セレンディピティ日記

読んでいる本、見たドラマなどからちょっと脱線して思いついたことを記録します。

河村VS杉山?

2010-11-30 22:24:17 | 名古屋
新聞報道によると、名古屋市議会の11月定例会で、個人質問にたった緑区選出の杉山ひとし議員が、河村市長の身勝手な辞任は許されない、もし辞職したなら自分も議員辞職して市長選に出馬する、といって辞職願を横井議長に預けようとしたところ受け取られなかったとのこと。杉山議員も河村市長におとらずパフォーマンス好きだね。

杉山ひとし議員は名古屋市交通局の労働組合の役員の出身だ。労組役員の定年後の上がりの議員ではなく、比較的若くて議員へ転出したせいかアグレッシブだ。昨年の市長選挙では自民公明の推す細川候補を公然と支持して所属していた民主党から離党勧告を受けて離党して一人会派となった。そのとき民主党で公然と細川候補を支持している市議会議員が市の交通労組出身と聞いて、以前から公務員の給与を減らすと言っていた河村候補への公務員の反感を反映しているのかと思った。

議会側としては、河村辞職による再選挙は肩透かし作戦が最善のはずだ。もし候補をだすのなら勝てないにしろ、良識的で穏当そうに見える人物をたてて河村批判票を多く集めて、市民の全部が河村支持者はないと示すことだ。でも杉山議員では、対立をあおって河村市長の術中にはまるのではないかえ。もし杉山議員が興奮してお里を出してしまうと、河村市長は交通局も配下だったので決して口にしないが、「市のバスの運転手の年収は*百万円で民間のバス運転手はその3分の1の・・・」とかの口コミが流されると杉山議員はただの道化となる。以前にはよく市バスの運転手は1000万円以上の年収で民間バスは400万円と話されたが、いまではそんなにないと思う。これは河村市長のせいではなく、赤字だから河村市長の就任以前から給与カットになっているからだ。

ところで杉山議員は坂本龍馬を尊敬しているらしい。そのせいか自分は民主党を脱藩したとよく言う。でも本物の脱藩者の拙者からすれば、杉山議員は民主党を離党してから細川候補を支持したのではなく、細川候補を支持して離党勧告を受けてから離党したので脱藩者ではない。昔流でいうならば「家禄没収士籍はく奪のうえところ払い」になったもの。

ついでだが、杉山議員にかぎらす鳩山邦夫氏や幸福実現党など、右から左まで坂本龍馬を尊敬しているといって現代の坂本龍馬を気取る人は多いね。でも僕はよく思うのだ。今の世に後世から坂本龍馬と並ぶ偉業を行ったと評価される人がいたとして、これらの龍馬気取りの人たちはきっと偉業を行った人を邪魔したり迫害したりした人として歴史の片隅に残ることが多いのではないか。

河村市長辞任とアベック選挙

2010-11-28 17:12:23 | 名古屋
25日にこのブログでテレビのコメントで「河村さんがかわいそう」とひたすらそれだけを言ったのは横井市議会議長と書いたが、自民党の桜井議員かもしれないと思えてきた。それはしゃべり方からだが。しかしそのあとで自民党の人が「自主解散」なんてしゃべっているのだから、その前のコメントは市議会の代表者か多数会派の民主党が普通だ。横井市議会議長は自民党だが市議会議長としてならこのコメント順番でもいいのだが、横井氏の感じと違う気がしてきた。横井氏または桜井氏では民主党のコメントはなくなるが敬遠したかもしれない。それとも横井氏でも桜井氏でもなく民主党の誰かだったのかな。あんまり重要でないけど、間違ったことを書いた不安が残る。間違っているといえば、愛知知事選立候補予定者の重徳氏について元総務省官房審議官なんて書いてしまったが、重徳氏はそんなにえらくなくて元総務省課長補佐が正しいので訂正する。

ところで名古屋市の一番のニュースは、河村市長が市議会リコール署名の不成立の責任をとって辞職するという。でも市長選には再び立候補するという。つまり大村氏が出馬する愛知県知事選とダブル選挙にして大村氏の当選を助けるためだ。もともと当初の日程ではリコールが成立したら河村氏は市長を辞職して市議会選挙と愛知県知事選と名古屋市長選のトリプル選挙を行う予定だったので、辞職と再選挙は決められたコースだ。

市議会に不満があるのなら市議選との同時選挙をめざして辞職するべきなのに、なぜ愛知知事選と同時選挙なのという意見がある。河村市長は名古屋市と愛知県が協力する必要があるから大村氏を応援するためといっているが、本当の理由は次の2つだろう。①頼んで知事選に立候補してもらう大村氏を落とすわけにはいかない。②2月の知事選で大村候補が落選すると4月の市議会選挙の勢いが落ちてしまう。というところだろう。

ところで誤解のないように言っておくと僕は河村信奉者ではない。前にも書いたけど、近年中に政府の財政破綻にともなう大混乱の波が全国を覆う。そのために議会改革のひな型を大都市で作っておくことは日本全国が大混乱からの早期脱出に役立つからだ。そう到来する銀河帝国の暗黒時代がファウンデーション(財団)を作っておくことで短くできるのと同じだ。アイザック・アシモフの『銀河帝国の興亡』(『ファウンデーション』)シリーズの中では天才的歴史心理学者のハリ。セルダンが未来にできることを予言していた。ぼくはポパー主義者でオーストリア学派経済学の信奉者(の見習い)なのでそんな長期の予言は不可能だと思うが今現実に迫っている危機がわかる。そういえばリフレ派の数理経済学者が「ハリ・セルダンになりたくて」なんてホームページをつくっていたな。数理経済学者はばかげたことを考えるものだ。

話はもどって、僕は河村信奉者でない。もしあのまま役所に残っていて万一河村市長の指示の下で働くことになっていたら苦労していたと思う。まあ正しい方向なら苦労してもしょうがないが、河村市長は「国債公債問題ない」というリフレ派とおなじ思考方向を持っているものなので議会改革は応援するが他の施策はたぶん支援できないと思う。

河村信奉者でないといっても、実は僕は名古屋市職員だったとき、つまり河村市長が就任する前年まである種の河村待望者だった。それはこの昔のこのブログの最初に河村氏の著作について書いていることでもわかる。ずっと以前の市長立候補さわぎのときに給料を減らすと河村氏が言っていたので市職員の間の河村氏の評判は悪かったが、僕は給料が少なくなっても構わないよと公言していた。だから僕が退職するとき上司に「まあ僕が役所に戻ってくるとしたら河村たかしが市長になった時ですね」などと話した。その1年以内に河村市長が誕生するとは思わなかった。もちろん今に至るまで「副市長になってワシを助けてチョウ」という話はない。

首長(ボス)としてなら河村氏より県知事としての重徳氏のほうに仕えがいがあるような気がする。まあ普通の県職員は御園氏の方が楽でよいかも。でも当選するのは大村氏かな。

iPhoneは僕のモノリスだ。

2010-11-26 18:40:47 | 文化
今週の月曜日、クイズ番組である『Qさま』を見ていた。「全国インテリ高校No.1決定戦!」ということで、全国から選ばれた各チーム5名の6つの高校チームが対戦した。そこでの「プレッシャーSTUDY」の英語問題で、おやっと不思議に思ったことがある。「プレッシャーSTUDY」の英語問題とは、たとえば「訳すと『と』から始まる英単語を和訳しなさい」という課題で1から10まで番号のついた英単語が示される。通常番号が大きいほど難しい単語になる。普通の放送の時はチームが10人なので、あらかじめ回答する順番のメンバー順に、答える英単語の番号を指定してから答える。「全国インテリ高校No.1決定戦!」ではチームが5人なので二順して答えることになる。全問正解するチームがいくつもあると考えられるので、勝敗は全問正解した残り時間の秒数がそのまま得点となる。しかしこの「プレッシャーSTUDY」の英語問題では全問正解したチームはなかった。英語問題で順番がきたメンバーがいくつか残った英単語のどれもわからず立ち往生して時間切れになったのだ。しかし他のメンバーもわからなかったチームもあるが、多くのチームは他のメンバーの中に残りの英単語の訳すなわち答えを知っている者がいた場合が多かった。

不思議に思ったのはすべてのチームが、最初のメンバーが小さい番号のついた前半の単語から答えて言ったことである。そうすると当然ならば難しい単語が残ってくるから、答える番のメンバーが残った単語のどれも知らない場合が出てくる。だからこの場合の取るべき作戦は明らかだ。つまりメンバーは答える番になったら、自分は知っているが他のメンバーが知っていないかもしれない難しい単語から答えるという打ち合わせをすることだ。ひょっとしたら僕がルールを聞きもらして、難しい単語から答えてはいけないことになっているのかなと疑った。でも1から順に答えているのではなく、2とか5から答えていたので答える単語を指定する特別なルールはないはずである。知識はあっても現実に即した戦略が立てられないとしたら日本の教育は間違っているね。

ところで高校生たちが答えられないでいた英単語の「さ」で始まるものにcalamityがあった。それから「し」にdebtもあった。その2つについて僕はわかったが、自慢したいわけではない。じつはインターネットでアメリカの新聞をのウエブを覗くと、新聞のヘッドラインによく出てくる単語だ。僕はあまり読めなくてもThe New York TimesやThe Christian Science Monitor などのアメリカの新聞の電子版をよく見ている。calamity は災害だ。それも不幸という感情が入っているので新聞のヘッドラインに使われるのだろう。そのほかにも災害関係ではtoll つまり犠牲者とかcasualty 死傷者がよく出てくるから覚えている。debtは借金だよね。これも経済記事でよく出てくる。

こんなことを書きながら実は僕は英語に弱い。だが知識の取得手段として英語にあこがれが強い。実は読めなくて読みもしないのにかなりの数の洋書をAmazonなどで題名から読みたくなって取り寄せてきたのだ。まあ買ってもなかなか読まないのは英語に限らず日本語の本でも同じだけど。なぜ英語が弱いのか。それは僕がほとんど集中力がないからだ。英語に限らずほとんど勉強というもののために15分も座っていられないのだ。もちろん本を読むことはすきだから、勉強しようと机に座ると勉強と関係ない本を読みたくなる。学生時代はテストのために勉強することは自分の平生の学力を示さずに偽の実力をしめして試験管をいつわることだと考えて自分を合理化していた。社会にでてからは集中できないことはそれが自分にとって必要ないことだからだと思うようになった。これは親鸞上人の影響かもしれないが、実際のところ仕事でも必要だと判断したことは長い時間かけても完璧なものを作ろうとしてしまうので、自分の良知を信じるだけだ。これは王陽明の影響か。

ところがその僕に英語がスラスラ読める能力をつけることが可能にすると思われるものが現れた。キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』というのにモノリスという黒い板が出てくるね。人類はそれにふれる度に大きく進化したのだね。僕の目の前に現れたモノリスはiPhone だ。昔から英単語の強化の本はいっぱい買ったがほとんど使わず無駄な出費となった。しかしいまiPhone の中にはアプリケーションとしてアルクのPower Wordの4000語、6000語、8000語、1200語が入っている。4000語はほとんど知っている単語なので使わない。いま6000語を毎日ゲーム感覚でやっている。うっかりミスも含めて満足できるミスのない水準までやめられないので毎日続けられる。

それからイギリスの経済誌のThe Economist も先週から電子版で本誌の記事のほとんどが読めるようになった。じつは今まで何年にもなるが同誌を郵送で購読している。だけどほとんど読んでいなかった。ところが今週のは日本特集でもあるけれどiPhoneで辞書と往復だけど1つぐらいは記事を読み切ることができた。

歳をとって記憶力も知力も落ちてはいるが、道具一つでまだ可能性が大きくなったような気がする。

名古屋市選挙管理委会の審査結果がもたらすもの

2010-11-25 21:28:48 | 名古屋
僕の予想に反して、名古屋市選挙管理員会は市議会リコール署名を不成立と発表した。僕は11月9日に「自分の意思で確かに署名した人が十分いるのに、形式的に瑕疵があるのでと何万人もの署名を無効にしてリコール署名は不成立としたら市民の怒りは爆発する。そうなるは来年の統一地方選挙での跳ね返りがおおきくなって議会側に不利になる」と書いた。だから市議OBの多い市選挙委員会は審査期間の延長により住民投票とリコール選挙の日程を遅くしたことで満足してリコール署名は成立とさせるのがベターのはずである。

選挙管理員会はそれほど馬鹿なのか、と思った。しかし考えてみれば選挙管理員会が審査期間延長の理由としたのは「『受任者名』欄の空欄の数の署名簿が多すぎる。請求代表者以外で署名収集ができるのは受任者だが、受任者が集めたとしたら署名簿の『受任者名』欄に記入が必要」というもの。だから照会文書で自分が確かに署名したが「受任者に署名を求められた」と答えた22,900人分は「収集方法に問題がある」として建前上でも無効にせざるを得なかった。これは市議会と選挙管理委員会にとっては痛しかゆしだろう。不足書名分は12,004人分だから、有権者の意思としてはリコール署名の成立は確かだ。だから来年四月の市議会選挙での跳ね返りが怖いはずである。横井市議会議長は、テレビでのコメントでひたすら「河村さんがかわいそう」というばかりでなんとか市民の怒りの矛先をかわそうとしている。市議会自民党は「市民の意思を尊重して自主解散を目指す」とこれも逃げ腰である。

これに反して前の河村市長のブレーンでけんか分かれした後房雄名古屋大学院教授のブログはかなり悪意に満ちている。ざまあ見ろと言わんばかりに、「規定数に届かなかった以上不成立は当然のこと」と市民目線の政治学者らしからぬ発言だ。無効署名の数が多かったのは主として選管によって無効にされたというべきなのだが、後氏は収集者側の「組織的不正」と言っている。確かに無効署名のうち900余の署名は「署名していない」と回答したものでこれは当然に不正なものだが、これは収集者による不正ではない。一般風潮として署名には家族の名前も当然に書いてしまうことがある。職場にいたとき、よく私立の保育所や高校に子どもを預けている人から署名簿が回ってきた。また組合関連での署名もあった。そんなとき職場の人間は自分の名の他に家族の名前も書いていた。僕は個人の思想は尊重する主義なので自分の名前だけしか書かなかったし、内容によっては署名もしなかったけど。だから署名する人が案に家族の名前を書くことが多いのである。街頭署名の場合2人分続けて書いたなら収集者も気づくけど、別の日にまた通りかかって「そうだ河村ファンだが外出できない父の名前も書いておこう」と書いたのなら収集者はどうにもできない。だから後氏が「組織的不正」と発言するのは常軌を逸している。

元々ユーロ・コミュニズムにしろコミュニスト系列の後氏が、自由主義系列と思われる河村氏のブレーンになること自体が間違いだった。民主党系の学者だから民主党の代議士からの転身の河村市長のブレーンと大かた民主党首脳部か仲介して河村市長につけたのであろう。でもミスマッチだったので早晩袂を分かつ運命だった。小さな政府がいいと思っている自由主義者が、公務員の待遇がいいなら国民全員が公務員になればいいと思っているコミュニストと会う筈がないもの。ちなみに後氏は議員に市幹部をやらせる議院内閣制の地方版の推奨者らしいが、片山総務大臣が言うように議会と首長が癒着してチェック機能が働かなく危険がある。おそらくには民主集中制あるいはロシア革命のソビエトという議決機関が執行機関を兼ねるという発想があるのだろう。

ちょっと誤解のないように言っておくと、僕は公務員の給料が安ければいいと思っているわけでない。もちろん危険の多い全国の漁業従事者の平均年収が公務員のへいきん年収の半分ときくと公務員であることがつらくなるし、阿久根市長のいう「市内の新築の家をたてているのは公務員だけ」という発言についても正しい社会の在り方ではないと思うが、僕の考えは2009年4月16日に「市職員の給料考」書いたように高い安いが問題ではない。そのとき書いたのは「したがって市職員の給与についてそれが世間の被雇用者全体の水準より高いならば、それだけの効用を市民に返せていることが絶対必要条件だ。」ということだ。

ところで後氏は今度民主党が擁立して県知事選挙にでる元愛知県総務部長の御園氏のブレーンになるそうだ。保守的な愛知県政の中枢にいたがご都合主義的に今回民主党にすり寄った御園氏と後氏のコンビは会うのだろうか。御園氏のうしろ(後)についたのは守護霊か疫病神なのか。

きのうハリー・ポッターを見に映画館にいったところ、ロビーで中高年の婦人2人が大村候補の話をしていた。河村市長が応援するから大村候補に投票しようかしらと言う話。市職員の間と市民間の間では様子が全く違うので市職員は状況を誤りやすい。支持団体の構成員の多数が河村支持になっている公明党や後援会からの反応がある自民党はすでに政治のリアリティに気がつき始めている。民主党も遅ればせながら不安になってきているが対応能力が低い。一番政治リアリティに乏しいのは政治学者の後教授であろう。

そんなわけで、民主党の対応能力の低さからみて、そして今回の選挙管理委員会の決定が河村陣営の大村氏にエネルギーを与えることを考えると、愛知県知事選の当落予想は、本命大村、対抗重徳、穴御園、以下は前回通りとしよう。

愛知県知事選挙大混戦

2010-11-20 22:12:37 | 名古屋
最近の名古屋市議会のビックリは、市議会自民党が10%減税の恒久化を条件付きで認めるとともに市議会解散署名審査の結果に関わらず市議会の自主解散を目指し他党派にも呼び掛けるとしたことだ。これは署名で示された民意を無視できないためという。

でも僕の見るところでは、市議会側の選挙管理委員会を使った姑息な作戦が、河村サポーターズの激しい憤りを呼び出して、皮肉にも河村支持者に選挙で復讐するエネルギーを与えてしまったからだ。自民党は遅かれ早かれ来年初めに行われる市議会選挙での落とす主標的になることを避けようとしたのだ。すでに公明党が議員報酬半減化に賛成を表明して反河村戦線から離脱し始めている。自主解散といっても4分の3の出席で5分の4の賛成が必要なので自民党だけが賛成しても可決しないし、可決したところで4月の任期切れ選挙か3月のリコール選挙がさらに1・2カ月だけ早くなるだけなので議員稼業にはあまり影響がない。むしろここは頑なな利権擁護者とみられることは避けた方がよい、との判断だろう。他方市議会民主党はマニフェストで減税反対を表明しており、支持団体に自治労(名古屋市では自治労名古屋)があるので方向転換ができない。だから梯子を下ろされた形だ。

僕は定数の関係から河村支持者が市議会で過半数を取ることは難しいと思っていたが。選挙管理員会が河村サポーター勝利のジグソーパズルの欠けた最後の1ピースを作ってくれたと思う。

ところで話は変わるが、河村名古屋市長が来年2月の愛知県知事選挙に、自民党の大村秀章代議士に出馬を要請して、大村氏も出馬する意向を表明したので愛知県知事選挙は大混戦になる模様だ。すでに愛知県知事選挙には、旧自治省出身で元愛知県総務部長の御園慎一郎氏、おなじく旧自治省の出身となるが元総務省官房審議官の重徳和彦氏、そして医師で大学教授の薬師寺道代氏が出馬を表明している。民主党が御園氏、自民党が重徳氏、みんなの党が薬師寺氏をそれぞれ擁立している。もちろん共産党も候補者を出すだろう。ひょっとしたら幸福実現党も候補者を出すかもしれない。

当落予想を立てるとすると、本命御園、対抗大村、穴重徳、大穴薬師寺で、共産は「党勢拡大をめざす」で、幸福は「独自のたたかい」といったところか。大村氏より重徳氏を不利と見るのは、愛知の自民党は政権を失ってから各種団体の推薦や支持を取る力が格段に落ちたことだ。大村氏はすくなくとも愛知13区では強力な後援会組織を持っているし、名古屋市内だけでなく東海地方全般にある河村人気もバックアップするかもしれない。また知名度は全候補者中で一番高いだろう。また選挙戦に入れば、大村氏と御園氏の戦いの様相がはっきりしてくると、県内の反河村勢力が重徳氏を捨てて全精力を御園氏に回すのは明らかだ。

みんなの党は、参議院選挙時には支持率も上がり躍進した。その後民主党政権の不手際が目立ったためさらに躍進しそうだが、逆に国民が官僚支配打破に諦めと無力感をもってしまったため勢いが落ちている。そこでみんなの党の渡辺代表が愛知県知事選で河村市長と提携して党勢のカンフル剤にしようとしたが、河村市長は乗り気ではなかった。河村市長は大村氏の県知事選擁立を考えていたのだ。

河村市長は元民主党の代議士で大村氏は自民党の代議士、だからこの二人の関係に意外さを感じる人は多いだろう。でも以前からつながりはあったのだ。1999年ごろ名古屋市港区と隣の飛島村にまたがる藤前干潟をごみ埋め立て処分場にしようとした名古屋市の計画を、環境省の役人から相談を受けた河村氏(当時衆議院議員)は、新幹線の車中で会った同じく愛知県選出の大村氏に藤前干潟について話したところ埋め立て反対で意見が一致したという。でもまあ藤前干潟が保全されたのは2人の力より、市民と環境省の役人の力が大きかった。僕のみるところ河村氏は環境保全の環境に興味があるというよりも何かを保全することに意義を感じる人みたいだ。だって彼の母校の旭丘高校が建て替えで壊されようとしたとき校門に体を縛りつけて反対したもの。

ちょっと話はそれるけど、藤前干潟の保全のため環境省の課長が単身で名古屋市役所に乗り込んできたのが市民運動とともに大きな力となった。国の役人でもまともな人のだと思いたいけど、素直でない僕はちょっと気になる点がある。というのはその前年に「諫早湾干拓事業に介入できないで国民の批判をあびた」から藤前干潟では頑張ったとウィキペディアに書いてあった。諫早湾は国が関与する事業だ。もし環境省なり他の省庁の役人が、その事業の環境評価なり経済的必要性の事前評価に誤りがあるのではと指摘したら、指摘された役人はよいことを教えてくれて助かったと喜ぶだろうか。そうではないはずだ。「国会や住民に報告した数字は出まかせで、本当の目的は別にあることは判っているはずなのに、余分なことを言いやがって。役人同士は相身互いなのに、他人の利権に介入するとは役人の風上にも置けないやつだ」ということになるのは明明白白だ。だから国の事業には介入できないししないが、名古屋市役所の単独事業は介入できるわけだ。

話は戻るが、大村議員はよくテレビに出ていたよね。一般にテレビに露出度が多い国会議員は選挙に強いという。だから出ていたのだと思うけど、大村議員の場合、批判のおおかった厚生労働省の副大臣なのだからテレビにでても防戦しなければならないのだからイメージアップにはあまりならない。またテレビ映りがいい男ぶりとは思えない。それなのによくテレビに出ていたのは厚生労働副大臣という立場の使命感かな。それともやっぱり選挙に有利と思っていたのかな。たしかに民主王国の愛知県でただ一人の自民党の衆議院議員だから選挙に役立っているのかもしれない。

ところで大村議員のテレビ出演と言えば、2009年元日早朝の『朝まで生テレビ!』だ。田原総一朗氏司会の討論番組だけど、そこには大村秀章氏のほかに名古屋市職員出身の哲学者の小川仁志氏も他の多くの参加者と一緒に出ていた。小川氏は「カントは・・」なんて哲学者らしいが、この討論にはやや場違いな発言をしていたが、大村氏とのやり取りで記憶に残っているのは、小川氏が大村氏に「大村さん、生きるってどういうことですか言ってください」なんて言っていた。もちろん大村氏の発言に「生きる」といという言葉があったわけではない。小川氏の戦術として、大村氏が答えられない(答えない)を見越して、そのあと自説を述べてこの討論のテーマの雇用と貧困の問題について論議を展開していこうとしたのだ。当然だが大村氏は「この人は何を言っているのだ」という顔をしてこの質問を無視した。僕は見ていて、もし大村氏が「生きるとは愛することです」なんて言ったら、小川氏はどんな顔をしたのだろうかと思った。ちなみに「生きることは愛すること」というのはある歌の歌詞にあった。

おっと忘れるところだった。今度の愛知知事選のもう一つの見ものは、立候補予定者の旧自治省出身者が2名もいることだ。昔ならこれは考えられないだろう。ふつう自治省出身の首長は引退するとき、後継者に自治省出身者を指名して代々引き継ぐ。旧自治省というのは小さな省庁だが、1種試験合格者の人気が高い有力省庁なのは、末は知事とか市長になれるからだ。だから自治省が健在ならば自治省出身者が争うなんてことはなかっただろう。愛知県の場合、戦後すぐの知事は、戦前の官選知事からの桑原幹根氏で、その後は仲谷義明氏でその後は鈴木礼治氏。仲谷氏も鈴木氏も自治省出身で後継者含みとして愛知県庁へ出向して両者とも教育長をやっていた。しかし反中央(江戸・東京)の意識がある愛知なので、仲谷氏は愛知県出身、鈴木氏は三重県出身だが名古屋大学出身ということで地元人として知事になれた。鈴木氏のあとは、鈴木氏が「御園さんにやってもらえたらいいな」なんて当時総務部長だった御園氏を後継指名したのだが、自民党が御園氏を担ごうとしたら民主党が一宮市長の現知事の神田氏を推したので、自民党は御園氏を担げなかった。今回と反対だね。御園氏は前回のときに自民党の非力をしったので、今回は初めから民主党にすり寄って民主党のマニフェストで戦うなんて言ってしまったので、自民党は相乗りできなくなった。

ところで重徳氏は河村市長を訪問して河村市長を持ち上げるも、河村市長は「わしは大村さん」と言われてしまう。また自民党へも推薦を断り、自民党もこれを了承して支援はするが推薦候補としない方針。自民隠しともいえるが、僕としては重徳氏が知事になっておおばけする方が、大村氏や薬師寺氏が知事になるより面白い。