セレンディピティ日記

読んでいる本、見たドラマなどからちょっと脱線して思いついたことを記録します。

読書ノート:大竹慎一『日本金融恐慌間奏曲』(李白社)

2009-12-30 16:02:25 | 社会経済
12月に入って、就職した当時の職場の同僚数名で話す機会があった。一人の先輩は、ことし3月定年で4月から再任用で働いている。部長級の人が定年で課長級の職で再任用されたのだ。再任用だから定数内の一般職で当然共済年金にも引き続き加入していることになる。しかし給料は通常の課長の給料よりだいぶ低いらしい。そこでその先輩が懸念するのは、共済年金は加入期間中の平均給与と加入期間に基づいて支給額が計算されるが、再任用により加入期間中の給与の平均が下がるが、加入期間は増える、はたして年金額はどうなるのであろうかということだ。

僕は、「再任用ということでなくても、年々公務員の勤務条件は厳しくなっていくだろう。だから数年後には、定年前退職でも平成20年ごろにやめたやつ(つまり僕だ)が、一番得をしたって話になる、なーんてね。チガウカ~」と言った。これは冗談である。しかしこの大竹氏の『日本金融恐慌間奏曲』を読むと、あながち間違いではないかもしれない。

大竹氏によると、2012から2015年ごろに、現在の恐慌の二番底が来て、株価は日経平均4000円、失業率は10%、そして賃金水準は半額となるとのことだ。賃金が半額になればそれを基に計算する退職金も年金も減ってくる。

大竹予測の怖いところは、大竹氏によると高い的中実績があるとのことだ。実績云々はファンドマネージャーとしての商売の口上だから話半分で聞き流せばよいといえるが、もっと怖いのは、大竹氏はこれを自然現象と同じであると言い切ることだ。つまり必ず起こり人為で遅らせようとしても蓄えられたエネルギーでより強いしっぺ返しが来るということだ。他の経済評論家ならば、「政府が有効な経済政策をうたない限り」とか「アメリカあるいは中国の動向次第では」などと予測に逃げ道をつけるが、大竹氏は自然現象で必ずそうなるという。

ちなみに昨今のデフレは、世界的に高い日本の賃金水準を均衡化するための自然の摂理ということだ。おっと、大竹氏は「自然の摂理」という用語は使っていない。「暴力的に均衡化」とかゆう左翼論文みたいな用語が好きみたいだ。僕は嫌いだから言い代えた。

ところでこの本の第1章は「労働力(L)の不均衡」というタイトルで、日本の高い賃銀水準について分析しているが、この章の「日本人」を「公務員」に世界を「民間」あるいは「世間」に置き換えてもぴったりすることを発見した。

「いずれにせよ、日本(公務員)は、他国(他業種)の人たちの賃銀の差に見合うだけの能力、付加価値を備えているとは言い難い。とりわけ、平均的なホワイトカラーの処理能力については欧米(1流企業)に比べればかなり劣っているし、・・・・
 要は、日本人(公務員)の賃銀は実質的な労働力対価になっていない。それほど働いていないのに、あるいは能力がないのに、高い給料をもらいすぎている。世界(世間)から見れば、納得のいかない「格差」が存在しているのである。
 ところが、ずっと日本(役所)で働き、日本(役所)で暮らしてきた人々は、自分の給料が高いという認識を持っていなし、豊かであるという実感も持っていない。それは、日本の物価水準があまりにも高いからである。」(p.14L.11~p.15L.8カッコ内は僕の挿入。)