Red Garland / Live ! ( 米 Prestige NJLP-8326 )
ニューヨークのプレリュード・クラブで行われたレッド・ガーランドのライヴ演奏では、ベースとドラムがいつものメンバーではなく、フィラデルフィアの
ローカル・ミュージシャンがサポートしている。 ベースのジミー・ローサーはメイナード・ファーガソン楽団などで、ドラムのチャールズ "スペックス" ライトは
ディジー・ガレスピー、アール・ボステックらのバンドなどで演奏していた。 売れっ子のポール・チェンバースやアート・テイラーが多忙でブッキングが
できなかったのかもしれない。 プレスティッジのガーランドのアルバムの中でこれだけが音楽の雰囲気が違うのは、これがライヴ演奏だからではなく、
このメンバー違いが原因だろうと思う。 やはりリズム感が少し気だるく弱いし、アンサンブルの層も薄い。
それでも、ガーランド自身はしっかりと弾いている。 ベースとドラムの弱さをカヴァーしようとしていたのかもしれない。 そのせいか、スタジオ録音と
較べると珍しくピアノの演奏が前面に押し出されていて、一体感という意味ではいつもの黄金のバランス感は崩れている。 1作目の "At The Prelude" は
ガーランドの傑作の1つと言われるけれど、演奏を聴く限りではいささか格落ちの感がある。 勿論、それは2作目、3作目も傾向に変わりはない。
だた結局のところ、ガーランドの録音自体は(復帰後のものもあるとは言え)この時期に集中していて、且つ最も輝いていた訳で、ささいな違いのせいで
その価値が揺らぐことはない。 今となっては、私たちは慈しむ気持ちで聴けばそれでいいのだ。
そして、このやっかいなレコードの話である。 1作目の "At The Prelude" が黄色NJ、2作目の "Lil' Darlin'" がStatus、本作がNew Jazz規格、と
3レーベルに分かれてプレスされているところから、当初は最初のアルバムだけで完結させる予定だったが、ガーランドの引退で売れるものは何でも出して
しまえ、という話になったのだろうと思う。 この3枚は曲目が違うというだけで、演奏の質感は当たり前だがまったく同じで、何が何でも3枚とも聴かなければ
ならないというものではない。 このレコードもヴァン・ゲルダーのカッティングで、一応VAN GELDER刻印がある。 全体のサウンドは残響を無くした
デッドな音作りで、ピアノの音はいつものこもった感じはないが逆にチェレスタのような音色で、相変わらず何考えてるんだかなあ、という感じである。
手抜き感丸出しのジャケットデザインといい、本来は安レコで十分なはずだが、1回プレスされただけで忘れられたのはおそらく内容に際立った特徴が
なかったせいだろう。 まったく面倒臭いことをしてれたものである。