙の小さな記事に共感をもった。米軍再編にふれたものだ。日本がなぜ「普天間問題」に大騒ぎするのか、論じられなければならないのは米軍再編ではないのか、という主張がこの記事の核心だ。そのとおりだと思う。
当ブログで以前、目取真俊の主張を紹介した。幾人かの読者の方から意見を頂戴した。いずれも、目取真の日本本土と沖縄を対置させた一種「過激な」論立てに異議を唱えるものだった。
したがって話は目取真の主張からはじめようと思う。この記事のなかでは、目取真のつぎの言葉が引用されている。
<このような(基地集中の)異常な状況を法的に支えている日米安保条約に対して、日本(ヤマトゥ)においては、反対の声はほとんど聞かれなくなった。日米安保体制の負担を沖縄に押しつけ、自分たちは米軍基地がもたらす事件や事故の被害から免れることによって、日本人の圧倒的多数は日米安保条約に関心を持たなくても生活できるし、やすやすと肯定することもできる>
ややもすると、こんなところに落ち着き、安住する。意識せずとも実際はこうなる日本の現実を、目取真は批判している。記者は、「彼の批判を受け入れた上で、それでも私は普天間問題ばかりに世間の注目が集まることに、違和感を感じる」と書き添えているが、しかし目取真はなにも沖縄・普天間に注目せよといっているのではない。まさに記者自身が続けていうように、米軍基地再編の本質を見抜け、それは日米軍事体制の一体化だというのがいいたいことだろう。だからこそ、日本(ヤマトゥ)の無関心を批判せざるをえないのだ。
最上敏樹の言葉を借りれば、沖縄のいまは「平和ならざる状態」だといえるだろう。だから、いいかえると、米軍基地再編問題はこの「平和ならざる状態」を普遍化し、さらに深刻化させるものでもある。
記者の眼差しは、すなわち「安保」に無関心な我われに向けられている。
【関連エントリー】
目取真俊、沖縄県知事選をふりかえる
閑話休題 14 -米軍基地再編の促進に補助金
覚書「米軍基地再編の促進に補助金」
改憲と平和、安倍年頭所感
追記;年末、Yナンバーの車をたまたまみかけた。ナンバーには佐世保とあった。それで、駐留米軍基地の車だなと察しがついたが、調べてみると、
米軍関係車両専用のプレートがあり、平仮名の位置にA、E、Y等のアルファベットが書かれているのが特徴である。米軍関係車両の登録台数は60000台弱程度で、そのうちの約27000台が沖縄ナンバーである。
自動車税が国民の2割に免除されていたり、ガソリン代に含まれる税が免除(計算の関係で基地内のガソリンスタンド内のみ適用)されるなど不公平な点も多いとされているが、自動車税に関してはYナンバーの車が基地の外と、基地の中の其々の道路を走る割合を元に出されている為に、異なる税額との解釈もある(以上、ウィキペディアから引用)。
これも対米従属のひとつの姿だと思う。ちなみに、在日米軍施設は、総数87施設 総面積;312,209(千㎡)。そのうち沖縄県は、36施設、230,392(千㎡)を占める。(防衛施設庁ホームページから)
http://www.dfaa.go.jp/US/sennyousisetuitirann.html
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沖縄勤務になり10カ月。
昨年は、在日米軍再編に伴う米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の移設問題に追われた一年だった。だが、なぜ私たちマスコミはこれほど「普天間問題」に大騒ぎするのだろうか。
それが「重要でない」と言っているのではない。市街地の真ん中にある同飛行場は、全国の米軍専用施設の75%が集中する沖縄の基地負担のシンボルだ。その危険な基地を、沖縄県内の別の場所に「たらい回し」的に移設しようという政府案に対し、県民が反発するのは当然だろう。
沖縄在住の小説家、目取真俊さんはコラム集「沖縄 地を読む 時を見る」でこう書く。
<このような(基地集中の)異常な状況を法的に支えている日米安保条約に対して、日本(ヤマトゥ)においては、反対の声はほとんど聞かれなくなった。日米安保体制の負担を沖縄に押しつけ、自分たちは米軍基地がもたらす事件や事故の被害から免れることによって、日本人の圧倒的多数は日米安保条約に関心を持たなくても生活できるし、やすやすと肯定することもできる>
彼の批判を受け入れた上で、それでも私は普天間問題ばかりに世間の注目が集まることに、違和感を感じる。マスコミが普天間で騒げば騒ぐほど、論じられなければいけない「米軍再編の本質論」が隠されていく気がするからだ。
では、再編の本質とは何か。日米軍事体制の一体化だろう。再編計画には①キャンプ座間(神奈川県)に陸自中央即応集団司令部を設置し、米本土から移転する米陸軍第一軍団司令部と併置②横田基地(東京都)、に空自航空総隊司令部と米第五空軍司令部を併置-が盛り込まれた。日米の司令部機能の連携が進み、合同訓練や基地の共同使用が強化されるのだ。
ここ数年で有事法制、テロ対策特描法、イラク復興特措法が整備された。昨年の国会では自衛隊法が改定され、「付随的任務」だった自衛隊の海外活動が「本来任務」に格上げされた。こうした時代に、「テロとの戦い」を大義名分にして、他国に戦争を仕掛ける好戦的な米国にどこまで追随するのか。私たちはこれまでのように「安保」に無関心でいいのだろうか。
== 『西日本新聞』(1・5);「今を解く」から引用 ==
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半藤一利 -日本は憲法を基軸にすべき
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/aa/87a2ee83afdd9c6f6b480fe2c1189baf.jpg)
最近では、半藤さんは件の「富田メモ」の鑑定でも知られている。そして、著書『昭和史』で毎日出版文化賞を受賞した。
半藤さんは、日本は平和憲法を基軸に進むべきと強く主張している。
「ピーコ、日本国憲法を大いに語る」というエントリーでは、ピーコさんが自らの戦争体験をもとに日本国憲法、平和の大切さを説いているのに接してつぎのような書き出しからはじめた。
焼夷弾による火の海をくぐりぬけるという空襲の体験を私はもたない。戦争を例にとれば、15年戦争のなかで実際に生き、また敗戦後のアメリカの占領を体験した者とそうでない者の想像力は、明らかに異なる。たとえば、私が炎をながめていると仮定しよう。そこから出発して、いまみているその炎から私の想像はなんらかの形をとって広がっていくだろう。だが、空襲で家が焼け落ち火の海になったまちの様相を、逃げ惑う人びとの表情を、そしてそのときの炎の色を、想像の中で私が言語で表現することが一つの可能性としてはあっても、戦争をじかに体験した者の表現にほとんど遠く及ばない。戦争を体験した者の、自らの、あるいは他者の一つひとつの行為と結びつく言語が、あたかも織物のように織りなす体験の記憶が喚起する想像力とくらべれば、私をふくめてそれを実際に体験していない者の想像力ははるかに貧弱にならざるをえないのは明らかだろう。原体験を言語化できるか否かは、想像力において決定的な意味をもつ。
まさに半藤さんはこれと同じように以下の文章で自らの戦争体験を語っている。その体験があればこその戦後60年であり、日本国憲法だったのだ。
「妥協しているとダメだ、戦争が非情で無惨で、むなしいものであることをきちんと言うためには体験を言わざるをえないと思いました」。
話はレッドパージにも及ぶ。半藤さんの語るところは、澤地久枝さん、井筒和幸さんの熱い思いと寸分もちがわない。
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―中学2年の3月10日、東京・向島で東京大空襲にあい、家が全焼するとともに、ご自身、死ぬところだったと聞きます。
「焼夷弾が何発も雨のように落ち、私たちの町内もいっぺんに火が出ました。
『消せる』と教わっていましたから消していましたが、とてもだめで逃げました。葛飾寄りの中川の川岸に着き、『ここなら安全だろう』と思っていると、まもなく火の海になりました。大勢の入が中川にタボンタボンと落ちましたが、川岸で赤ちゃんを抱いてる人などは川へ飛び込む元気、勇気はありませんから、うずくまっていると、上から火をかぶって身体がバーツと燃えた。私は舟に乗ることができ、水の中の人を引き揚げていましたが、そのうちに手を引っ張られて水のなかに落ちました。水面が八月からず水中で右往左往しているときげた長靴が落ちていった。逆が水面だと分かり、水面に出て舟の人に助けられました。たくさんの入がおぽれ死にました」
―戦争体験を語るのは6、7年ぐらい前から?
「あまりにも目の前で無惨に死んでいくのを見ていますから、話すのは本当にいやでした。でも平和のことなどを書いていると、『戦争を知らないくせに何だ』と言う人がいる。妥協しているとダメだ、戦争が非情で無惨で、むなしいものであることをきちんと言うためには体験を言わざるをえないと思いました」
学生時代は米軍占領下。日本共産党員と支持者を職場から追放するレッド・パージ(1950年)に反対し、ピケラインの最前列に。「赤色か桃色か、よく分からない理由で大学の優秀な先生がバージされるなんて何ごとかと思いました」
―安倍首相は憲法を任期中に変えたいと公言し、自民党の改憲案は「自衛軍保持」を明記しています。
「軍隊は『攻撃する組織』で独断専行が許されないと、軍隊たりえないものです。使命として強くなければいけないことから、障害物があれば、クーデターを起こすこともありえる。いま世界で起こるクーデターも全部軍によるものです。
その怖さを考えないで『憲法改正して軍を持ち、核兵器も持て』など、とんでもないことを言っている。平和憲法をもつ日本入は世界に『お互いに戦争をやめよう』と言うことができます。それをぐんぐん進めたほうが、よほど人類のためになります」
―世界の流れをみると、イラク戦争などが端的な例ですが、国際紛争を武力では解決できません。
「武力ではなにも解決できません。全部政治や外交で解決しなければできない。戦前の日本も一番判断を誤ったのは国際連盟から脱退(1933年)したことです。それ以来、日本に国際的センス、外交力が失われ、『お山の大将』になった」
―独善、無惨といえば、日中戦争、太平洋戦争の戦没者の多くが餓死者です。
「軍人の死者240万入のうち70%が餓死です。しかも死者の約115万人の遺骨がまだ南の島や北の荒れ野にほったらかし。遺骨も放ったまま、靖国参拝ばかりに熱を入れている。『なにを考えているのか』と指摘すると、『だんだんアカになってきた』と、いつのまにかアカになっている」
―文芸春秋の元編集長が?
「ええ(笑い)。アカでもなんでもないですよ。もともとそう言っていたんですからね」。(「全国革新懇ニュース」285号)
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