廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

OJCのビル・エヴァンス(7)

2020年12月27日 | Jazz LP (Riverside)

Bill Evans / Waltz For Debby  ( 米 Fantasy Original Jazz Classics OJC-210 )


さぞかし何度もプレスされているだろうと思ったら、1985年、2009年、2011年、2020年とのことで、意外に少ない。
手許には2種類あって、まずは1985年の厚紙ジャケットのもの。何だか複雑なマトリクスだ。

A面 OJC 210 A-G1A G1 A1 (F + AP)
B面 OJC 210 B1 (T) P T

ピアノの音は優しい音色だが、水に溶かした水彩絵の具のようにうっすらと滲んでいる。
ベースはくっきりとした輪郭、ドラムはブラシで触るシンバルの音が繊細な質感。
やはり、楽器の音よりも全体のバランスを重視したマスタリングだ。ラファロのベースのフレーズが一番よく聴き取れる。




Bill Evans / Waltz For Debby  ( 米 Fantasy Original Jazz Classics OJC-210 )


こちらは薄紙ジャケットで、マトリクスが違う。

A面 OJC 210 A2 P (T)
B面 OJC 210 B1 (T) P T

ピアノの音色のクリアさが少し向上している。やはりマスタリングし直しているようだ。厚紙ジャケットのものよりも
ピアノが主役のバランスへと変更されている。

やはり、OJC盤はプレスのたびにこまめにマスタリングを見直しているようだ。最後は好みの問題に着地するので、
どちらを選ぶかは各人の判断になるだろうが、私はこの薄紙ジャケットの音の方が生理的に合っている。






このタイトルのオリジナルのステレオ盤は、ピアノの音がより大きく鳴る。ここがOJCとは違う点だ。
一方、ベースやドラムにはさほど違いは感じられない。ラファロのベースの音がややしっかりとしているかな、というくらいだ。
店員がかたずけるグラスの触れ合う音が一番生々しく聴こえるので、一定の音の鮮度は保たれているのだろう。

ただ、「すごくいい音か?」と問われると、「いや、そんなことはない、騒ぐような音ではないよ」と言うしかない。
オリジナルは各楽器の音はしっかりとしているが、全体のバランス感は明らかにOJCの方が優っているし、
そもそもこれを聴いて、「これは凄い音だ」とは誰も感じないないだろう。



こうしてしつこく聴き比べをしていくと、再発盤は音が悪い、という話はいい加減な話だということがわかる。
確かに駄目なものもあるが、少なくともエヴァンスのリヴァーサイド盤に限って言えば、再発盤が劣っているとはまったく思えない。

オリジナルが完璧だということは決してなく、そこに見られる欠点を丁寧に補正してリプロダクションされているし、
更に次のヴァージョンでは再度見直しして作り直されているのは明らかだ。
どの版にも独自の良さや欠点があり、その違いを享受できるようになれば、音楽はもっと楽しくなるだろう。


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