廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

もう1つのピアノのいないヴィレッジ・ヴァンガード

2018年03月11日 | Jazz LP (Blue Note)

Joe Henderson / The State Of The Tenor, Live At The Village Vanguard, Vol.1  ( 米 Blue Note BT-85123 )


しばらく聴いていなかったジョー・ヘンダーソンを聴き直そうと思ってボチボチ探しているけれど、この人のレコードも最近はすっかり高くなってしまった。
ブルーノートの4000番台なんて昔は安くてゴロゴロ転がっていたのに、今の価格ではまったく買う気が起きない。 金も無いのにレコード屋に行って、
手ぶらで帰るのがイヤだったから何か買って帰ろうという時に4000番台のレコードはうってつけだった。 不純な動機だったけど、そうやって結構たくさん
聴いたものだ。 そんなことを考えながら、週末の夜にボソボソとこういう安レコを探して拾ってくる。

このアルバムは発売当時、結構話題になっていたような記憶がある。 古巣のブルーノートからピアノレス・トリオで演ったヴァンガードのライヴを出す
ということになると、ビビッと反応するに決まっている。 古き良き時代のジャズの幻影に誰もが喜んだのだろう。 このアルバムがリリースされた前年に、
活動停止していたブルーノート・レーベルが復活したことを祝う "One Night With Blue Note" というスーパー・ライヴが行われて、かつての同窓生が
大勢集まり、懐メロ大会を盛大に演奏した。 ヘンダーソンもそこで "Recorda Me" を再演したりしていて、その流れでのアルバム・リリースだったのかも
しれない。

かつてはコルトレーン派の雄として鳴らしたプレイもここではいい具合に枯れていて、ゆったりと余裕のある演奏に終始している。 それは衰えているという
ことではなく、熟成しているという意味だ。 新主流派と言われた4000番台のサックスの礎だったのはショーターではなくこのヘンダーソンだったのは
間違いないところで、当時の彼特有の節回しはここでも健在だ。 だから流れてくる音楽の表情は豊かで、単調さや退屈さを感じる瞬間はなく、あっという間に
最後まで聴き通すことができる。 少ない数の楽器でこれだけ聴かせるというのは並大抵の事ではないと思う。 選ばれた楽曲はどれもみなゆったりとした
テンポのもので、喧騒や激情とは無縁だ。 穏やかな表情で、時にはユーモラスなフレーズを挟みながら淡々と進んで行く。 ブルーノートは豊潤な実りを
刈り取ることができたんだなあと思う。


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