Buddy De Franco with Strings ( MGM E-253 )
見ているだけで中の音楽が聴こえてきそうなとてもいいジャケットです。 そして実際にレコードをかけてみると、イメージ通りの音楽が出てきます。
ジャズというのは片方から貧しい黒人達の音楽がやってきて、もう片方から裕福な白人社会でもてはやされたダンスミュージックがやってきて、
それらがブレンドされて原型ができていますが、このレコードは後者側の系譜に連なるジャズの原風景のような音楽です。
MGMらしくバックの弦楽オケは予算たっぷりの分厚いアンサンブルで、なかなか聴かせます。
但し、穏やかな旧き良きアメリカ音楽とは一味違う聴き応えが感じられるのは、デ・フランコの硬派な演奏の賜物です。 クラリネットを決して柔らかくは
吹かず、芯のある硬い音で聴き手に真っすぐ届けと言わんばかりに何かを訴えかけるような吹き方をしていて、こういうところが素晴らしいと思います。
後にクラリネット1本でジャズ界を渡っていく気概が、すでにここで感じられます。
ただ如何せん、あまりにも人気がない。 捨て値同然でエサ箱の片隅に転がっているのはどうにも気の毒です。
この人のこういう美質を感じ取ってくれる人は、世の中には少ないのかもしれません。