廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ナット・アダレイは歌う(2)

2022年08月07日 | Jazz LP (Riverside)

Nat Adderley / Naturally !  ( 米 Jazzland JLP 47 )


A面がジョー・ザビヌルのトリオ、B面がウィントン・ケリー、チェンバース、フィリー・ジョーのマイルス・バンドという豪華なバックで固めた
硬派で超本格派の内容。コルネットのワン・ホーン・アルバム自体が珍しいのに、更にこういう面子というのはおそらくこれが唯一ではないか。
こういうメンバーの影響か、私の知る限り、これが最もストレートど真ん中の胸をすくようなハード・バップだ。

冒頭からなめらかで澄み渡った音色で伸びやかに歌う。明るい曲調で、聴いていると胸の中のつかえが取れていく。わかりやすい、屈託のない
音楽が続き、なんと心地よいことか。その素直さや実直さにただひたすら感心してしまう。これはきっとナット・アダレイという人の人柄
そのものなんだろうな、ということがしみじみと感じられる。彼のアルバムに私が惹かれるのは、きっとそういうところなんだと思う。

ザビヌルはバップのピアニストとしては凡庸で何の聴き所もないけれど、このアルバムではそういうところがナットの実像を際立たせる
ことになっていて、ピアノ自体は上手いので裏方としては十分な仕事をしている。ルイス・ヘイズもツボを抑えたドラミングで安定感が高く、
バンドとしての纏まり感は素晴らしい。

ウィントン・ケリーのサイドになると、音楽は更に躍動する。ピアノは雄弁に語り、ブラシが音楽を大きく揺らす。やはりこの3人の演奏は独特だ。
2曲目の "Image" はソニー・レッドの曲だが、コード展開がマイルスっぽくて、マイルスのアルバムに入っていてもおかしくないような演奏である。
人が変われば、音楽もガラリと変わる。

聴いていくうちに、ナット・アダレイという人の優しいパーソナリティーが映し出された上質な音楽に心奪われていることに気付く。
演奏者と聴き手が近い距離感を保つことができる、とても良いアルバムだと思う。



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