廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

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傑作には見えない傑作

2018年08月13日 | Jazz LP (EmArcy / Mercury)

Benny Golson / Turning Point  ( 米 Mercury MG-20801 )


ベニー・ゴルソンがここまでロリンズの影響下にあったとは知らなかった。 後乗りでフレーズに喰いついてゆっくりと噛み千切る様はロリンズそっくりだ。
ざらっとした低い音色もよく似ている。 ワンホーンという広い間口の中だからこそ、こういうことがよくわかるのだろう。 

一般的なこの人の印象、つまり潰れたような音が切れ目なくうねって何を吹いているのかよくわからない、という悪い癖はここではほとんど見られない。
ベン・ウェブスターのようなサブ・トーンも随所で効いていて、全編に巨匠の風格が漂う。 圧巻の語り口で最後まで吹き切っている。

ウィントン・ケリー、ポール・チェンバース、ジミー・コブのトリオも過不足のない、適切なプレイをしている。 バッキングに埋没することなく、自己主張で
邪魔することなく、ゴルソンのワンホーンとゆっくり交わりながら音楽を形成していく。 こうしてこのアルバムは傑作になっていく。

この時期のマーキュリー・レーベルは、時代の要請を受けて大衆向けのわかりやすい音楽を大量生産していた。 サラ・ヴォーンやローランド・カーク、クインシー・
ジョーンズ、ダイナ・ワシントンら大物もたくさんレコードを作った。 ゴルソンもジャズテットとして契約していたが、そこから1人離れてこれをそっと録音している。
どこからどう見ても傑作には見えないが、これを聴けばベニー・ゴルソンのプレーヤーとしての真の実力を知ることができる。


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