廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

捨て曲なしの傑作

2015年09月20日 | Jazz LP (Columbia)

Ornette Coleman / Science Fiction  ( Columbia KC 31061 )


1971年に録音されたオーネットの傑作。 前年に発表されたマイルスの "Bitch's Brew" にかなり影響されたところがあるとは言え、捨て曲が一切なく、
これは完璧な出来ではないでしょうか。

1曲ごとに曲想が異なり楽器編成も変わってくるのでごった煮と言われることもありますが、アルバム全編をオーネットの洗練された艶めかしいうねりが
貫かれており、オーネットの音楽が一般のフリーとは違って広く支持される理由が明確にわかる内容です。 自分の楽想をここまでわかりやすく表現する
音楽家はちょっと珍しくて、そのあまりに無邪気なあけっぴろげさ加減に他のミュージシャンたちは驚きと嫉妬を覚えたんじゃないでしょうか。
なんで俺はこんな風に素直に音楽ができないんだろう、と。

サウンドの要になっているのはチャーリー・ヘイデンのベースで、私はこの人があまり好きではないですが、オーネットのバンドにいたころのヘイデンは
演奏に徹しているところが凄くて、さすがにこれには聴き惚れます。 アルト、トランペット、ベース、ドラムというカルテットが核となって、そこに
女性ヴォーカル、テナー、ヴァイオリン、エフェクターを通したベース、朗読、赤ん坊の泣き声、などの変数が曲想に合わせて絡んできますが、そのどれもが
ナチュラルにフィットしていて、奇を衒っている感じは皆無。 当然そうでなければいけない、という感じでそれらが出てきます。

タイトル曲の "Science Fiction" や "Rock The Clock" でのビッチェズ・ブリュー的味わいにもクラクラとしますが、4人で演奏するアコースティックな
名曲 "Street Woman" が何より素晴らしい。 こうやって曲単位に魅力を語れるところが他のフリージャズと決定的に違うところで、オーネットの音楽は
そういう意味ではマイルスやコルトレーンの側にあるのだと思います。

もうそろそろ、オーネットをフリージャズの文脈で語るのは止めにしたほうがいいだろう、と思います。



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