廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

サックスの快楽~定番編

2014年06月21日 | Jazz CD
今週も中古CD漁りは不調に終わりました。 新入荷はそれなりにあるのですが、定番が多く、マイナー盤はあまり見られません。
在庫が少なくなってきたのか、それともみんなセール用に廻されているのか・・・・ いずれにせよ、そういう時は無理矢理何かを買ったりせず、
さっさと諦めて手ぶらで帰ります。

でも、当たり前ですが、定番がいけないという訳ではありません。 ジャズはこの定番たちがあってこそ、ここまで栄えることができたのです。
現に、レコードの世界で高値安定しているのは定番のものが多く、結局、みんなそういうのが好きなのです。

最近はCDの買い方も変わってきたのでうちのCDラックの顔ぶれは昔とは大分様相が変わってきましたが、それでも半分以上は定番モノで、
それらの大半は高音質盤で再発される度に何度も買い直したりしていて、常にラックの中で不動の位置を占めています。 そこにはジャズの
魅力が詰まっているし、何十年聴き続けても飽きることはありません。

私にサックスという楽器の魅力を教えてくれたのも、そういう定番たちでした。





■ Chappaqua Suite / Ornette Coleman  ( Sony Music Japan SICP 4043-4 )

私が一番好きなオーネットの音盤。 私にとってこれはフリーでも何でもなくて、ただひたすらアルトサックスの魅力だけで聴く音盤です。 
オーネットの透き通ったクセのないアルトの音にただただ聴き惚れます。 ここまで全編に渡ってアルトの快楽が堪能できる音盤は他にない。
少なくとも、アート・ペッパーのどのレコードよりも、快楽度はこの盤のほうが上です。 時々オリジナル盤も見かけますが、CDがとてもクリアで
いい音なので今更レコードが欲しいとは思わない、これで十分。


■ Charles Mingus / Mingus Ah Um  ( Sony Music Japan SICP 30239 )

もう何度買い直したのかよくわからないけど、これは最新のBlu-spec 2 仕様で、とにかくびっくりするくらい音がいい。 もちろん、元々録音が
いいので、実際はどの規格で聴いてもさほど変わらないんでしょうが・・・ トランペットを入れなかったのがミソの、素晴らしいサックスサウンド。
昔から必ずいろいろ小難しい解説がついてまわりますが、そんなの読む必要は全くなくて、サックスの快楽だけに浸ればいい音盤です。
これだけ音が良ければ、当然レコードは必要ない。





■ The Dave Brubeck Quartet / Dave Digs Disney  ( Sony Music Japan SICP 3213-4 )

オリジナル発売以降モノラルプレスしか発売がなかったのですが、2011年になって初めてステレオサウンドとして発売、これがまるで
昨日録音されたかのような自然で綺麗な音がします。 このCDはモノラル盤とステレオ盤の2枚組。 ブルーベックのピアノやモレロのドラムが
薄皮を剥がしたようなクリアで3Dな音場になることで、4人の演奏に見事な奥行き感を与えてくれます。 この名盤がこういう音質で聴けるのは
本当に凄いことです。 ブルーベックの音盤ではデズモンドは当然自分の持ち場だけの演奏になりますが、その短い演奏がソロアルバムとは違い、
却って逆に強烈に印象に残ります。 


■ Branford Marsalis / Renaissance  ( CBS/SONY 32DP 878 )

ブランフォードもこのころまではとても良かったのに、その後だんだん・・・・ この兄弟は、なかなか難しいですな。
このアルバムはワンホーン・テナーの王道で大傑作ですが、ソプラノで吹く "The Peacocks" が幻想的なバラードで素晴らしい。
ソプラノサックスがこれ以上ない理想的な音で鳴っています。 そろそろ、最新のリマスター盤が出て欲しい。






■ Johnny Hodges with Billy Strayhorn and The Orchestra  ( Verve 340 557 0543-2 )

1961年12月、クリード・テイラーのプロデュースで作られた傑作。 エリントンがいなくてもエリントン楽団の音楽になるから驚きます。
これも凄い音で鳴るCDで、ホッジスのアルトの轟音に眩暈がしそうになります。 パーカーの影響を受けなかった偉大なスタイリストですが、
ビッグバンドの大きな音の中でも埋没しない音の芯の強さに感動します。 こんなきれいな音でエリントン・カラーのサウンドが聴けるのは最高です。


■ Pepper Adams / The Adams Affect  ( Uptown Records UPCD 24.31 )

初めて聴いた人は必ず腰を抜かす、ペッパー・アダムスのバリトンの音。 地面が割れて、中から恐竜が現れるような轟音。
ジャズの初心者はなぜか皆必ずパシフィックのマリガンに一度ハマって、あれがバリトンの音だと思い込むものですが、大分時間が経ってから
この人を聴いて(これまた大抵がチェットのリバーサイド盤やドナルド・バードのブルーノート盤)脳天をかち割られる。
これはアダムスの死の1年前に録音・発売された音盤で、RVG録音。 素晴らしい音で鳴ります。 これを聴いたら、もう他のバリトン奏者の
音盤は聴けなくなるでしょう。



こうして眺めてみると、定番の音盤というのは改めて凄いな、と思います。 いくらマニアが稀少盤の有難みを喧伝してみたところで、
やはりこういう音盤の前では何を言っても無力です。 音楽はやはり才能のものであって、好き嫌いはもちろん別としても、
優劣は残酷なくらいはっきりとしています。





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